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一般チャットで行われた実際の「オンライン☆わたてにんぐ劇場」のチャットログはこちらから。
※ 編集注 ※
以下のチャットログにおいて幾度かグランカインサーバの「純生さん」のお名前が登場しますが、絵笛さんが遭遇した「カボチャ変装の方」は純生さんではなかったことが後日判明したとのことです。
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公演会開始前、集合時の様子~お題発表
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「たいせつな同志だからこそ」 01 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「たいせつな同志だからこそ」 02 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「たいせつな同志だからこそ」 03 ~ 幕間 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「たいせつな同志だからこそ」 04 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「たいせつな同志だからこそ」 05 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「たいせつな同志だからこそ」 06 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「たいせつな同志だからこそ」 07 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「たいせつな同志だからこそ」 おまけ ~ ご感想 ~ 解散 チャットログ
スクリーンショットは姫坂乃愛さん、えてなさん、私が撮影したものになりますので、チャット内容や環境設定はそれぞれ基準となります。
今回は特に、私が物語の内容に感動したり、動揺したりして撮り漏れていた箇所が多く、えてなさんから送っていただいたチャットログにより完全版にすることができました。ありがとうございました。
保護者の皆様の反応(わたてん保護者会血盟チャット)をチャットログに時系列で入れこんでおります。また、天使たちの裏方のやり取り(わたてん公演会部血盟チャット)を公開していただけましたので、天使たちの微笑ましい舞台裏も含めてお楽しみください。
天使たちの舞台裏は姫坂乃愛さんが撮影されたものを、公演会全体と保護者さまの会話は私とえてなさんが撮影されたものを使用し、合成して1枚にまとめております。
今回も主に「天使たちのお友だち(保護者さま)」を対象とした即興劇を、人数制限のない一般チャット(白チャット)にて天使たちが実施してくださいました。
10月16日が松本香子さんのお誕生日であることから、主に「みやこさん好きの同志」である星野ひなたさんの一人称による「松本香子さんのお誕生日」がテーマの公演会となりました。
主な出席者は以下の通りでした。
わたてん公演会部:松本香子さん、星野ひなたさん、姫坂乃愛さん、星野みやこさん、白咲花さん、松本友奈さん、星野千鶴さん、白咲春香さん、姫坂エミリーさん
わたてん保護者会:絵笛さん、マイちゃんさん、うらりーぬさん、えてなさん、ミセリコルデさん、アリナ・グレイさん、御園かりんさん、御園かリんさん、みんなのお父さん
総勢18名でのイベントとなりました。いつもご参加ありがとうございます。
なお、まいちゃんさんが今回も公演会の内容をモチーフとしたイルミネーションアートを作ってくださり、その製作過程の記事を掲載してくださったようです。 →
コインもうちょっと配ってほしいね・w・
いつも天使たちの公演内容に合わせたイルミネーションアートを作ってくださいまして、ありがとうございます。
作品につきましてはいつも通り、乃愛さんがヴァラカスサーバにて撮影してくださいましたので本ページ下部に掲載させていただきます。
■記載ルール■
メイン記述者(進行者。今回は星野ひなたさん)が直接一般チャットに地の文を書き、他登場人物は「」で囲む形でセリフを書くことで物語を紡いでいきます。
☆☆☆☆☆ イントロダクション ☆☆☆☆☆
── リンドビオルサーバのとある同盟では ──
── 気ままに天使たちが舞い降りては 一遍の物語を協力して紡ぎ 人知れず飛び去っていく──
── という噂がまことしやかに囁かれています ──
こちらの記事は「エンジェリック・ミスリル・ハーツ・フェデレーション」内「天使が舞い降りた」同盟において
天使たちの紡いだ物語を一般公開できる形で記録に残そうと考えまとめたものとなります。(天使たちの公開許可はいただいております)
「私に天使が舞い降りた!(わたてん!)」という作品世界から、こちらの世界に飛ばされてしまった天使たち。
戻る術が見つからない日々の中、お友だちの代理露店をこなしながら元気に楽しげに生活されています。
時折、突発的に始まるリアルタイムでの「物語の編纂(即興劇)」というお遊戯は、その完成度の高さ、内容の睦まじさにより
見る人に癒しと潤いを与えてくれるものとなっており、まさに【天使】のような存在となっています。
今回のメイン記述者は「星野ひなた」さん、「星野みやこ」さん、「白咲花」さん。
主なキャストは「松本香子」さん、「姫坂乃愛」さん、「松本友奈」さん、「星野千鶴」さん、「白咲春香」さん、「姫坂エミリー」さんでした。
私に天使が舞い降りた! 公式サイト キャラクター紹介ページ
より、プロフィール画像はこちらになります。(コンパクトにまとめました)
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── たいせつな同志だからこそ ──
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■作品イメージタグ■
#私に天使が舞い降りた! #わたてん! #星野ひなた #松本香子 #星野みやこ #白咲花 #姫坂乃愛 #松本友奈 #星野千鶴 #白咲春香 #姫坂エミリー #ひな松 #ひなノア #花みや #誕生日 #プレゼント #聖女
■作品文体■
一人称小説
■お題■
「えっちな本」
「お友だち」
「プリンタルト」
※オンラインでのわたてにんぐ劇場では、白咲花さんがメイン記述者に「3つのお題」を開始直前に出されます。
メイン記述者もしくは参加者はランダムで出されるその「お題」を地の文やセリフのどこかに取り入れてお話をリアルタイムで紡ぎます。開始直前に発表される為、事前に考えておくことができません。
事前にお題を出され、じっくり考えた場合でもランダムキーワードを取り入れて物語を紡ぐことはかなりの高等技術ですが、毎回みなさんすんなりとオンラインリアルタイムでこなされているので驚愕しております。
『マジカル双子探偵、かりんとかリん! ここに登場なのー!』
『ふたり揃っ』
『熱病のドッペル! あぁ、愛しいアリナのドッペル・・・!』
『きゃああああ! 名乗り中の攻撃は反則なのーーーー!』
『初手ドッペルも反則なのーーー!』
うぞぞ・・・ ごぽごぽっ びちゃ びしゃっ
『そんな甘いこと言ってるからいつまでもフールガールズなワケ。キョーキョキョキョ!』
『うぅ、痛いの・・・。体中に毒が回って・・・! き、気持ち悪い・・・』
『うぅ、全身あちこちから出血してるの・・・。マジカルきりんみたいになりたかった・・・の・・・』
ずるっ どちゃっ・・・
『・・・・・・。 ハァ。まったく、ガッカリなんですケド』
ヒュッ キンッ キンッ
『ここにグリーフシード置いておくカラ。次はもっと楽しませてヨネ』
コッ コッ コッ・・・
『・・・さて。クライアントからの「探偵を名乗る者を葬り去れ」ってオーダーもコンプリートしたことだし。連絡だけしてアリナはアートワークに没頭するカラ』
『Connect with a secret line. CODE : F U B S 41』
トゥルルルル トゥルルルル ガチャッ
『Hello, Sherlock? It's Alina. The requested work is over, so please send me bright paint as a reward. Oh yeah・・・』
『次回、「大ピンチ!マジカル探偵の九相図!」お楽しみに!』
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── たいせつな同志だからこそ ──
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01
【10月3日 日曜日】
今日は日曜日。のあとはなが昨日からお泊まりに来ていて、さっき朝ごはんを食べ終わったとこ。今日はみゃー姉のごはんだった。いつも本当においしくて、たまに食べないと体が震えてくるくらいなんだ。
いつもパンが多いけど、今日はごはんでな。昨日の夜の筑前煮と、大根おろしが乗ってるだし巻き玉子。それにごはんとお味噌汁とヨーグルト。お味噌汁もな、オクラとお豆腐で栄養もバッチリなんだ! ふわふわのとろろ昆布も乗っててねばとろでゅるでゅるでうまいぞ!
はなのだし巻き玉子はちょっと甘めに作ってるみたいで、いつものキラキラした顔ではなもいっぱい食べてた。さすがみゃー姉!
おなかいっぱいになって、三人で朝のアニメを見ていたんだけど、なんとなく薄暗い感じのお話でな。リリキュアとおなじまほーしょーじょもので、双子の探偵が主人公なんだけど、まだ二話なのに死にそうになってて。
血とかおなかのなかみとかいろんなものが飛び散っててちょっとこわいんだけど、画面が真っ赤になるときはのあが私の目をふさいできて抱きついてくる。
のあもやっぱこわいのか。よーしよしよし。
「うー、それ最近始まったアニメだよねぇ。ハロウィンにまつわる事件の謎をジェミニのマジカルガールが解いていくお話だっけ? タイトルはー・・・えっと」
「『ふたりはジェミニディテクティブ! 異世界転生したら何故か双子になっていた私たちは探偵として事件を追うことになったけど憧れの先輩が立ち塞がってきてさぁ大変! かりアリかリ逆ハーレム目指して今日も頑張るぞいなのー!』ってアニメ」
「タイトル長いな」
「その副題っていうかあらすじ要る?」
「んー、じゃあ長いから『双子探偵』で」
「一気にすべての特徴がなくなったね」
「第二話なのに主役の双子がもうボロボロだぞ!? それにしてもこのアリナって強いなー。デルムリン島に来たときのハドラーみたいだ」
「というか、日あさにこんなグロいの流していいの? 赤黒い血の水溜まりとか、あと、なんだか分からないけど内臓が床に落ちてて・・・」
「あれたぶん、膵臓だと思うのアタシ」
「うぅ、気持ち悪くて吐きそう・・・」
「九相図って言ってたけど、ハロウィンまで生き延びられるとイイネω」
「・・・あ、お姉さん。今日のお菓子はなんですか?」
食後のお片付けが終わったみたいで、みゃー姉がリビングにいる私たちのところに来てくれた。
早速はなはみゃー姉にくぎ付けになってる。キラキラした瞳で見つめてて、いい笑顔だ。さっきまで吐きそうになっていたのにコロコロ変わるなー。
「花ちゃん。さっき朝ごはん食べたばっかりでしょー?」
「お姉さんのお菓子は別腹です」
「別腹をなんだと思ってるの? もー」
「ミャーさーん☆ 今日の撮影はどんなの?」
「今日はハロウィンコスにしようかなって。かわいいのいろいろ持ってきたよー」
「わー アタシこの小悪魔のがいい! しっぽがカワイイ☆」
「私はなんでも・・・。じゃあこのホウキとセットの魔女っ子かな。布が多いので」
「私はオオカミにするぞー! のあをガブッとしちゃうぞー!」
「やーんω ヒナタちゃんってばー☆ アマガミするならこことかここにしてネ」
「お? おおー、ここかー」
「いいね! 花ちゃん、ホウキにまたがって、そのまま飛んでみて!」
「飛べません」
うん。いつもどおりだな。
ちゃんといつもどおり、みゃー姉がいるときはみゃー姉が私たちの中心になってていい感じだ。
はなも言葉ではそっけなく言ってるけど、一番みゃー姉に近いところにいるし目はキラキラしてるから嬉しいんだろうな。
のあもみゃー姉の作る服はどれもかわいいから積極的だし、みゃー姉もさすがに慣れてきたみたいでみんながいるところでも自然に過ごせてる。本当によかった。
去年はあんなにびくびくした感じだったのにな。この一年でみゃー姉も成長したなー。うんうん。
「ハロウィンかぁ。そういえばそろそろマツモトさんのお誕生日じゃない?」
「そうだっけ? えっと・・・ あ、本当だ。今月の真ん中あたりだね」
「香子ちゃんも二十歳になるんだね。なにかお祝い考えないとなぁ・・・」
おー、そういえば松本の誕生日そろそろだな。
松本は私と一緒でみゃー姉大好きだからな。みゃー姉のすごいところも、みゃー姉のかわいいところも、私と同じくらいいっぱい知ってる同志だ!
うちでなにかイベントするときは、できるだけ松本も呼ぶようにしてる。私も松本にみゃー姉ががんばってるところを見てもらいたいし、自慢したいし、松本もそんなかっこいいみゃー姉が見られたら嬉しいだろうしな。
「よーし。松本の誕生日、みんなでお祝いするか!」
「いいよー。パーティー楽しそう☆」
「うん。いろいろ準備しないと」
「香子ちゃんかぁ・・・。私くらいの年代だと何が嬉しいんだろう・・・」
「自分がもらって嬉しいものでいいんじゃないですか?」
「ハナちゃん。それだと「ハナちゃん」になっちゃうよ? マツモトさんとこ行きたい?」
「う・・・」
「そっ、それはダメ!」
こうして私たちは、松本の誕生日イベントの準備をすることにしたんだ。
まだ二週間あるし、なんとかなるだろ。松本に喜んでもらえるようにがんばるぞー!
02
【10月4日 月曜日】
昨日は撮影会をして、みゃー姉の作ったおやつを食べて解散になった。
あのかぼちゃのプリンタルト、おいしかったなー。はなはタルトまるごとひとつくらい食べてたし、いつも少なめにしてるのあもおかわりしてたから、みんなも大満足だったと思う。
「なー、みゃー姉」
「んー? なぁに? ひなた」
学校から帰ってきて、みゃー姉とふたりきり。いつもならいっぱい甘えるんだけど、今日はそういう気分になれなかった。
松本のプレゼント、なにがいいかあれからずっと考えてる。
松本も私と同じでみゃー姉大好きだから、きっとみゃー姉が欲しいって言うはず。
でもなー。みゃー姉は私のだし、一人しかいないからプレゼントしちゃうのは難しい。
そうなると、レンタルみゃー姉とかか。でもレンタルされるみゃー姉にもそれでいいか一応聞かないとな。
「あのな、松本の誕生日プレゼントなんだけど」
「うん。ひなたは決まった?」
「まだだぞ。でもな、きっと松本だからみゃー姉が欲しいって言うと思うんだけど、みゃー姉はどうだ?」
「どうだじゃないよ・・・うーん、香子ちゃんかぁ・・・」
みゃー姉は目を閉じて考え込んでいる。やっぱり悩むよな。気持ちは分かるぞ。
「・・・香子ちゃんからはいろいろもらってるんだよなぁ。上質な生地をプレゼントしてもらったり、それ以外にもお出かけ用のお洋服一式とか・・・」
「それに引き換え、私からはバレンタインデーにクッキーを渡したくらい。この機会にちゃんとしたものを贈りたいな・・・」
みゃー姉は私とおなじように悩み始めちゃった。「みゃー姉はどうだ?」って聞いたから、プレゼントの準備のことを聞かれてるって思っちゃったのかな。
レンタルみゃー姉のことは聞けなくなっちゃったから、これは無しだな。私もあんまり気が進まないし。
うーん。他のを考えないとな。うーん・・・。
03
【10月5日 火曜日】
「そっかー。ヒナタちゃんはまだ悩んでいるんだ」
「そうだぞ。これ! っていうのが思いつかなくてなー・・・」
結局思いつかなくて、のあにも相談してみることにしたんだ。
松本がほしいって思ってそうなもの、なにかないか?
「ありきたりだけど、ミャーさんじゃないの?」
「そうなんだけど、みゃー姉は私のだからあげられないんだ」
「あーうん。ソウダネ」
「のあ、どうした?」
「ナンデモナイヨー。んー、マツモトさんなら、ミャーさんの作ったものならなんでも嬉しいんじゃない? ヒナタちゃんもそうでしょ?」
「そうだなー。・・・ありがとな、のあ!」
「ゆーあーうぇるかむだよー☆」
のあはかわいらしくくるっと回ると、手をひらひらさせて廊下の方に行っちゃった。たぶんトイレだろうな。
でも、やっぱりそうだよな。松本のことをよく知ってる人ほど、みゃー姉が好きなのを分かってるし、プレゼントするならみゃー姉ってことになる。
みゃー姉はあげられないけど、のあの言うようにみゃー姉の作ったものをプレゼントしたらよろこんでくれるかな。
でも・・・。
「でも、みゃー姉になんて言うんだ? 松本にプレゼントするからなんか作ってくれ、なんて言えないぞ・・・」
みゃー姉は昨日、松本のプレゼントで悩んでいた。それなのに、「私が松本によろこんでほしいから」って理由でもうひとつお願いするなんて、そんなのダメっていうか、その、姉妹だけどぶしつけだしあつかましいと思う。
「やっぱりそうじゃないよなー・・・うん」
そうだ。私は「自分で用意できるもので松本によろこんでもらいたい」んだ。
みゃー姉にプレゼントを作ってもらったら、それはみゃー姉から松本へのプレゼントってことになっちゃうもんな。
私は私に用意できるものを確認するために、学校が終わったらダッシュでうちまで飛んで帰ったんだ。
── 幕間 ──
「・・・あ、ノア」
「ハナちゃーんω ちょっとお手洗い行ってくるねー」
「ねぇ、ノア。ひなたのことなんだけど・・・」
「うん。今さっきヒナタちゃんから相談受けたよ。マツモトさんのプレゼントのことで」
「そっか。でもめずらしいよね。なんでもスパッと決められるひなたなのに」
「うんうんー・・・」
「・・・ノア?」
「ちょっとだけ、ネ。マツモトさんがうらやましいなーって思っちゃった」
「ノア・・・」
「こんなにずっと長い時間、マツモトさんのこと考えてるんだもん。アタシもそのくらい想ってもらいたいな・・・なんてネω」
「そっか・・・。そうだよね」
「あーもう。こんなカワイクナイこと言うの、ハナちゃんにだけだよ? ヒナタちゃんが大切なお友だちのマツモトさんのことを真剣に考えてるのに、それに嫉妬しちゃってるんだもんアタシ・・・ミニクイよネ」
「ノア。ノアは醜くなんてないよ。誰よりもまっすぐ恋してるでしょ。ひなたに」
「ハナちゃん・・・!」
「ひなたはプレゼントで頭いっぱいだと思うから、セッティングは私たちでしようよ。ひなたの負担、ちょっとでも減らせるし」
「うん。じゃーアタシ、マツモトさんにご招待メール書くネ☆」
「私は当日のお菓子についてお姉さんと組み立ててみるね。味見しながら」
「がんばろー!」
「うん」
04
「みゃー姉グッズはいくつかあるけど・・・」
家に帰ってきて、自分の部屋に飛び込んで、あれこれ宝物を引っ張り出してみた。どれも私にとっては大切なものなんだ。たとえば・・・
【ベッドの上に置いてある、みゃー姉が作ってくれた私のお人形】
【もう小さいけど、初めてみゃー姉が私に作ってくれた手袋】
【みゃー姉が私のために選んでくれた青いリボンの髪留め】
手袋とかはもう着けられないけど、「みゃー姉が私のために」作ってくれたものだからいつまでも私の宝物なんだ。
みゃー姉が選んでくれた髪留めは今も着けてるし、みゃー姉が作ってくれた私のお人形もちゃんときれいにして置いてるんだ。
どれも私にとってはすごく大切なもの。でも・・・。
「でもなー・・・。これを松本にプレゼントしても、きっと微妙なんだろうな・・・」
確かにどれもみゃー姉が関係するものだけど、どれも「みゃー姉が私のために」作ってくれたり選んでくれたりしたもので。もらったときの思い出とか、そういうのを含めてのきらきらした大切な宝物だから、こういうの単体でプレゼントしてもきっと松本は困るだろうな。
むしろ髪留めとかは、みゃー姉が選んでくれたものだけどずっと私が着けてたものだから、これを受け取った松本が自分の髪を束ねたとしてもそれは「私とお揃い」になるだけで、みゃー姉成分は薄いから嬉しくないんだろうな・・・。
「うぅ~、じゃあどうすればいいんだ・・・」
みゃー姉そのものはダメ。みゃー姉が私にくれたものも「私からのプレゼント」としてふさわしくない。
そしたら、あとはもう────。
私はきらきらした宝物の山から起きあがると、自分の部屋から出てリビングにおりて、ソファーのところにいつも置いてある本を手に取った。
「・・・よし。じゃあこれで勉強するぞ」
これはいつもみゃー姉が暇なときに読んでる雑誌。
いままで読んだことなかったけど、みゃー姉と松本は同い年だし、なんか喜んでもらえそうなもののヒントが載ってるかもしれないって思った。
ぺらっ ぺらっ
「こすめ、えすて・・・? お化粧とかか。松本は何もしなくても美人だし、いらないな」
ぺらぺらっ
「じゅえりー、あくせさりー・・・? こういうのじゃらじゃら着けてたら、みゃー姉撮るとき邪魔だしな」
ぺららららっ
「かめら、じーぴーえす、とうちょうき・・・松本はもう持ってるし、仕掛けてあるもんなー。それにゼロが4つも5つもあって私のおこづかいじゃ用意できそうにないぞ」
ぱたんっ
まずいな。雑誌に書いてあることが半分も分からないぞ・・・。
他には、おとこのことデートするときのこととか、うらないとか、そういうのしか載ってない。あんまり役に立たないな。
スイーツ特集・・・は、はなはよろこびそうだけど松本は・・・うーん。
マリオッツォだって。赤い配管工が土管の中に大量の生クリームを入れ込んでて・・・なんだこれ?
他の本も読んでみるか。こっちの本は────。
「【小学生じゃダメですか?】 ・・・なんか変な題名の本だな。あれ? この本ってたしか・・・」
これ、あれだ。のあが教えてくれたけど、みゃー姉が買ってたっていう「えっちな本」だ。
ぱらぱらぱらっ
読んでみたけど、なんかふつーのマンガ本だった。表紙の絵がはなにそっくりってだけ。はなそっくりな子が、年上のお姉さんに好きだと伝える話。なんかみゃー姉とはなが逆になった感じだな。
というか、えっちな本ってふつーの本と何が違うんだ? 今度のあに聞いてみるか。
「うぅ、ダメか・・・。もう打つ手がないぞ・・・」
雑誌とかマンガからは、松本が喜びそうなもののヒントは出てこなかった。
本からじゃなくて、普段の松本の様子から────。と考えはじめて、はっとした。
もしかして・・・
というかたぶんきっと。
私は松本のこと、なんにも分かってないんじゃないか・・・?
みゃー姉のこと大好きな私たち。会って話すことも、意気投合することもみゃー姉のことで。みゃー姉のことを話し始めたら、本当に朝までずっと話してると思う。
でももし、「みゃー姉の話題禁止!」ってしたらどうなるんだろう。
考えたことなかったけど、そうなるとたぶん、あんまり上手におしゃべりができなくなるんじゃないか?
「・・・いや、そんなことないぞ。そんな、こと・・・」
そんなことない。
ないよな? なぁ私。
言い切れない自分にショックを受ける。
さっき想像してたことをふくらませてみる。
『ひなたちゃん。最近のみやk・・・ 最近どうかしら?』
『いつも通りだぞ。みゃ・・・えっと、のあとはなもいつもどおりだ!』
『そうよね。こっちもゆうは毎日かわいいわよ?』
『おー ゆうもかわいいもんなー』
・・・そこで会話がとぎれちゃう。
あれ? 松本はみゃー姉のことを分かってるし、いいやつだし、妹想いのやさしいお姉さんだ。
だけど、そんな松本とどう話したらいいのか、今の私は分からなくなってる。
そんな・・・。もう一年以上もつきあいがあるのに。
松本も、はなやのあとおなじ友だちなのに。
私・・・。
「────なた。 ひなた? ちょっと大丈夫?」
気がつけば、みゃー姉がやさしい声で私に話しかけてくれていた。ソファーに座り込んで、うつむいていた私はみゃー姉が目の前にいることに気付いていなかった。
「・・・おう。大丈夫だぞ・・・」
なんとなくみゃー姉と顔を合わせられなくて、うつむいたまま立ち上がって自分の部屋までゆっくり移動した。みゃー姉、ごめんな。今はひとりになりたいんだ。
「・・・ひなた・・・?」
05
【10月15日 金曜日】
「マツモトさんのお誕生日プレゼントで悩んでるみたいだよー?」
「ひなたはお姉さんの妹なのに、そんなことにも気づけないんですか」
「えぇ・・・。ひなた、まだ悩んでたんだ・・・」
香子ちゃんのお誕生日前日。最近ひなたの様子がおかしいことを相談しようと、学校帰りにノアちゃんと花ちゃんにうちに寄ってもらっていた。
ひなたは帰ってきてすぐ、自分の部屋に入ったきり出てこない。今週始めくらいからずっとそんな調子だった。薄々そんな気はしていたけど、案の定香子ちゃんへのプレゼントで悩んでいるみたいだった。ひなたらしくない・・・と思ったけど、よく考えたらひなたにとって初めてのことなんだと気がついた。
そう。同い年のお友達へのお誕生日プレゼントならいくらでも思いつくだろうけど、香子ちゃんは私と同い年で、ひなたにとって初めての「年上の女性へのお誕生日祝い」だった。
まぁ、私もひなたにとっては「年上の女性」だけど、それとはちょっと違うと思うし。
「ハナちゃん。ちょっと今のは言い方キツイと思う。っていうか、ミャーさんは今困ってるんだから、突き放したらカワイソウだよ」
「う・・・。お姉さん、すみません・・・」
「いいんだよ、花ちゃん。私もね、おかしいなってことしか気づけなかったから・・・」
もっと早くに察してあげて、相談に乗ってあげるべきだった。
きっとひなたは香子ちゃんのことを「同志」として見てるはず。一番最初に「同志・仲間」として出会った二人。それもあって、今は「お友達」との違いやその距離感で苦しんでいるんだろうな。
私にはお友達はいなかったけど、学校で同じ班として行動する「仲間」はいた。お友達がいっぱいできた今は、その関係性の違いと距離感の違いが分かるようになってきた。
これもひなたのおかげ。だからこそ、私がひなたの力になってあげないといけなかったのに・・・。
「でもネ。ミャーさん」
「・・・ノアちゃん?」
「今回のことは、ヒナタちゃんが自分の力で乗り越えないといけないことだと思うのアタシ」
「ちょっとノア。今のひなたはお姉さんと距離を置いてたあの五日間よりひどい状態でしょ。何もしないで放っておくの? ノアは辛くないの?」
花ちゃんがそう言った瞬間。ノアちゃんの瞳から涙がぽろっと落ちるのが見えた。
「ツライに決まってるでしょ・・・!」
「ノアちゃん・・・」
「ツライけど、アタシたちは見守らないと。アタシがアドバイスして、プレゼントをそれにしたら、それはアタシからマツモトさんへのプレゼントになっちゃう」
「それに、マツモトさんに喜んでもらえてももらえなくても、ヒナタちゃんは「アタシと選んだものだから」ってこの先もずっと感じながら過ごすことになっちゃう」
「ノア・・・」
「これは、ヒナタちゃんの選択で、ヒナタちゃんの結果なの。アタシも今のヒナタちゃんを見てるのはツライし助けてあげたいけど、それはできないんだよ・・・」
ずっと気丈に我慢していたノアちゃんだけど、抑えきれなくなって口を押さえながら泣きはじめてしまった。隣の部屋にいるひなたに、泣いていることを気付かれないようにと、肩を震わせながら声を立てずに。
そんなノアちゃんを見ていられなくて、ノアちゃんを抱き寄せようと思ったそのとき。先に花ちゃんが動いた。
ぐっ ぎゅっ・・・
「ノア、ごめん・・・。ごめんね・・・」
「うっ うぅ・・・」
「ノアが一番近くでひなたを見つめていたもんね。辛くないわけないよね・・・」
花ちゃんは無造作にノアちゃんの肩を掴むと、そのまま引き寄せて抱きしめる。そして、ノアちゃんの頬を伝う涙を自分のお洋服で拭うようにしながらノアちゃんの背中をさすっていた。
「ノアの言うとおりだね。たぶん、私たちが口出ししたらいけないことなんだと思う」
「うん・・・うん・・・」
「私たちは、友だちとしてひなたのことを見守ります。お姉さんも、ひなたのお姉さんとして見守ってあげてください」
「ノアちゃん。花ちゃん・・・。うん、そうだね。そうしてみるね」
今も隣の部屋でひなたは苦しんでいるんだろう。お誕生日パーティーは明日に迫っているから、気が気じゃないだろうな。
でも、私がひなたを抱きしめたとしても、問題は解決しない。それどころかそれは「苦しんでるひなたを見ている自分が辛いから」と言う理由で、それを解消しようとしているだけになってしまう。
本当にひなたのことを思うなら、ノアちゃんの言うとおりひなたの邪魔をせず、静かに見守ること。それしかできそうになかった。
私は自分のそばにいてくれる頼もしい二人の友だちの頭を軽く撫でながら、隣室のひなたに想いを馳せるのだった。
06
【10月16日 土曜日 お誕生日パーティー当日】
「マツモトさん、ハッピーバースデー!☆」
「お誕生日おめでとうございます」
「いらっしゃい。香子ちゃんも二十歳だね。おめでとう」
「ありあと! おねぇ、おめでと!」
「今日はお招きありがとう。お祝いもしてくれてありがとう❤」
今日は松本さんのお誕生日。お姉さんとおなじ二十歳になった松本さんを、お姉さんのおうちにご招待してみんなでお祝いすることになった。
「・・・松本。今日は、おめでとうな」
「あらー、ありがとう。 ・・・ひなたちゃん?」
ひなたはそれだけ言うと、お母さんたちがいるキッチンの方へ走って行った。
「お、いいとこに来た。料理運んでちょうだい」
「・・・う・・・」
「あ、チヅルさん。それアタシたちが運ぶよー!」
「あら、そうかい。ノアちゃん花ちゃん頼んだよ」
「まかせてー!」
「はい」
ひなたは伏し目がちなまま、ひなたのお母さんの横をすり抜けて私とノアのお母さんのところに。そして、二人の間に入り込む形でひなたも料理の手伝いをしはじめた。
「oh! ヒナタちゃんもお料理じょうずですねー!」
「さすがみやこちゃんの妹さんね。手伝ってくれて頼もしいわ」
さびしそうなひなただったけど、やっと居場所を見つけられたみたいで少し顔がゆるんでいた。
お母さん、ひなたのことお願い。私はお母さんにそう目配せをして、ノアと一緒にリビングに料理を運んでいった。
「今日はみやこさんのお宅でお祝い開いてもらえるなんて、辞世の句を考えておかないと・・・!」
「こわいこわい!」
「ミャーさんにお誕生日パーティー開いてもらえたら、マツモトさんも嬉しいでしょ? そう思ってセッティングしたんだよー」
「ノアちゃんもご招待メール嬉しかったわ。ありがとう!」
ひなたの落ち込みようとは打って変わって、松本さんはごきげんだった。
いつもお姉さんに怖がられたり、逃げられたりしている松本さんだけど、今日はすぐそばにお姉さんがいて、お祝いをしてくれているから嬉しいんだろうな。
「おねぇ、おとなになった!」
「そう。もう大人なのよね、私たち・・・!」
「そ、そうだねぇ・・・」
「みゃーこもおとな! けっこんできる!」
「うふふ❤ いつでも準備はできているわよ?」
「う、うん・・・?」
そろそろお姉さんが限界みたい。仕方ない、間に入ってあげよう。
お姉さんは、お姉さんのお菓子は私のだから。
「お姉さんは私に一生お菓子を作ってくれるって約束してくれたので」
「そうよねぇ、うらやましい・・・。あのベンチでの熱い告白、みやこさん本当輝いていたわぁ・・・」
「どうして知って・・・ え あのとき見てたの!?」
「ハナちゃんがブロックした! っていうかミャーさんのことでマウント取りに行ったー! きゃーω」
「いいでしょ別に。事実なんだし。ですよね? お姉さん」
「う、うん。約束は守るよ・・・?」
「開き直ったハナちゃん強い!」
本当ですか? って思いながら試しにお姉さんのお腹に横から抱きついてみると、お姉さんは何故か真っ赤な顔で、びっしょり汗をかいていた。うん。いつも通りの反応だから大丈夫かな。
ゆうちゃんが松本さんの足に抱きついていて、その松本さんは頬に手のひらを当ててうらやましそうな顔でこっちを見つめていて。
ノアはシュラバだーなんて騒ぎながらテンション高い。まったく、今日は松本さんが主役なんだからそんなにはやし立てないで。
「はい。それじゃあみんな、めしあがれ。香子ちゃん誕生日おめでとうね」
「あらためて、松本さんおめでとうございます。いただきまふっ!」
「おめでとー☆ いただきまーす」
お母さんたちの作ってくれたお料理と、お姉さんの作ってくれたバースデーケーキが所狭しと並ぶ。
まずはケーキから・・・と思ったけど、さすがに今日はおとなしくしておこう。がまんがまん。
さっきひなたも手伝っていたパテは、お野菜と白身魚のさっぱりしたもの。コンソメ風味のゼラチンはやさしい味でとっても食べやすくて、ハーブの香りが爽やかだった。
ひなたも料理上手なんだな。前にノアがお姉さんのこと「いいお嫁さんになるね」って言ってたけど、ひなたもきっとそうだと思う。
「はーい、どうぞー。ヒナタちゃん」
「・・・ありがとな、のあ」
ひなたは松本さんから一番遠いところに座っていて、隣のノアがサラダをよそってくれているけど上の空みたい。
さすがのノアも今日は松本さん主役と分かっているから、ひなたとの距離がいつもよりちょっとだけ、5cmくらい開いている。べったりしているといちゃついちゃうからなんだろうな。
でもそのことで、ひなたは不安そうな顔をしている。ノアもそれは分かっているみたいだけど、さすがに抱きついて励ますこともできないみたいで少しだけまゆが下がっている。
「おいしい!」
「おいしいわぁ・・・。さすがお義母だわ・・・!」
「ま、滅多にこういうの作らないけどね。やるときゃやるのよ」
「そうですね。こういう機会があると楽しんじゃいます」
「ヒナタちゃんの作ってくれたパテ、レシピメモしたのでうちでもノアちゃんに作ってあげまーす」
お母さんたちもパーティーとか集まりは好きだから、今日もノリノリみたい。
パテとかブルスケッタみたいなオードブルっぽいものから、ホタテをソテーしたものに刻んだ大葉が乗っているもの。これはナイフとフォークで食べるのかな。
メイン料理はローストビーフで、これはノアのお母さんが自宅で作って持ってきてくれたもの。甘めのグレイビーソースとぴりっとしたホースラディッシュが効いててとってもおいしい。
「おいしいね、花ちゃん」
「ふぁい。ほへぇはんのとおふぁじふはいおいひぃへふ」
「ほらもー。ちゃんと飲み込んでからでしょ? それに一度にお口に入れすぎなんだって。かわいいからいいけど」
お姉さんはまゆの下がった笑顔で、私の頭をなでてくる。な、なんですか、恥ずかしい・・・。お母さんにも笑われちゃったし。
食べてるときに話しかけるお姉さんがいけないんですよ。まったく。
いつもはお姉さんお料理を出す側だから、私が食べてるときも忙しく動いていることが多い。でも、今日はケーキだけだからずっと隣にいてくれて嬉しいな。
うつむき気味のひなたが気になるけど、みんなそれぞれ楽しみながら食事が進んでいった。
07
私の作ったケーキも大好評で、テーブルの上のお料理はすべてきれいに食べきって。
花ちゃんはほっぺとお鼻に生クリームをいっぱいつけていたから、それをふき取りつつ。
今日のメインイベントとなるプレゼント手渡し会が始まった。
「誰からにする?」
「じゃーアタシからね。次は・・・」
「それじゃ、私2番目にするよ」
「その後私、かな・・・?」
「・・・・・・」
みんなそれぞれがバッグからプレゼントを取り出して、香子ちゃんを囲む。
そして、宣言通りの順番でプレゼントを渡していった。
「マツモトさん、おめでとー! はいこれ、アタシからのプレゼントだよー☆」
「あらー、ノアちゃんありがとうね。開けてみてもいい?」
「うんうんーω」
「あら・・・。これは、メガネ拭き?」
「んー、マツモトさんカメラ使うでしょ? レンズをきれいにするのに使ってもらえたらって思ったんだー」
「まぁ、ありがとう! これできれいにしたレンズでみやこさんを激写するわ!」
「にゅふふーんω」
ノアちゃんはカメラのレンズ拭きみたい。
どうかそれできれいにしたカメラで、ゆうちゃんのことをいっぱい撮ってあげてほしい・・・。
「松本さん、おめでとうございます。私からはこれです」
「まぁ、薄紫色で、すごくきれいな押し花だわ」
「シオンっていうお花にしてみました。私、花なので。10月16日の誕生花で、花言葉が松本さんにぴったりだと思ったので」
「花ちゃんもありがとう! 本のしおりで使わせてもらうわね」
花ちゃんは3cm×10cmくらいのアクリルプレートに挟み込んだ、手作りの押し花だった。花ちゃんにしてはすごく上手に作れていて、頑張ったんだなってすぐに分かる。香子ちゃんもとっても嬉しそう。
シオンかぁ。花言葉ってなんだろう? 確か別名が「オモイグサ」だったような・・・。
おっと、次は私だね。
「・・・香子ちゃん。お誕生日おめでとう。お互い、二十歳だね」
「みやこさん・・・! ようやくみやこさんに追いついたわね」
「あはは・・・。はい、私からのプレゼント」
「こ、これは・・・! 2つ?」
「うん。ゆうちゃんとお揃いで作ってみたんだ。つけてみて?」
香子ちゃんは袋からそれを取り出すと、ゆうちゃんと一緒にはめてみてくれている。
そう。それは姉妹お揃いの、クリーム色の手袋。これから寒くなるから、お外に出るときに着けてもらえたら嬉しいな。
「ゆうにもありあと! あったかい!」
「まぁ・・・! 縫製がとっても丁寧で、とても暖かいわ・・・。みやこさんありがとう。もうこの手袋は外さないわ!」
「いや、ちゃんと外して手洗いとかしてね・・・?」
ゆうちゃんとお揃いの手袋をはめた香子ちゃん。じっと手袋を見つめて、うっとりとした顔をしている。なんだか、こそばゆいっていうか・・・。私自身じゃないけど、作ったものをそんなに見つめられると恥ずかしい・・・。
とんっ
「ほら、ひなた。トリはあんたでしょ」
ひなたがお母さんに背中を押されて、香子ちゃんの目の前に出てきた。
そういえば結局、ひなたはプレゼントどうしたのかな・・・。
「・・・松本ォ。今日は、その・・・ 誕生日、おめでとう、な」
「ひなたちゃんもありがとう」
あれ? ひなた・・・。めずらしく声が震えている。
「その、あのな。プレゼント! プレゼント、なんだけど・・・」
「うんうん」
ひなたはそこまで言うと、うつむいてしまった。
両腕をだらりと下に降ろして、でも両手をきゅっと固く結んで。
すごく悔しそうに、すごく申し訳なさそうにしているひなたがそこにいた。
「・・・松本、ごめんな。半月くらいずっと松本のプレゼントを考えていたんだけど、思い付かなかったんだ」
「みゃー姉以外で、松本がよろこぶもの、ずーっと考えてみたんだけど、な・・・」
「ひなねーちゃ・・・」
「・・・ごめん」
香子ちゃんに頭を下げているひなた。きっと目を合わせられないんだろうな。私だったらきっと土下座していると思う。
そんなひなたを見ていたノアちゃんは、ハンカチを取り出して顔を覆っていた。そして、エミリーさんではなくうちのお母さんの後ろに隠れて、静かに泣いているみたいだった。
うんうん。分かるよ。ひなたのこと、誰よりも真剣に考えてくれていたもんね。
できることならアドバイスをしたかったよね。一緒に考えたかったよね。
こんなひなたの姿、見たくなかったよね。ノアちゃん・・・。
お母さんはひなたのことを見つめながらも、ノアちゃんの頭に手を置いてゆっくりなでて落ち着かせようとしていた。
ぎゅっ・・・
花ちゃんが私の腕にしがみついて見上げてくる。不安そうな顔で、ひなたのことを助けてあげてほしいと目で訴えている。
私だってできるならそうしたい。でも、ノアちゃんが言っていた通り、これはひなたが自分の力で乗り越えないといけない類のこと。
私は花ちゃんの瞳をしっかり見つめてから、目を閉じて軽く頭を振ることしかできなかった。
誰一人、声を上げることもできず、行く末を見守ることしかできない。
そんな緊迫した空気の中、沈黙を破ったのは────。
「ひなたちゃん」
「っ ・・・松本ォ・・・」
「こっちにいらっしゃい」
「・・・うん」
今日の主役、香子ちゃんだった。
香子ちゃんはそう言うと、ひなたに両手を差し伸べて自分の膝に座らせていた。
ひなたは怒られると思っているんだろう。香子ちゃんのお膝にちょこんと座りながら、ぎゅっと目を閉じている。
ふわっ
香子ちゃんは包み込むようにひなたを抱き締めた。
それは私が初めて見る香子ちゃんだった。
いつもの香子ちゃんとはまったく違う雰囲気で、とても愛おしい人を包み込むような、慈愛に満ちた聖母のようだった。
そういえば私も去年、かのんちゃんに同じように抱き締められたことあったな・・・。あの時と同じくらい、今の香子ちゃんは輝いて見えた。
「ひなたちゃん、ありがとう」
「・・・なんで、だ・・・? わたし、なにもできなかった、のに」
「みやこさんのことを想う為の時間を、私のために使ってくれたのよね? 私のことを、そんなに長い時間考えてくれて嬉しいわ。それだけで私は幸せよ?」
「香子ちゃん・・・」
「マツモト、さん・・・」
「でもっ・・・! でもな、のあたちみたいに、気の利いたプレゼント、用意できなかった、から・・・っ!」
「そうね、それじゃあ・・・。ひなたちゃんの撮ったベストショットから、一枚いただいてもいい?」
「・・・! おう、いいぞ。ぐすっ ちょっと待ってくれ」
すがるように見上げるひなた。香子ちゃんはそんなひなたのことを幸せそうに見つめて、微笑んでいる。
ひなたも少しだけ不安が和らいだのか、自分のスマホを取り出して操作しはじめた。
ピロリン♪
「あらっ! 素敵な写真ね! ひなたちゃん、ありがとう❤」
「ぐすっ・・・」
「こうして、こう、っと。ほら、ひなたちゃんとお揃いよ。私も待ち受けにさせてもらったわ❤」
「・・・おう。 おそろいだな、松本」
「ええ。みやこさん好きの同志として、これでまたひとつ距離が近くなったわね。嬉しいわ」
なでなで
同志かぁ・・・。確かにひなたと香子ちゃんは「類友」って花ちゃんたちに言われるくらい、共通の「好きなもの」があるよね。私のことだから複雑だけど・・・。
ひなたは香子ちゃんに頭をなでてもらうと、少しだけ笑顔になった。
でも、すぐに真剣な顔になって香子ちゃんの目を見つめる。
「松本・・・あのな。みゃー姉のことももちろんだけど、その、ほかのこともいっぱいおしゃべりしような」
「ええ。いつでもいいわよ? 私たち【お友だち】だものね」
それを聞いたひなたは、ぱぁっといつもの太陽のような笑顔になった。
よかった・・・。もう大丈夫みたいだね。
「松本ォ・・・! ありがとな。嬉しいぞ!」
「ひなたちゃん。これからもよろしくね。今日は本当にありがとう❤」
「おう! これからもよろしくな、松本ォ!」
おまけ。
「・・・ひなた。よかったね」
「おう! みんなにも心配かけてごめんな?」
「ううん。・・・ところで、どんな写真なの? お姉さんのベストショットって」
「お? 気になるか? これだぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・はな?」
「これ・・・松本さんにも送ったの? というか待ち受けにしてるの?」
「そうだぞ。みゃー姉はこれが一番かわいいからなー」
「ダメ」
「お?」
「これはダメ。松本さんからも回収して、他のにしてもらって」
「なんでだ? すごくきれいな写真だぞ?」
「ダメなものはダメ。今すぐ回収して」
「うぅ・・・。はな、なんかこわいぞ・・・。うーん。松本に交換してもらってくるからな」
「それから、ひなた」
「なんだー?」
「・・・その写真、私にも送って」
「ダメって言ってなかったか?」
「待ち受けっていうか、他の人に見せるのがダメってこと。お願いね」
「おー・・・。じゃ、あとで送っておくからなー」
ちゃんちゃん♪