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一般チャットで行われた実際の「オンライン☆わたてにんぐ劇場」のチャットログはこちらから。スクリーンショットは星野ひなたさんと暁美ほむらさんがご提供くださいましたので、チャット内容や環境設定は彼女たち基準となります。
イベント開始前、集合~会場移動時の様子
オンライン☆わたてにんぐ劇場 「夏の終わりの、怪談話。」 01 チャットログ
絵笛さんによる身近な怪談 「家グモ」
オンライン☆わたてにんぐ劇場 「夏の終わりの、怪談話。」 02~03~ご感想 チャットログ

 このところ恒例となってきておりますが、同盟員だけでなく「天使たちのお友だち」を主な対象とした即興劇を、人数制限のない一般チャット(白チャット)にて実施してくださいました。
 今回は暁美ほむらさんが、メイン記述者となる星野ひなたさんから会場についてのご相談をお受けになったそうです。テーマが「怪談話」であったことから、それらしき場所ということで
 「悪魔の島」での開催となりました。選定理由としましては、現在の悪魔の島はモンスターはおらずその印象とは裏腹に安全であること。悪魔を自称するほむらさん所有の島ということ。
 といったものが挙げられます。

 また今回も天使たちの裏方のやり取りとなる血盟チャットを公開していただけましたので、天使たちの微笑ましい舞台裏も含めてお楽しみください。
 上記のチャットログはひなたさん視点の同盟チャット+血盟チャット+パーティチャット+一般チャット混在となっております。

 主な観客は絵笛さん、わためさん、ハーブ・フォースさん、暁美ほむらさん、DOSAN。そして、ヴァラカスサーバから遥々お越しくださいましたイルミネーションアーティストのまいちゃんさんでした。

 ■記載ルール■
  メイン記述者(進行者。今回は星野ひなたさんと白咲花さんと星野みやこさん)が直接一般チャットに地の文を書き、他登場人物は「」で囲む形でセリフを書くことで物語を紡いでいきます。今回も完全に彼女たちのアドリブで構成されています。


☆☆☆☆☆ イントロダクション ☆☆☆☆☆

── リンドビオルサーバのとある同盟では ──
── 気ままに天使たちが舞い降りては 一遍の物語を協力して紡ぎ 人知れず飛び去っていく──
── という噂がまことしやかに囁かれています ──

こちらの記事は「エンジェリック・ミスリル・ハーツ・フェデレーション」内「天使が舞い降りた」同盟において
天使たちの紡いだ物語を一般公開できる形で記録に残そうと考えまとめたものとなります。(天使たちの公開許可はいただいております)

「私に天使が舞い降りた!(わたてん!)」という作品世界から、こちらの世界に飛ばされてしまった天使たち。
戻る術が見つからない日々の中、お友だちの代理露店をこなしながら元気に楽しげに生活されています。
時折、突発的に始まるリアルタイムでの「物語の編纂(即興劇)」というお遊戯は、その完成度の高さ、内容の睦まじさにより
見る人に癒しと潤いを与えてくれるものとなっており、まさに【天使】のような存在となっています。


今回のメイン記述者は「星野ひなた」さん、「白咲花」さん、「星野みやこ」さん。
主なキャストは「姫坂乃愛」さんでした。



私に天使が舞い降りた! 公式サイト より、プロフィール画像はこちらになります。(コンパクトにまとめました)









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──      夏の終わりの、怪談話。      ──
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 ■作品イメージタグ■
  #私に天使が舞い降りた! #わたてん! #星野ひなた #白咲花 #星野みやこ #姫坂乃愛 #ひな花 #花みや #ひなノア #怪談 #コミカル

 ■作品文体■
  一人称小説

 ■お題■
  「第四の壁」
  「メタ」
  「怪奇現象」

  ※オンラインでのわたてにんぐ劇場では、白咲花さんがメイン記述者に「3つのお題」を開始直前に出されます。
   メイン記述者もしくは参加者はランダムで出されるその「お題」を地の文やセリフのどこかに取り入れてお話をリアルタイムで紡ぎます。開始直前に発表される為、事前に考えておくことができません。
   事前にお題を出され、じっくり考えた場合でもランダムキーワードを取り入れて物語を紡ぐことはかなりの高等技術ですが、毎回みなさんすんなりとオンラインリアルタイムでこなされているので驚愕しております。


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──      「夏の終わりの、怪談話。」      ──
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01

「────むかしむかし、あr」
「きゃああああぁぁぁーーーーーーーーーっ!」

 はなは空気を切り裂くような大きな声で悲鳴を上げると、隣にいたみゃー姉に飛びついてしがみついた。
 みゃー姉のふかふかの胸に顔を埋め込んで震えてる。
 ずるいぞはなー。

「お おねおね、おねぇ、さん・・・」
「は、花ちゃん・・・。大丈夫だよ? まだなにも始まってないよ?」

 みゃー姉は真っ赤な顔をしながらわたわたしてる。でも、しがみついてるはなのことが心配みたいでやさしく頭から背中をなでている。
 私もしてもらいたいぞ。
 なでてもらって、はなも少し落ち着いたみたい。今度ははなが真っ赤になって、みゃー姉からゆっくり距離を取って自分の座布団まで戻っていく。
 よし、大丈夫そうだな!

「でもハナちゃん。ヒナタちゃんまだなんにも言ってないよ?」
「そ、その・・・昔話っぽいのが、ちょっと・・・」
「そこなの?」

 そうなのか。むかしむかし、で始まるのは怖いのか。うーん。どうするかなー。
 お、じゃあ、これならどうだ!

「────春も終わりの気配を出し始めた、5月も末のこt」
「いやぁああああぁぁぁーーーーーーーーーっ!」

「ハナちゃん!?

 はなはまた耳をつんざくような絶叫を上げると、すぐ隣のみゃー姉に光の速さで頭突きをしていた。
 さっきからはなばっかりずるいぞ。
 みゃー姉は今度は真っ青な顔をして、ぷるぷるしながらもみぞおちにぐりぐりしてるはなをなだめている。
 どうしたー? みゃー姉。

「いや、どうしたもこうしたも、ミゾオチに全体重かかった頭突きされたら、そりゃ痛いでしょー!」

 おー、なるほどな! さすがのあ、よく見てるなー。
 でも、地の文に直接突っ込むのはダメなんだって、おとーさんが言ってたぞ?
 ま、なんとかなるだろ。

「でもコレ、やっぱり無理なんじゃ・・・」
「私も、これ以上花ちゃんが怖がると、正気保てないかも・・・」
「ミャーさんが? なんで?」
「み、みやこおねぇ、ちゃん・・・っ!」
「ごふっ!」
「ミャーーーーさーーーーん!?

 みゃー姉はもう一度真っ赤な顔になって、はなに覆いかぶさるような姿勢になると、そのまま静かになった。
 いそがしいな、みゃー姉。
 みゃー姉は口のはしからよだれをつつーっとたらして、幸せそうな、安らかな顔をしてる。
 よかったな、みゃー姉。

 そもそも、なんでこんなことになってるかっていうと、今日のお夕飯のときにのあがこんなことを言い出したからなんだ。

「ねぇねぇ、今日の夜みんなでヒャクモノガタリしない?」

 そう。今日は夏休みのお泊まり会。みんなでうちに集まっていっぱい遊んだんだ。
 こよりとかのんは家族同士で海に行くことになってたから集まったのははなとのあだけだったけど。
 ビニールプールで遊んだり、みんなでお昼寝をしたり、いつもはできないことができて楽しかったなー。

「へっ・・・!?

 でも、のあの提案を聞いたはなは真っ青になって震えていた。
 んん? そういえばひゃくものがたりってなんだ?

「百物語っていうのはね、火のついたろうそくを百本用意して、怪談話をひとつするごとに一本ずつろうそくを消していくの」
「うんうん。それで、最後の一本を消した時に、本物のオバケが出てくるんだって!」

 なんかすごいことになりそうだな! みゃー姉とのあ、説明ありがとな。
 でも、地の文と会話しちゃうのは・・・
 ま、いっか!

「ね、ねぇ・・・。本当にそれ、やるの・・・?」
「ふっふーん。カイダンも カワイイ服と おなじなの(五七五)。怖がってるとカワイク見えるんだよー☆」
「その考えがもうかわいくないけど・・・うーん。百個もやってたら時間遅くなっちゃうだろうし、十個くらいにする? 花ちゃん、大丈夫そう?」
「ナ ナニガデスカ? ヨユーデスケド?」
「じゃあキマリ! みんないくつかお話考えておいてネ☆ あ、カイダンバナシって言っても、怖い話じゃなくても大丈夫だからねー!」

 みんなでお夕飯を食べ終わって、お風呂に入って、パジャマに着替えて、今は会場のみゃー姉の部屋に集まってるところだ。
 のあが言ってたけど、怪談だけど怖い話じゃなくてもいいみたい。怪談ってなんだっけ?
 じゃあってことで、私も昔話とか用意して、話しはじめようとしたんだけど・・・。はなに怖がられちゃった。

 はなはたぶん、お話より雰囲気が怖いんだろうなー。
 だって、私たちの周り、こんなことになってるし。

「・・・ところで、今日のこのスゴイ飾りつけはなに? どうしちゃったの?」
「あー・・・ こんなこともあろうかと、作っておいたんだけど」
「こんなこともって・・・ミャーさん、一体どんな状況をソウテイしてたの?」
「それは、あれだよ。ノアちゃんがお友だちから怪談話をリクエストされるだろうなって」
「まんますぎるよ! さすがにメタすぎるからもうちょっと取りつくろう?」

 さすがみゃー姉。第四の壁なんて最初からなかったんだな!
 みゃー姉の用意したあれやこれやが部屋の中、それから廊下まで飾りつけられている。なんだかハロウィンみたいだな。
 ゆらゆらと灯る電灯が部屋の中央に置かれている。私たちはその電灯を取り囲むように置かれた座布団に座りこんでいる形だ。
 みゃー姉の部屋から出て、廊下の突き当たりに十本の懐中電灯が立てられて天井を照らしている。
 懐中電灯には青いフィルムが張ってあって、見えるものがぜんぶ青っぽく照らし出されてる。
 見た目からして涼しいな!
 ここでひとつのお話を話し終わった人は廊下に出て、その懐中電灯をひとつ消すってルールみたい。
 懐中電灯の置かれているところには姿見の鏡があって、懐中電灯を消したらその鏡で自分の姿を確認してから戻ってくるんだって。
 こんな怪談のやり方があるんだなー。

「そ、それで・・・。4人だから、ひとりふたつずつくらい・・・?」
「うんうん。これたぶん、話している方が気がマギレて怖くないと思うから、ハナちゃんとミャーさん3つずつでいいよ☆」
「う、うん。ありがとう・・・」
「簡単なお話でいいんだよね? 雑談みたいな」
「そうそう。お話自体は日常的なのでいいんだよー」
「じゃあ、はなはみゃー姉にしがみついてていいから、やってみるぞ。みゃー姉・はな・のあ・私の順で」

 そこから、それぞれのお話が始まった。はなもみゃー姉にしがみついてぶるぶるしてたけど、叫んで中断することはなかった。
 のあが私の誕生日プレゼントを用意してくれたお話とか、こよりと一緒にチョコを作ったお話とか。
 私がどれだけみゃー姉のことを考えてるかをまとめたお話とか。
 みゃー姉が松本と真剣な話し合いをするお話とか。
 みんなそれぞれが、最近考えて、わたてにんぐ劇場として発表したお話を思い出しながらお話してくれていた。

「いまさらだけど、いろんな意味でメタいと思うのアタシ」

 そうだな!
 それぞれルール通り、お話終わったら廊下の突き当たりまで行って、懐中電灯を消していく。
 はなは最初はみゃー姉についていってもらっていたけど、2回目からはちょっとだけ慣れたみたい。ひとりで行ってささっと帰ってきていた。
 そして今、最後の十個目。
 はなが見た夢が、おとーさんの書いた物語とそっくりで、それが現実とリンクしてたっていうお話をし終わったところだ。
 あっという間だな。展開早くていい感じだ!

「はい。よろしくお願いします────」

 みんながはなの語るお話に聞き入っていて、じんわりと感動の涙を浮かべている。
 よかったな、みゃー姉、はな。いろいろあったけど、二人とも最後に結ばれたんだな。
 式には絶対行くからな!

「アタシ、感動しちゃった・・・。むしろここを式場にしちゃっていいと思う」
「こんなドロドロしたところは嫌だよ」
「・・・! だ、だよねぇ。あはは・・・」

 みゃー姉はこの場ではなに着つけようとしていた礼服を、もう一度大事そうにしまいこんでいる。

 はい、みゃー姉。このハンカチで涙ふいてくれな。
 私も用意していた花火をポケットにしまって、物語の進行を続けることにした。

「じゃー、ハナちゃん。ラストいってらっしゃーい☆」
「花ちゃん、頑張って」
「トリはやっぱりはなかー。大役だな!」
「うぅ、やっぱり行かないとダメ・・・?」

 はなは自分が貞子みたいになりながら、幽霊のように重い足取りで部屋を出ていった。

「ユウレイって、足ないんじゃなかったっけ?」

 おう、そうだぞ! 自分で書いててもおかしいって思ったけどな。
 あと部屋の中からははなの様子が分からないから、ここから先ははなの一人称でよろしくな!

「ヒナタちゃん、メタすぎるし無茶ぶりだと思うのアタシ」
「大丈夫だ! はなならできる。気にしなくていいぞ!」

02

 気にして。
 ああ、もうなんでこんな・・・。怖い。どうしようもなく怖い。
 勢いでお姉さんの部屋を出たのはいいけど、廊下は青い光が乱反射していて、青一色に染まっている。やっぱり怖い。
 それに、懐中電灯が最後の一本だけになっていて、廊下がすごくうす暗い。遠くでぼんやり光ってる青い懐中電灯がようやく見えるくらい。
 私はその青い光だけを見つめながら、一歩ずつ近づいていく。というより、怖くて周りを見られない。

 今、後ろを振り返ったら・・・。

 ダメ! 余計なこと考えたら動けなくなっちゃう。さっき二本目の懐中電灯を消したとき、お手洗いには行っておいたからおもらしの心配はないけど・・・。
 じりじりと青い光に近づいていく。
 うぅ、お姉さん、私、ノア、ひなたの順で十個やったら、私がラストになるの分かってたのに。こんなことなら無理やりにでもノアと順番変わってもらえばよかった。
 懐中電灯のところまでようやくたどり着く。廊下が百メートルくらいあるように感じたけど、これでやっと終わりにできる。
 私は懐中電灯を手にとってスイッチを探す。十本全部違う懐中電灯だから、当然スイッチの場所がすべて違うところにある。
 あった。このスイッチを切って────。

「・・・待って・・・。これ、切ったら・・・」

 ここ、真っ暗になる────。

 うぅ、そこまで考えてなかった。今ここで真っ暗になったら、その後どうやってお姉さんの部屋まで戻ればいいの?
 そう思って、お姉さんの部屋の方をちらりと見ると、部屋の中の明かりが薄く漏れているのが見えた。
 ああ、あのお姉さんの部屋の光を頼りに戻ればいいんだ。
 よかった。完全に真っ暗になる訳じゃなさそう。怖いのは怖いけど・・・。やるしかない。

 ここから先の手順を確認する。まず、懐中電灯を消して、鏡で自分の姿を確認して、お姉さんの部屋に戻る。
 それですべてが終わる。
 大丈夫、できる。怖いけど、今は自分しかいない。
 やさしくてあったかくて頼れるお姉さんは、今ここにいないんだから────。
 意を決して、私は懐中電灯のスイッチを切って、鏡を覗き込む。
 ほぼ真っ暗で、自分の姿はシルエットくらいしか分からない。お姉さんの作った薄紫色のパジャマも、今は淡いグレーにしか見えない。
 よし。確認した。特に何もおかしなところは────。

 ・・・あれ?

 なんだろう、これ

 私の顔の右上あたりに、何か白っぽいものが────




「ばあっ」





「ぎゃああああぁぁぁーーーーーーっっっ!!!

03

 そのあと────。
 どうやら私は気を失ってしまったみたい。
 悲鳴を聞いて廊下に駆けつけてくれたお姉さんが、私をお姉さんのベッドに寝かせてくれたらしい。
 私が気を取り戻すと、怪談の発案者のノアと、進行役のひなたと、飾りつけを作ったお姉さんが順番に謝ってきた。

「ハナちゃん、ゴメン! やっぱり怖かったよね。アタシがやりたいなんて言ったから・・・」
「はな、順番決める時に気づかなくてごめんな? 大丈夫か?」
「花ちゃん・・・。よかった。怖がらせてごめんね・・・」

 ひなたとノアは涙を浮かべて頭を下げている。お姉さんは号泣して私の左手を両手で包みこんでいる。
 確かに、怪談なんてやりたくなかったし、部屋と廊下の飾りつけはおどろおどろしかったし、私がラストなんて嫌だった。
 でも────。

「・・・ううん。私が怖かったのは、鏡に写ったお化けみたいなものだったから」
「オバケ?」
「はなしか廊下にはいなかったぞ?」
「えぇ・・・。本当の怪奇現象・・・?」

 怪奇現象、だったのかな。
 なんだか、お母さんの声に似ていたような気もするんだけど・・・。
 でもまさかお姉さんの家に忍び込んでまで驚かそうとするとは思えないし。
 本当、あれはなんだったんだろう。

「もう時間も遅いし、そろそろ寝ようか。花ちゃんはそのままそこ使っていいよ」
「え・・・でもお姉さんのベッドなのに」
「ハナちゃんとミャーさんで、一緒に寝たらいいんじゃない?」
「そっ そんな私は床でいいよ・・・。花ちゃんがゆっくり寝られないから」

「・・・お姉さん、私は大丈夫なので、その、一緒に・・・」
「か、かわぁ・・・!」
「じゃあ決まりだな! のあは私のベッドで一緒に寝てくれな」
「ヒ、ヒナタちゃん・・・///」
「ノア・・・。頑張って・・・」

 今日は怖かったから、絶対寝られないと思っていた。
 でも、今はお姉さんが横にいてくれるから、思ったよりは怖くなくて。
 お姉さんは遠慮してるのか、変に距離を取っているけど、もっと近くにいてくれないと怖くなっちゃう。
 私の方から距離を詰めて、お姉さんの胸に顔を埋め込む形にした。

「はっ 花ちゃ・・・」
「・・・この方が落ち着くので。お願い、こうさせて・・・」
「は、はいっ・・・!」

 いろいろ怖かったし、結局謎は残ったままだけど。
 でも、私にはここがある。お姉さんのそばにいれば、私は何があっても怖くないと思える。
 なんだか悔しいけど、そんなことがはっきりした、夏の夜のイベントだった。



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──      「夏の終わりの、怪談話。」   完  ──
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たねあかし



チャットログにもありますように、白咲花さんを驚かせたのはお母様の「白咲春香」さんでした。




プロフィール画像はこちらになります。(自作しました)




白咲春香さんは一言だけご出演され、そのまま誰にも気づかれぬよう姿をお消しになりました。

まるで幽霊のようですね(微笑)

かわいい娘の姿を見たいという、親心ということで……。























一般チャットで行われた実際の「オンライン☆わたてにんぐ劇場」のチャットログはこちらから。
オンライン☆わたてにんぐ劇場 「── 友へ捧ぐ物語 ── 天満月の、灯篭流し。」









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──      天満月の、灯篭流し。      ──
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 ■作品イメージタグ■
  #私に天使が舞い降りた! #わたてん! #星野ひなた #星野みやこ #みやひな #鎮魂歌 #シリアス

 ■作品文体■
  一人称小説

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──      「天満月の、灯篭流し。」      ──
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 今はもう夜の10時。いつもならひなたも寝る準備を済ませて、私にべったり甘えている時間帯。眠くなってくるとぐずるから、頃合いを見てひなたを2階に連れていくところまで私の仕事になっている。
 まぁ、ベッドに横にさせてから本当の戦いが始まるんだけど・・・。

 でも、今日は姿が見当たらない。部屋の中というか、家の中にいないような気がする。そのくらい妙に静かだった。
 こんな時間に?
 はっとして、縁側から庭を覗いてみる。すると、ひなたはすぐ見つかった。
 昼間、散々遊んでいたビニールプールのそばに、ひなたはしゃがみこんでいる。庭は照明がないから、ひなたを照らすのは月明かりだけ。今日は満月だけど、人工の光に慣れてしまうとあまり明るくは感じられなかった。
 いつもはじっとしてることが少ないひなた。でも今はプールの水面を見つめて微動だにしない。
 そうだった。水遊びで疲れちゃったから、プールの片付けは明日にしようと思ってそのままにしておいたんだった。

 それにしても、ひなたはどうしたんだろう。しゃがみこんで寝ちゃったかな? でもそれなら暴れるだろうしな・・・。
 そんなことを考えながら、縁側から出てひなたの方へ向かう。すると、ひなたの手元がぽうっと明るくなった。

「────ひなた?」
「・・・みゃー姉か?」

 ひなたのそばまで近づくと、小さな灯篭のようなものがプールに浮かんでいるのが見えた。
 牛乳パックの舟に、乾電池と豆電球が乗っていて、四方を囲むように和紙が張られている。

「これな、学校で作り方教わったんだ」

 私はひなたの肩に手を添えて、ひなたの視線に合わせるようにしゃがみこむ。
 灯篭はろうそくを使っている訳でもないのに、ゆらめいているように見えた。水面がゆらめいているからかな。
 ひなたと一緒に、ぼんやりとその灯篭を見つめる。すると、和紙にひなたの字で何か書かれているのに気づいた。


──── ありがとう ────


「・・・本当はな、川に流すんだって。でも、近くに川ないからな」

 ひなたはそれだけ言うと、静かになった。
 あの元気の塊のようなひなたが、私と一緒の時に静かになるなんて。
 もしかしたら、ひなたによく似た別の子なのかもしれない。そんなことを考えて、ひなたの横顔を見つめてみると────。
 敬虔な修道女のように手を組んで祈りながら、ひなたは一筋の涙を流していた。

「っ! ひなた?」
「・・・この間な、お友だちの大切なものが、いっぱい、いっぱい消えちゃったんだ」

 ひなたはそのままの体勢で、静かな声で訥々と語り始めた。

「・・・お友だちはな、それを使って、誰かをよろこばせよう、楽しませようとしていたんだ」
「でもな、この間それがいっぺんに、ぜんぶ消えちゃってな。もう二度と戻ってこないんだって」
「なんだか、悲しくてな────」

 こんなひなたを見たのは初めてだった。私は金縛りにあったかのように、ひなたの肩に手を置いたまま動けなくなってしまった。
 ひなたが悲しんでいる。それなら抱き締めてやらなきゃ。

 そう思うのに、今は動いてはいけないような静謐な空気が場を支配していた。

「だけど、それは今までいっぱいいろんな人に見てもらって、感動してもらったり、笑顔になってもらったりしてきたはずなんだ」
「それは消えちゃっても、お友だちがそうしてきた想いも、努力も、感動も消えたりしないんだ」
「だからな、みゃー姉」

 そう言って、ひなたは厳かに立ち上がる。
 つられて見上げると、頬を濡らしたひなたが満月を背景にニッと気丈に笑うのが見えた。

「私は、そのお友だちと、消えていった大切なそれらにありがとうって言うんだ」
「いつもありがとう。いままでありがとう。これからもよろしくな、って・・・!」

 私は立ち上がりながら、そんなひなたを包み込む。
 いつも花ちゃんばかり輝いて見えていたけど、今はひなたも同じくらい輝いて、天使のように見えた。
 天使のように繊細で、私の大切な、尊い妹。

「うん・・・。そうだね、ひなた・・・」
「うぅ、みゃー姉ぇ・・・」
 
 抱きしめながら、ひなたの想いが詰まったゆらめく灯篭を見つめ続ける。
 神様。どうか小さな天使にささやかな祝福を。せめて、この涙を止めてあげてください────。
 私はひなたが落ち着くまでの間、そう祈り続けるしかなかった。

 それは、儚くも美しい、真夏の夜のお話────。


────────────────────────────
──      「天満月の、灯篭流し。」   完  ──
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【物語の補足情報】

リンドビオルサーバでは連日稼働の不安定な状況が続いており、サーバダウンが一時期頻発しておりました。
今もまだ完全には直っておらず、変わらず不安定な状況です。早期の回復が望まれています。

リンドビオルサーバのイルミネーションアーティストであるわためさんは、レース場をキャンバスとしたアート作品をお作りになることを何よりの楽しみとされているそうです。
メンテ開けから次のメンテまでの間に作成し、メンテ直前にアートに使用したイルミネーションなどを回収する。といったサイクルで楽しまれていました。
しかしながら、メンテナンス直前の火曜日の夜にリンドビオルサーバがダウンするという事件が起きてしまいました。
大作の完成間近だったとのことで、床置きしていた大量のイルミネーションはすべて消滅してしまいました。
わためさんは天使たちのお友達であり、サーバダウンから復帰してすぐひなたさん乃愛さんがレース場に駆けつけましたが、わためさんと共に悲しむことしかできなかったそうです。
本作はその時のひなたさんの感情から生まれたお話であり、主に「アートを生み出してきた貴重なイルミネーションの喪失」を主題とされています。

消えてしまったことは悲しいことですが、これまでの感謝と共に丁重に送り出そうとする心。
まさにひなたさんの、その天使らしい慈愛の御心に満ちた物語と言えるでしょう。


※天満月(あまみつつき)とは、満月のことを指す言葉です。夜天をくまなく明るい光で満たすほどの、やさしく溢れる光という印象を受ける綺麗な言葉ですね。









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