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一般チャットで行われた実際の「オンライン☆わたてにんぐ劇場」のチャットログはこちらから。
スクリーンショットは星野ひなたさんと暁美ほむらさんがご提供くださいましたので、チャット内容や環境設定は彼女たち基準となります。
また、今回は観客の皆様の反応(パーティーチャット)もチャットログに時系列で入れこんでみました。
※ほむらさんもすべてを撮れていないとのことで、パーティーチャットは一部不完全です。
※血盟チャット部分と一般チャット部分は基本ひなたさんのものを、パーティーチャットと一般チャット混在部分はほむらさんのものを使用しています。お二人のスクリーンショットを合成して1枚にまとめております。
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イベント開始前、集合~ご歓談~お題発表時の様子
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「たより、たよられ、みやこより。」 01 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「たより、たよられ、みやこより。」 02 チャットログ
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【小噺】芋けんぴとパーソナルカラーについてのお話
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「たより、たよられ、みやこより。」 03 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「たより、たよられ、みやこより。」 おまけ~解散 チャットログ
このところ恒例となってきておりますが、同盟員だけでなく「天使たちのお友だち」を主な対象とした即興劇を、人数制限のない一般チャット(白チャット)にて実施してくださいました。
今回は同盟員のハーブ・フォースさんが同盟チャットにて、星野ひなたさんに「みやより(みやこさんこよりさん)の話を見てみたい」と依頼され、その場でひなたさんがお話を膨らませてできあがったそうです。
もちろん、実際の演者は星野みやこさんと種村小依さんですので、ひなたさんからお二人に連携されて細かいディテールはみやこさん小依さんにより作りこまれ完成品となりました。
なお、今回の「錬金術師マチルドさんのお宅」ですが、ここをほむらさんが選定された理由はもうひとつ公演予定であったえぶいさんとグレン・ヴィータさんのリクエストをミックスした
「松本香子さん+姫坂乃愛さん+星野みやこさん」のお話でハロウィンパーティーのシーンが登場する予定だった為とのこと。
お時間的に次回に持ち越しとなりましたが、お話の内容が変わらなければ次回も同じくマチルドさんのお宅になるかもしれませんね。マチルドさん、お騒がせしております(苦笑)
また今回も天使たちの裏方のやり取りとなる血盟チャットを公開していただけましたので、天使たちの微笑ましい舞台裏も含めてお楽しみください。
冒頭でも記載しましたが、上記のチャットログはひなたさん視点の一般チャット+血盟チャット、およびほむらさん視点の一般チャット+パーティーチャット混在となっております。
主な観客はえぶいさん、わためさん、まいちゃんさん、ハーブ・レミットさん、ハーブ・フォースさん、暁美ほむらさん。そして、今回初参加してくださいましたうらりんさんとレム君でした。
うらりんさんはリンドビオルサーバの名物となっている「お夕飯ワールドチャット」をされていまして、夜間のワールドチャットに穏やかさを添えてくださっています。
また、うちの爺や、ギランのまどかさんと共にテオン時代からずっとオーレン城の村にてショット屋さんを営まれている良心的な老舗です。
なお、この時の公演会の記事を【週刊うらりん】にて作ってくださったようです。 →
【週刊うらりん】公演会
記事では懐かしのスカイランサーの居城から始まり、なぎささんが初主催した【世界樹の影寺子屋】も載っており、大変感謝いたします。
狩り以外での楽しみを追求するという、一般的には風変わりな取り組みに思えるかもしれませんが、うらりんさんのように心から楽しんでくださるのは天使たちも望外の喜びを感じていると思います。
わたてにんぐ劇場を公式コミュニティの記事に掲載してくださったのは初めてのことですので、大変恐縮しております。ありがとうございます。
ご参加のみなさま、今後とも天使たちならびにミスリル同盟メンバーと親しくしてくださいますと幸いです。
■記載ルール■
メイン記述者(進行者。今回は星野みやこさんと種村小依さん)が直接一般チャットに地の文を書き、他登場人物は「」で囲む形でセリフを書くことで物語を紡いでいきます。
今回は一部原稿を用意したとのことですが、ほぼ彼女たちのアドリブで構成されています。
☆☆☆☆☆ イントロダクション ☆☆☆☆☆
── リンドビオルサーバのとある同盟では ──
── 気ままに天使たちが舞い降りては 一遍の物語を協力して紡ぎ 人知れず飛び去っていく──
── という噂がまことしやかに囁かれています ──
こちらの記事は「エンジェリック・ミスリル・ハーツ・フェデレーション」内「天使が舞い降りた」同盟において
天使たちの紡いだ物語を一般公開できる形で記録に残そうと考えまとめたものとなります。(天使たちの公開許可はいただいております)
「私に天使が舞い降りた!(わたてん!)」という作品世界から、こちらの世界に飛ばされてしまった天使たち。
戻る術が見つからない日々の中、お友だちの代理露店をこなしながら元気に楽しげに生活されています。
時折、突発的に始まるリアルタイムでの「物語の編纂(即興劇)」というお遊戯は、その完成度の高さ、内容の睦まじさにより
見る人に癒しと潤いを与えてくれるものとなっており、まさに【天使】のような存在となっています。
今回のメイン記述者は「星野みやこ」さん、「種村小依」さん。
主なキャストは「白咲花」さん、「星野ひなた」さん、「姫坂乃愛」さんでした。
私に天使が舞い降りた! 公式サイト
より、プロフィール画像はこちらになります。(コンパクトにまとめました)
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── たより、たよられ、みやこより。 ──
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■作品イメージタグ■
#私に天使が舞い降りた! #わたてん! #星野みやこ #種村小依 #白咲花 #星野ひなた #姫坂乃愛 #星野千鶴 #みやより #パーソナルカラー #リクエスト
■作品文体■
一人称小説
■お題■
「紅葉」
「感謝」
「ラスボス」
※オンラインでのわたてにんぐ劇場では、白咲花さんがメイン記述者に「3つのお題」を開始直前に出されます。
メイン記述者もしくは参加者はランダムで出されるその「お題」を地の文やセリフのどこかに取り入れてお話をリアルタイムで紡ぎます。開始直前に発表される為、事前に考えておくことができません。
今回はミスリル同盟員のグレン・ヴィータさんがお題を考えてくださったそうで、その中から白咲花さんがチョイス+追加をされて今回のお題となったそうです。
事前にお題を出され、じっくり考えた場合でもランダムキーワードを取り入れて物語を紡ぐことはかなりの高等技術ですが、毎回みなさんすんなりとオンラインリアルタイムでこなされているので驚愕しております。
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── 「たより、たよられ、みやこより。」 ──
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01
「あーあ。今日は私ひとりっきり・・・」
今は放課後の時間。ひなたちゃんたちはどこかに寄り道をするみたいで、ホームルームが終わったらすぐに3人で帰っちゃった。
今日はクラス委員のお仕事が放課後にあったんだけど、かのはおうちの人と予定があるって分かってたから先に帰ってもらって、私が代わってあげたの。
もちろん、お仕事はちゃんと終わらせたわ。3回くらい転んだだけで全部片付いたんだから! 本当よ?
でも・・・。
「・・・なんだか、お仕事しててもかのがいないと張り合いがないのよね。どうしてかしら」
かのはいつも、私のこと頼ってくれるわ。だけど、今はかのがいないから頼ってくれる人がいないの。
むむむ、この気持ちはなんなのかしら。
頼ってくれるなら誰でもいい・・・ってものでもなくて、かのが頼ってくれるのが嬉しいっていうか。
隣にかのがいてくれるのが当たり前になっていたから、今日みたいにたまにかのがいないとなんとなく心にスキマができちゃうような。そんな気分なのよね。
私、かのがいなくてさびしいのかしら。
「わ、私はひとりでも平気よ!」
誰にともなくつぶやいて、ひとりでとぼとぼとおうちの方へと歩いていく。
そう。私はかのより大人だから、ひとりでも平気なの。
たまにかのと一緒に寄り道をするコンビニまで歩いてきて、なんとなくお店の中に目がいっちゃう。今日はひとりだから寄り道しないけどね。
「・・・あれ?」
そのときお店の中で見かけたのは、とっても意外な人だったの。
02
「みやこ。これがラストチャンスだからね。もう次はないと思いな」
「そんなこと言われても・・・」
「いいからこれで服を買ってきな。間違っても生地買ってくるんじゃないよ。いいね?」
こわーいお母さんから、そんなこわーいことを言われてしまって。うちにいることもできなくなって、文字通り転がり出てきたところ。
一応、香子ちゃんが作ってくれたお出かけ用の服には着替えて、お守り代わりの花ちゃんのヘアピンは着けてきたけど・・・。
「ああーーー・・・。気が重いーーー・・・」
ひなたもまだ帰ってきてないし、ひとりで行きたくないなぁ・・・。でも、家には鬼がいるから帰れないしなぁ・・・。はぁ・・・。
「・・・まぁ、とりあえず。ここで英気を養おう。うん」
家から出て、行くあてもない私は(本当は服屋に行かないといけないんだけど)、とりあえずの居場所として近所のコンビニまで移動して中に入る。雑誌は立ち読みができなくなっているから、特に意味もなく陳列されている商品をゆっくりと眺めていく。
窓際の雑誌コーナーに差し掛かった時。窓の外で何か赤いものがぴょんぴょんしているのが見えた。なんだろう・・・? どうやら窓ガラスのすりガラス部分が見えないから、その上の透明なガラスからこちらを見ようとして飛び跳ねているみたい。
元気だなぁって思って見つめていると、その赤い人影はコンビニの入口から入ってきて私の目の前まで駆け寄ってきた。
「ひぃっ! な、なんですk」
「やっぱり、お姉さんだったわ! お買い物してるの?」
いつもの防御態勢で頭を覆ったけど、その声は私のお腹くらいの高さから聞こえた。まるでひなたくらいの位置から。
あれ? と思ってよく見てみると、その赤い人影はこよりちゃんだった。
「な、なんだぁ・・・。こよりちゃんかぁ。びっくりしたぁ~」
「驚かせちゃってごめんなさい。でも、お店の外からお姉さんが見えたから、なんとなく嬉しくなっちゃったの」
そういうこよりちゃんを見てみると、制服でランドセルを背負ってるから学校帰りみたい。
ちょっと気になって、こよりちゃんに確認してみる。
「今日はかのんちゃんは?」
「かのはおうちの用事で先に帰っちゃったわ」
「そっかぁ・・・」
なるほどね。それで、私を見かけて走ってきたってことか。ちょっと寂しかったんだろうな。
こよりちゃんをよく見てみると、なにかを期待しているようなキラキラとした瞳をしていた。
うぅ、私、このきれいな瞳に弱いんだよなぁ・・・。
「えっと、こよりちゃん?」
「今日はお姉さんどうしたの? お外にいるなんて、なにかあったの?」
「あ、えっと・・・。なにか・・・は確かにあったんだけどね」
こよりちゃんも寄り道してるとおうちの方が心配するだろうから、早めに帰るようにうながそうと声をかけたんだけど・・・。逆に心配されちゃった。あはは・・・。
「大丈夫? 私になんでも頼っていいのよ!」
「こよりちゃん・・・。あ、それじゃあ・・・」
いよいよ期待の籠ったキラキラした瞳で私を見つめるこよりちゃん。ああ、ニフラムで浄化される魔物の気持ちがよく分かる。
それにしても、ひなたのお友だちには聖属性の強い子が多いのはどうしてなのかな・・・。属性で言ったらかのんちゃんは聖なる光、ノアちゃんは聖なる火、花ちゃんは聖なる水って感じかな・・・。ひなたは炎だけどね。
ちょっと胸が痛くなって目をそらしつつ、私は二人分の飲み物を買ってこよりちゃんと一緒にコンビニを出た。
紅葉がきれいな近くの公園でこよりちゃんとベンチに並んで座る。
温かい飲み物のうち、コーヒーとお茶のどちらにするか選んでもらうと、こよりちゃんは迷わずコーヒーを手に取っていた。
「お姉さんありがとう! ・・・うん。コーヒーもおいしいわね!」
「うんうん。そうだねぇ」
こよりちゃんならきっとコーヒーを選ぶだろうと思って、ミルク多めの甘いコーヒーにしておいて正解だった。
なんだかんだと、こよりちゃんとももう1年くらいのお友だち付き合いをしているわけで、少しずつだけどこよりちゃんの価値観も分かってきていた。
それにしても、ランドセルという破壊力抜群の代物を背負う制服のこよりちゃんはかわいいけど、一緒に行動するのは非常に危険な気がする。まだ時間は早いからおでかけするのは大丈夫だけど・・・。
「こよりちゃん。私からお願いがあるんだけど・・・」
「いいわよ!」
「即答!? えっとね、それじゃあ・・・」
私はこよりちゃんに、おうちに一度帰ってランドセルを置いて、着替えてからこの公園にまた集合してほしいこと。その後、一緒にお買い物についてきて欲しいとお願いをした。
こよりちゃんは小さな缶コーヒーを飲み干すと、私に笑顔とサムズアップで応えてくれた。なんだかすごく頼もしい。そして、公園のごみ箱にちゃんと空き缶を入れてから、おうちへと走っていった。
「あ~・・・ お茶があったかくておいしい・・・」
季節は11月。そろそろ寒くなってきて、温かい飲み物がおいしい季節になっていた。
時間はまだ午後2時くらいだから、これからお買いものに行っても1時間くらいで帰って来られるかな。それで午後3時でしょ? そこからひなたたちのおやつを作ると・・・手早くできるものならいいかな。
ババロアなら材料はあるし、冷蔵庫で冷ます時間入れても30分くらい。午後4時前におやつ食べ終わっていればお母さんも文句ないはず。
うん。このプランでいこう。
「お姉さん、お待たせ!」
「あ、こよりちゃん。早かったね」
この後のことを考えていたら、いつの間にかこよりちゃんが戻ってきていた。ちょっと走ったのか、軽く上気しているように見える。急がせちゃったかなぁ・・・。
「じゃあ、行きましょ!」
「あ、うん。行こうか」
こよりちゃんは私の手を引くと、ずんずん進んでいく。頼もしいなぁ。ちょっとだけかのんちゃんの気持ちが分かるような気がした。
でも・・・。
「あ、あのね。こよりちゃん」
「どうしたの?」
「デパートはあっちなんだけど・・・」
自信満々で反対方向に進もうとしていたこよりちゃんは、ちょっと顔を赤くして踵を返して。
こうして私たちは二人きりのパーティーで、ラスボス(デパートの店員)の待つ居城へと赴いたのだった。
03
「あ・・・ は・・・ ふひ・・・」
こよりちゃんの方向を途中で4回くらい変えながら、勇んでラスボスの居城(洋服屋さん)まで到着したのはいいんだけど・・・。
案の定、私はコミュ力抜群の店員さんに絡め取られ、会話すらできない状況に陥っていた。なんて恐ろしいデバフ・・・!
前はここでひなたが助けてくれたんだけど、今はひなたはいないからどうしようもない。万事休す!
なんて考えていたときだった。
「店員さん。もうちょっと明るい色のはないの? お姉さんのパーソナルカラーは見て分かるけどスプリングよ!」
「そうそう。段々よくなってきたわ! でも、もうちょっと今の季節に合う方がいいわね」
「うーん。これじゃお姉さんの瞳の色と髪の色に合わないわ。お姉さんはスプリングって言ったでしょ。店員さん、もっと本気出して!」
「あ! これいい! お姉さんきれいだから、こういうのすごくいいわね!」
・・・という感じで、あれよあれよという間に4回くらい試着させられて、こよりちゃんに全部決めてもらっちゃった。
というか、スプリングってなに? バネ? 温泉?
「お姉さん、今のコーディネートすごく似合ってるわ! これでいい?」
「あ、う、うん。こよりちゃんに選んでもらったこれにしようかなぁ」
姿見に映る自分を見てみる。確かに、今のこの時期にぴったり合うオフホワイトのロングスカートに、アイボリーのニット。それに明るいオレンジ色のトップス。
なんだか自分じゃないような気がするくらい、今の時期にぴったりのコーディネートだった。まるでファッション雑誌のモデルさんを見ているかのよう。
「すごい・・・。すごいよ、こよりちゃん」
「ふふーん! 私もだけど、ここの店員さんもすごいわ。ぱぱっといろんなの持ってきてくれるんだもの」
見てみると、店員さんも額の汗をぬぐいながら満足げな表情をしている。まるでひとつのプロジェクトをやり遂げたような。
店員さんにテキパキと指示を出して、あっという間にベストと思えるコーディネートを決めちゃうこよりちゃん。体を動かしたり、なにかを作るのはうっかりミスが多い子だけど、こういったセンスにはきらりと光る物を感じる。
なんだか、お友だちの知らない一面を見られた気がして、すごく貴重な経験をしているように感じるなぁ・・・。
「じゃ、じゃあ。今着ているこれ、お、お願い、します・・・!」
店員さんは笑顔で私の声を受け止めてくれて、お会計も済ませてくれた。
更衣室で香子ちゃんの服に着替えて、さっきコーディネートしてもらった一式を大きな紙袋に入れてもらって、こよりちゃんと共にラストダンジョンを脱出したのだった。
「はぁ~~・・・・・・」
「お姉さん、大丈夫?」
「う、うん。大丈夫。すごく緊張してて、気が緩んだだけだから・・・」
こよりちゃんに支えられながら、近くの休憩用の長椅子に座る。
私、なんだか情けないなぁ・・・。こよりちゃんはひなたと同級生って意識も手伝って、自己嫌悪感が沸いてきてしまう。うぅ・・・。
でも、こよりちゃんとはお友だちとして対等だし、こよりちゃんが小学生だからとか考えるのは逆に失礼なんだよね。
これは、花ちゃんたちと友だち付き合いをするようになってから何度も苦い思いをして、ノアちゃんにも何度も窘められて、身にしみた教訓だった。
うん。だから私も年齢差なんて考えないで、正面からありがとうをしないとね。
私はこよりちゃんの両手を包んで、きれいな瞳を見つめて感謝の気持ちを伝えた。
「・・・こよりちゃん。本当にありがとう。こよりちゃんがいなかったら、私ここでお買いものできてなかったと思う」
「そんなことないと思うけど・・・。でも、頼ってくれて、よろこんでくれるのは嬉しいわ!」
ふふーんと、手を腰に当てて得意げに鼻を伸ばしているこよりちゃん。
こよりちゃんは他の子たちとはちょっと違うタイプだけど、こよりちゃんらしいところがすごくかわいいなぁと思う。
こよりちゃんと手を繋いで、帰り道もこよりちゃんがちょっと前に出る感じで一緒に家を目指して歩いていく。
道すがら、元気なこよりちゃんのことを見つめていろいろなお話をしてみた。その中で印象に残ったのがこんな会話だった。
「・・・ねぇ、こよりちゃん。そういえば最近、大統領選挙があったね」
「そうね! 今回はお年寄りに譲ってあげたわ!」
「あはは・・・。こよりちゃんが大統領になったら、どういう国にしてみたい?」
「そうね。みんなが好きな人にちゃんと「好き」って言える国にするわ!」
「そっかぁ・・・。それもすごく素敵だね」
「いいでしょ! 私が大統領になったらお姉さんたちも招待するから一緒に暮らしましょ!」
「ありがとう、こよりちゃん」
子どもらしくて、とてもかわいらしいなって。
最初はそんな風に軽く考えていたけど、よく考えてみるとそれは理想の国家なのかもしれないと思えてきた。
今はまだ無理だけど、花ちゃんが大人になって、私が勇気を出して告白しようとしたとき。周りの目を気にして言い出せないかもしれない。でもそんなときに、周りの目が気にならなければ伝えられるかもしれないよね。
それに、恋愛だけでなくもしかしたらもっと大きな地域や国同士の関係も、変なしがらみで言えないところを素直に好き、仲良くしたいって言えたら、もっと摩擦のない世界になるのかも。もちろん、根の深い偏見とかは残るだろうけど、ね。
こよりちゃんのような考えを持つ子がいっぱい増えたら、世界は変わっていくのかもしれない。その意味で、こよりちゃんたちは世界を引っ張って変えていく「天使」と言えるのかも。
キラキラとした瞳でまっすぐ前を見据えながら、私の手を引いて歩く頼もしいこよりちゃんを眺めて、私はそんなことを考えていた。
おまけ。
「ただいまー!」
「おかえり! みゃー・・・って、こよりか?」
「あれー? コヨリちゃんとミャーさん一緒だったの?」
「迷子属性の二人が一緒に出かけて大丈夫だったんですか?」
「あはは・・・。ただいま」
お姉さんと一緒に帰ってきたら、ひなたちゃんたちが出迎えてくれたわ。やっぱり学校からの寄り道より私たちのお買いものの方が時間かかってたみたいね。
今はお姉さんのお手伝いがしたくてたまらない気分。私のこといーっぱい頼ってくれるんだもの。これからおやつを作るみたいだから、私も一緒にお手伝いするわ!
「お姉さん! 早くおやつ作りましょう!」
「あ、うん。でも今日のおやつはあっという間にできちゃうものだから・・・。こよりちゃんはそばで応援しててもらえる?」
「分かったわ! まかせて!」
直接作るのをお手伝いしたかったけど、でも応援も大事よね!
お姉さんは部屋着に着替えてきて、手をよーく洗ってから材料と道具を用意していた。花ちゃんたちと一緒に、お姉さんを取り囲むようにしておかし作りを見つめる。そこからのお姉さんはまるで魔法使いのようだったわ。
小さいボウルが3つ、大きいボウルが1つとお鍋が用意されていて、ポットのお湯を大きい方のボウルにいれたと思ったら1つ目の小さいボウルにお砂糖と卵の黄身だけ入れて、大きいボウルの上で泡立て始めたの。
ついでにお鍋に牛乳とゼラチンかしら? を入れこんで弱火であたためて溶かして・・・。
なんて見ていたらさっきの泡立てがもう終わっていて、2つ目の小さいボウルに卵の白身を入れて泡立てて、3つ目の小さいボウルに生クリームを入れて泡立てて、ぜんぶを火を止めたお鍋にいれてさっと混ぜ合わせたら型に流し込んで冷蔵庫に入れちゃった。
ここまで10分かかってなかったんじゃないかしら。お姉さん、本当にすごいわ! 手際良さはかのと同じかそれ以上かも。
「よし。じゃあ固まるまで冷蔵庫で。こよりちゃん、応援ありがとう」
「あ、ううん。どういたしまして!」
よだれをたらしてる花ちゃんと一緒にお姉さんの動きにみとれてただけで、なんにも応援できなかったけど。
自慢げに腕組みしているひなたちゃんと、そんなひなたちゃんの隣でお姉さんをまぶしそうに見つめているノアちゃん、ボウルにちょっとだけ残ってるクリームに手を伸ばそうとしてる花ちゃん。
みんなお姉さんを中心に幸せそうな顔をしている。
すごいわ。私もお姉さんみたいになりたいって、改めて思っちゃった。
「それじゃあ、みんな。めしあがれ」
「いただきますっ あむっ ん~~~!」
「いただきます!」
「いただきまーす☆」
「いただくわ!」
お姉さんのおやつができあがって、みんなでいただきますをして。
スプーンで食べてみると、思っていた通り甘くてぷわぷわでとろりとしておいしい!
「お姉さんのお菓子、すごくおいしい。今日はお姉さんにいっぱい頼ってもらえて嬉しかったけど、やっぱりお姉さんってすごいわね!」
「えへへ・・・ありがとう。でも、こよりちゃんにとってはかのんちゃんのお菓子の方がおいしいんだろうなぁ」
「そんなことないわよ! どっちもすごくおいしいわ!」
「そっかぁ。ありがとうね」
「こういうのは、比べたりしないのよ。どっちもすごくて、どっちもおいしいの。それでいいのよ」
「こよりちゃん・・・・・・! うん、本当にそうだね。さすがこよりちゃんだね」
「ふふーん! こよりさんにまかせなさーい!」
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── 「たより、たよられ、みやこより。」 完 ──
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