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同盟チャットで行われた実際の「オンライン☆わたてにんぐ劇場」のチャットログはこちらから→ オンライン☆わたてにんぐ劇場 「あの子を振り向かせるには チャットログ(残存分のみ)」

 同盟チャットにて天使たちがセリフと地の文を使い分けて、即興劇を繰り広げてくださいました。主な観客は同盟員のハーブ・フォースさん。合いの手を入れつつ楽しまれていました。

 ■記載ルール■
  メイン記述者(進行者。今回は種村小依さん)1名が直接同盟チャットに地の文を書き、他登場人物は「」で囲む形でセリフを書くことで物語を紡いでいきます。完全に彼女たちのアドリブで構成されています。
  (「><」「ω」といった記号は縦書き時に表現できない為、削除もしくは別のもので置換しています)


☆☆☆☆☆ イントロダクション ☆☆☆☆☆

── リンドビオルサーバのとある同盟では ──
── 気ままに天使たちが舞い降りては 一遍の物語を協力して紡ぎ 人知れず飛び去っていく──
── という噂がまことしやかに囁かれています ──

こちらの記事は「エンジェリック・ミスリル・ハーツ・フェデレーション」内「天使が舞い降りた」同盟において
天使たちの紡いだ物語を一般公開できる形で記録に残そうと考えまとめたものとなります。(天使たちの公開許可はいただいております)

「私に天使が舞い降りた!(わたてん!)」という作品世界から、こちらの世界に飛ばされてしまった天使たち。
戻る術が見つからない日々の中、お友だちの代理露店をこなしながら元気に楽しげに生活されています。
時折、突発的に始まるリアルタイムでの「物語の編纂(即興劇)」というお遊戯は、その完成度の高さ、内容の睦まじさにより
見る人に癒しと潤いを与えてくれるものとなっており、まさに【天使】のような存在となっています。


今回のメイン記述者は「小之森夏音」さん。
主なキャストは「松本香子」さん、「種村小依」さんでした。


私に天使が舞い降りた! 公式サイト より、プロフィール画像はこちらになります。(コンパクトにまとめました)









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──     あの子を振り向かせるには     ──
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 ■作品イメージタグ■
  #私に天使が舞い降りた! #わたてん! #小之森夏音 #松本香子 #種村小依 #かの松 #よりかの

 ■作品文体■
  一人称小説

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──     「あの子を振り向かせるには」     ──
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 最近、ひなたちゃんと乃愛ちゃん、花ちゃんとみやこおねぇさんみたいに仲良しになっているひとたちが身近に増えてきています。
 私も、おさななじみのよりちゃんとずーっと仲良しでいられたらいいなぁって思っていて、どうしたらそれができるんだろうって悩んでいたりします。
 私たちも、そろそろ6年生。最上級生です。すぐに中学生になってしまうので、もし違う中学になってしまったりしたら、今みたいな関係は続けられなくなっちゃうんじゃないかなぁ・・と少しだけ心配しちゃいます。

「はぁ・・・。よりちゃんとずっと仲良しでいたいなぁ・・・」

 私はそんなため息混じりのひとりごとを、よりちゃんがいない下校の時とかにぽつりとつぶやいてみたりしています。
 そんな日が続いていた、3月下旬ごろ。
 みやこおねぇさんの発案で、みやこおねぇさんのおうちに集まってお茶会をすることになりました。その日は空模様もどんよりとしていたり、いろいろともう波乱ばかりの展開でした。詳しくはおとぅさんの小説参照なんですけど・・・。
 そのお茶会が終わったあと、松本おねぇさんにずっと悩んでいたことを相談してみたんです。やっぱり、身近なおねぇさんにご相談したいなぁって。みやこおねぇさんは花ちゃんのことで忙しそうだったので、松本おねぇさんにお願いしてみようと思いました。
 お茶会が終わって、松本おねぇさんがゆうちゃんと帰り支度をしているとき。勇気を出して声をかけました。

「あ、あの・・! 松本おねぇさん!」
「あら、かのんちゃん? どうしたの?」
「えっと、その。ちょっと相談に乗ってほしいことがありまして・・・」

 松本おねぇさんはとても素敵な笑顔で応じてくれました。ゆうちゃんもいるのに、私と二人だけでまた二階にあがってくれて、みやこおねぇさんのお部屋でお話を聞いてもらえることになりました。

「その・・。ゆうちゃん、大丈夫ですか・・?」
「ええ。みやこさんに預けてきたから。あの子、みやこさん大好きみたいなのよね」

 なんて軽く応じてくれる松本おねぇさん。今日はいろいろとあったから、本当はさっとおうちに帰って休みたいはずなのに。

「あ、ありがとうございます。その、相談というのが、ですね・・・。 うぅ、あの・・・」
「・・・なんとなく分かるわよ。こよりちゃんとのことでしょう?」

 あう、私が分かりやすいのかもですけど、すぱっと言い当てられてしまいました。

「今日、ひなたちゃんと乃愛ちゃん、花ちゃんとみやこさんの関係が進展したでしょう? それを受けて、自分はどうなんだろうって、思ったんじゃない?」

 そう、そうなんです。説明しなくても分かってくれる松本おねぇさんは、本当に頼れるおねぇさんだと思いました。

「そ、そうなんです。それで、その・・・。よりちゃんと、私はずっとこれからもいっしょに、そばにいたいって思ってるんです」
「うんうん。見ていれば分かるわ。こよりちゃんのことが大事なのよね」
「それで、私、よりちゃんとどうしたら一緒にいられるのかなって。松本おねぇさんに相談をしたくって・・」

 そう伝えると、松本おねぇさんはちょっとだけ悲しそうなお顔になりました。

「そう・・。私に相談されても・・。でも、頼ってくれるのは嬉しいわね」
「でも、かのんちゃんも見ていて分かったように、今日私はみやこさんに振られてしまったのよ? 相談相手になるとは思えないけど」

 松本おねぇさんは、そう言うと悲しそうなお顔になりました。
 私は、普段からのみやこおねぇさんへの押しの強さとか、食いつき方とか、諦めない強い気持ちについて教えてほしいと思っていました。

 でも、確かに今は花ちゃんへの想いが強くなっているみやこおねぇさんがいて、この状況で松本おねぇさんにこういうことを相談するのは酷なのかもしれない・・と思えてきました。

「ご、ごめんなさいっ あの、その、私、松本おねぇさんを傷つけるつもりは、なくって・・!」
「ふふ、いいのよ。私もね、みやこさんに振り向いてもらいたいとは思うけど、今はそれよりもみやこさんの幸せそうな顔を拝むことに生きがいを感じているから」

 松本おねぇさんは残念そうなお顔でそう言いました。でもそのお顔は、諦めた先に見つけた幸せをつかんだかのようなお顔で、不思議な満足感も感じられました。

「そうねぇ・・。かのんちゃんは、こよりちゃんとこれからも仲良しでいたいのよね?」
「は、はい・・!」
「その為に、どうしたらいいかという相談よね?」
「そうなんです。今のままだと、よりちゃんが離れていっちゃう気がして・・」

 私は、松本おねぇさんに自分が感じている素直な気持ちを伝えてみました。大変なご迷惑をおかけしていることは、承知した上で。

「・・・私から二人を見る限りだと、とても仲睦まじく見えるわよ? それこそ、誰も間に入れないような、そんな空気すら感じるもの」
「そ、そうなんでしょうか・・」
「ええ。きっと誰もがうらやむようなベストカップルのように、みんなから見えているはずよ」

 松本おねぇさんはみやこおねぇさんのベッドに軽く腰をかけて、ベッドをやさしくなでました。
 私はそんな松本おねぇさんの手元を見つめながら、言われたことをじっと考えてみました。誰もがうらやむベストカップル、かぁ。でも、私にはそういう実感がありませんでした。よりちゃんとは確かに今、仲良くできているはずではあるんですけど、これから先、いつよりちゃんに捨てられちゃうのかなって・・・それが怖くて仕方ないと思ってしまうのです。

「・・かのんちゃん。こよりちゃんと私はあまり話しこんだことがないから、本当のところどう思っているか分からないけれど。あなたたちがベストカップルだと思うのにはね、理由があるのよ」

 松本おねぇさんは私のことを見つめながら、ベッドのそばで立ちつくしている私に手を伸ばしました。それはまるで、その手を掴むようにと、言われているように思いました。
 私は導かれるまま、松本おねぇさんの手を両手で包み、目を閉じてよりちゃんのことを想います。

「・・・かのんちゃん。あなたはこよりちゃんにとって、なくてはならない存在だと思うの。お世辞ではなくてね」
「はい・・・」
「私のような、あまり深く関係を知らない人間でもそう思うのだから、あなたたちの関係は誰にも邪魔できないと思うし、むしろ周りの人はあなたたちの幸せを祈っていると思うの」
「そ、そうなんでしょうか・・・」
「ええ。間違いないわ。ひなたちゃん、乃愛ちゃん、花ちゃん。みんなあなたたちの関係を祝福してくれる子ばかりでしょう? よく思い返してみて」

 私は松本おねぇさんに言われた通り、みんなのことを思い返してみました。確かに、思い浮かぶのはみんなが私たちのことを笑顔で見守ってくれているところばかり。私が気づいていなかっただけで、みんな応援してくれていたのかもしれません。

「いい? かのんちゃん。あなたたち二人が想い合うだけでなく、あなたたちの周りの人たちがみんな応援してくれているのよ? あなたたちはおさななじみかもしれないけど、それだけじゃ関係が続いていなかったかもしれない。周りの人が「そうあってほしい」と望んで、応援して、祝福して・・・。なるべくしてなった関係でしょう? そういう意味で、あなたたちはベストカップルなのよ」
「なるべくして、なった・・・」
「だからね、そのお友達の為にも、あなたたちは幸せな道を歩むべきだと思うの」

 松本おねぇさんはそう言うと、目を閉じて祈るような形になっている私の頭をなでてくれました。

「・・・こよりちゃんも幸せ者よね。こんなに身近に、真剣に関係を考えてくれる子がいるなんて」

 私は松本おねぇさんの言葉にはっとして目を開きました。松本おねぇさんのその瞳には、心なしか羨望のまなざしが浮かんでいるように見えました。
 松本おねぇさんが、私のことをうらやましいと思うなんて、ないと思うのに・・。でも、松本おねぇさんが言ってくれたことは、私の消えかかった心の火を元気にしてくれたのでした。

「あ、ありがとうございます・・! おかげさまで、消えかけた勇気が取り戻せた気がします」
「よりちゃんに、直接聞いてみたいと思います。松本おねぇさん、その、ありがとうございましたっ」

 私は松本おねぇさんに深くおじぎをしました。松本おねぇさんも笑顔でそれに応えてくれて、背中を押してもらえた気がしたのでした。

「かのんちゃんなら、きっと大丈夫。何があっても、諦めないでね」

 松本おねぇさんは最後にそう言うと、みやこおねぇさんのベッドから立ち上がって一緒に部屋を出るようにうながしてきました。そろそろ、この特別な時間もおしまいのようです。

「(私と違って、まっすぐな想いをぶつけられる人がいるのは幸せなことよ。かのんちゃん、応援してるからこよりちゃんとこれからも仲良くするのよ・・・!)」

 松本おねぇさんと揃って一階に降りると、待ちくたびれたゆうちゃんと、ふてくされたような顔をしたよりちゃんに出迎えられました。

「・・かの! どこにいってたのよ。ほら、さっさと帰るわよ!」

 よりちゃんはそう言いながら私に近づいて、私の手を取って玄関の方に移動しました。
 私は松本おねぇさんにお礼のおじぎをして、みやこおねぇさんにもご挨拶をすると、よりちゃんに手を引かれるまま外に出ました。

 外は夕日が沈みかけていて、辺りはキャラメル色の夕暮れになっていました。学校帰りのどんよりとした曇り空は、いつのまにかいなくなっていたみたいです。

「かの」
「・・・よりちゃん?」
「松本さんに何か相談してたみたいね。どうして私には相談してくれないの?」
「そ、それは・・・」

 よりちゃんのことだからだよ? とはさすがに言えなかった私は、よりちゃんのまっすぐな瞳に見つめられながら、何も言えなくなってしまいました。
 よりちゃんの瞳から逃げるようにうつむくと、立ち止まった二人の影が遠くの方まで長く長く伸びているのが見えました。

「・・・かの」
「うん・・・」
「私、かのがいないと普段通りにできないのよ。それはかのも知ってるでしょ?」
「うんうん・・・」
「だから、そんなしょぼくれた顔してないで、こっち来なさい!」


 ぐいっ


 よりちゃんは私を強く引っ張りました。そして、よろけた私を両腕で抱きしめると、肩口にあごを乗せて体を密着させる体勢になりました。

「・・・かのは、不安なの?」
「・・・本当のこと言うとね、そうなんだ・・・」
「それ、私が原因なのよね?」
「・・・そうとも言えるし、私のせいでもあるかな・・・」

 私、なんでよりちゃんを困らせるようなこと言っちゃってるんだろう。
 さっき松本おねぇさんに相談に乗ってもらって、大丈夫って思えたばっかりなのに。どうして、私・・・。

「私はかののことが世界で一番大事よ?」
「私が大統領になったら、かのはファーストレディとして世界中引っ張り回すんだから、そのつもりでいなさい!」
「いい? 何度でも言うけど、かのは私にとって・・・ って、なんでかのそんなに泣いてるのよ」

 私は、よりちゃんに言われるまで自分が号泣してることに気付きませんでした。
 それまで感じていた私の不安が、すべてよりちゃんの言葉で消えていくのを感じて、涙をおさえることができませんでした。

「よ、よりちゃん・・・。ぐすっ ありがとう、ありがとう・・・!」
「まったく。かのはやっぱり私がいないとダメね」
「そんなかのは、私がこれから先も、ずーっと、ずーーーっと、引っ張っていってあげるんだから」
「覚悟しておきなさい? かの・・・」

 よりちゃんはそう言うと、私のことをぎゅっと抱きしめてくれました。
 私、なんでこんなことで悩んでいたんだろう。そう思えるくらい、よりちゃんの抱擁はあったかくて、溶けてしまいそうでした。
 でも考えてみたら、さっき松本おねぇさんにもらったアドバイスも、こうなることを見越してのものだったのかもしれません。
 なるべくして、なった関係なんだって。私がそうしたいと思っただけじゃなくて、みんなもこうあってほしいと望んでくれていたんだって。いつも笑顔で応援してくれていたんだって。
 そして、よりちゃんも同じことを想ってくれていたんだって。本当に松本おねぇさんのくれた言葉どおりでした。
 でもなんだか、私一人だけが悩んでいたみたいでちょっとだけ悔しくて。
 ぎゅっとしてくれるよりちゃんを、私もちょっとだけ強く抱きしめ返したのでした。

「かの、ちょっと。苦しいわよ・・」
「ごめんね。でも、よりちゃんのこと放したくないの。いつまでもそばにいてね・・・」
「当たり前でしょ! かのが逃げていったって、逃がしたりしないわよ!」

 私はそんなよりちゃんの言葉を近くで聞きながら、これまでにないくらい心が温かくなるのを感じました。
 私は結局、みんなが言うような聖母でもなんでもなくて。ひとりの迷える女の子なんだなって。松本おねぇさんのアドバイスを受けて、よりちゃんの想いを受けて。素直にそう感じました。
 私のこの気持ちは本物だからね? よりちゃん。
 これからも、よりちゃんに頼ってもらえるような「かの」であり続けるようにするから。
 だから、これからもどうかそばにいさせてね。私の大好きなよりちゃん────。




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──     「あの子を振り向かせるには」   完 ──
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