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一般チャットで行われた実際の「オンライン☆わたてにんぐ劇場」のチャットログはこちらから。
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公演会開始前、集合時の様子~プレゼント進呈~お題発表
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「情けは人のためならず、の結末。」 01 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「情けは人のためならず、の結末。」 02 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「情けは人のためならず、の結末。」 03 ~ 移動 ~ 休憩 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「情けは人のためならず、の結末。」 04 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「情けは人のためならず、の結末。」 05 ~ 移動 ~ 休憩 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「情けは人のためならず、の結末。」 06 チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「情けは人のためならず、の結末。」 おまけ ~ ご感想 ~ 解散 チャットログ
スクリーンショットは星野みやこさん、鹿目まどかさん、えてなさんが撮影したものになりますので、チャット内容や環境設定はそれぞれ基準となります。
保護者の皆様の反応(わたてん保護者会血盟チャット)をチャットログに時系列で入れこんでおります。また、天使たちの裏方のやり取り(わたてん公演会部血盟チャット)を公開していただけましたので、天使たちの微笑ましい舞台裏も含めてお楽しみください。(一部天使側の血盟チャットの内容が抜けております。忙しかったのでしょうね)
天使たちの舞台裏は星野みやこさんが撮影されたものを、公演会全体と保護者さまの会話は鹿目まどかさんとえてなさんが撮影されたものを使用し、合成して1枚にまとめております。
今回も主に「天使たちのお友だち(保護者さま)」を対象とした即興劇を、人数制限のない一般チャット(白チャット)にて天使たちが実施してくださいました。
11月24日が姫坂乃愛さんのお誕生日であることから、白咲花さんが全体のストーリーを考案され、星野みやこさん、白咲花さん、星野ひなたさんで乃愛さんを囲み、公演会を作り上げることを「お誕生日プレゼント」にするという意図の企画となりました。
主な出席者は以下の通りでした。
わたてん公演会部:姫坂乃愛さん、星野ひなたさん、白咲花さん、星野みやこさん
わたてん保護者会:絵笛さん、えてなさん、マイちゃんさん、うらりーぬさん、ミセリコルデさん、鹿目まどかちゃんさん
スペシャルゲスト:わためさん(召喚要員としてご協力いただきました)
総勢11名でのイベントとなりました。いつもご参加ありがとうございます。
なお、まいちゃんさんが今回も公演会の内容をモチーフとしたイルミネーションアートを作ってくださり、その製作過程の記事を掲載してくださったようです。 →
エコクリいっぱい・w・
いつも天使たちの公演内容に合わせたイルミネーションアートを作ってくださいまして、ありがとうございます。
作品につきましてはいつも通り、乃愛さんがヴァラカスサーバにて撮影してくださいましたので本ページ下部に掲載させていただきます。
■記載ルール■
メイン記述者(進行者。今回は白咲花さんと星野ひなたさん)が直接一般チャットに地の文を書き、他登場人物は「」で囲む形でセリフを書くことで物語を紡いでいきます。
☆☆☆☆☆ イントロダクション ☆☆☆☆☆
── リンドビオルサーバのとある同盟では ──
── 気ままに天使たちが舞い降りては 一遍の物語を協力して紡ぎ 人知れず飛び去っていく──
── という噂がまことしやかに囁かれています ──
こちらの記事は「エンジェリック・ミスリル・ハーツ・フェデレーション」内「天使が舞い降りた」同盟において
天使たちの紡いだ物語を一般公開できる形で記録に残そうと考えまとめたものとなります。(天使たちの公開許可はいただいております)
「私に天使が舞い降りた!(わたてん!)」という作品世界から、こちらの世界に飛ばされてしまった天使たち。
戻る術が見つからない日々の中、お友だちの代理露店をこなしながら元気に楽しげに生活されています。
時折、突発的に始まるリアルタイムでの「物語の編纂(即興劇)」というお遊戯は、その完成度の高さ、内容の睦まじさにより
見る人に癒しと潤いを与えてくれるものとなっており、まさに【天使】のような存在となっています。
今回のメイン記述者は「白咲花」さん、「星野ひなた」さん。
主なキャストは「姫坂乃愛」さん、「星野みやこ」さんでした。
私に天使が舞い降りた! 公式サイト キャラクター紹介ページ
より、プロフィール画像はこちらになります。(コンパクトにまとめました)
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── 情けは人のためならず、の結末。 ──
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■作品イメージタグ■
#私に天使が舞い降りた! #わたてん! #姫坂乃愛 #星野ひなた #白咲花 #星野みやこ #ひなノア #花みや #七夕 #誕生日 #プレゼント #他作品コラボレーション
■作品文体■
一人称小説
三人称神視点完全客観型
■お題■
「燻らせる」
「厳か」
「大魔王」
※オンラインでのわたてにんぐ劇場では、白咲花さんがメイン記述者に「3つのお題」を開始直前に出されます。
メイン記述者もしくは参加者はランダムで出されるその「お題」を地の文やセリフのどこかに取り入れてお話をリアルタイムで紡ぎます。開始直前に発表される為、事前に考えておくことができません。
今回は白咲花さんがメイン記述者となる章があることから、開始直前に星野みやこさんにお題選出と発表を依頼されていました。
事前にお題を出され、じっくり考えた場合でもランダムキーワードを取り入れて物語を紡ぐことはかなりの高等技術ですが、毎回みなさんすんなりとオンラインリアルタイムでこなされているので驚愕しております。
「そういえば、ノアの七夕のお願いはどうなったの?」
「ハ、ハナちゃん・・・。えぇっとぉ・・・それ聞いちゃう?」
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── 情けは人のためならず、の結末。 ──
───────────────────────────
01
これから体育の授業。教室で着替えを済ませた私たちは体育館へ向かっていたけど、ひなたは体を動かせるのが嬉しいみたいでひとりで先に走って行っちゃった。
今はノアと二人きり。並んでゆっくり歩いている。
「ほら、ひなたに叶えてもらうっていって渡していたでしょ」
「う、うん・・・。そう、なんだけど、ネ」
ノアはさっきからもじもじしている。おトイレ・・・でもなさそう。恥ずかしがってるのかな?
ノアは七夕の時、自分の短冊をひなたにあげていた。願い事を絞りきれなかったひなたに自分の分を使わせてあげたんだろう。そのときひなたが「ノアのお願いはわたしがなんでも叶えてやるからな!」って言ってて。ノアも喜んでひなたに短冊を渡していた。
なさけはひとのためならずって、ああいうことを言うんだよね。そのノアの願い事は叶ったのかなって、ちょっと気になって聞いてみたの。
「それがね、そのぉ・・・」
「うん」
「8月は夏休みでずっとみんなと一緒だったし、9月はミャーさんのお誕生会だったし、10月はマツモトさんのお誕生日とハロウィンで・・・」
「そうだったね」
「結局、まだなんだー。あのお願い事」
「そっか」
そうだろうと思った。もしどこかで二人きりで過ごしていたんなら、ノアのことだから同じのろけ話を3回は聞かされていたはずだし。
「どうするの?」
「うん・・・。ヒナタちゃんがその気になって誘ってくれるまで待とうかなって。ホラ、アタシから催促するっていうのも違うっていうか、カワイクないし・・・」
「そっか」
いや、ひなた絶対忘れてるでしょ。分かっててノアとの約束を放り投げるような子でもないし。
ノアも自分のお願いごとを忘れられていると薄々感じているんだろう。でも、ひなたのことを信じたい気持ちがあって、それとせめぎあってさっきからギクシャクしているように見える。
お姉さんも二人の間に入って取り持つっていうのは苦手だろうし・・・。仕方ないので、私からそれとなく話に出してみることにした。
02
「みゃー姉ただいま!」
「ミャーさんこんにちはーω」
「お姉さん。今日のお菓子はなんですかっ?」
「みんなおかえりなさい。今日はモンブランだよ」
おいしそう・・・。聞いただけでよだれが出ちゃう。さすがお姉さん、やりますね。
でも先にやることやらないと。今日のお洋服は・・・と見回すけど、リビングにはないみたい。
お姉さんの部屋にみんなで移動して入れてもらう。いつも通り、お姉さんと同じ甘いいい匂いのするお部屋に。
「今日はモンブランにしてみたよ」
「はい」
カチャ キィ・・・
「ということで、これ着てみてね」
「え・・・ これ、ですか?」
「そう。モンブラン」
お姉さんのベッドの上に大きなモンブランが3つ置かれていた。
タルト生地の上にクリームが絞り出されていて、その先端にマロンが乗っかっている。
それぞれクリームの色が違っていて、カボチャっぽいオレンジ色のもの、渋皮を取り除いた栗きんとんのような黄色のもの、そして紫芋のペーストのような濃い紫色のもの。
どれもすごくおいしそう・・・に見える被り物が置かれていた。
「へぇー コスプレっていうか、これカブリモノだねぇ」
「おいしそうだな! 食べるか!」
「着るんでしょ」
お姉さんは、と見てみるといつも通りきらきらした瞳で私たちのことを見つめていて、なんだかよだれも出ているように見える。
食べられちゃったりしないかな・・・お姉さんなら別にいいかな。
撮影はトントンと進んだ。三人で手をつないで座ってみたり、大きなひげろー人形(ひなた入り)に紫芋のモンブランケーキ(私)が抱き寄せられる構図だったり。
ノアもひげろー人形に飛びついていた。やっとノアもひげろーのかわいさが分かったんだね。 ・・・え? そうじゃないって? そっか・・・。
黄色のモンブランケーキ(ノア)とオレンジのモンブランケーキ(ひなた)が仲良く抱き合ってるシーンもちゃんとお姉さんは撮っていた。よかったね、ノア。
でもノアとひなたは流れを察したのか、途中から撮影は私にまかせて着替えを済ませて観客になっていた。こうして私だけ延長戦に入るのもいつも通りのこと。
早くモンブランケーキ食べたいな・・・。なんてぼんやり考えながらお姉さんを見てみると、顔を真っ赤にしてハイテンションになっていた。
「いいねー、いいよ花ちゃん! そこで上目遣いで・・・ いいっ!」
そういえば七夕の時もこんな感じだったな。
「お姉さんのお願いは私が叶えましょうか?」って言ってみたときと同じ赤い顔。
あの時のお姉さんのお願いは「昨日作った服を着てほしい」ってもので。
年に一度なのにいつも通りのお願いで、なんだか拍子抜けしたのを覚えている。
「ふぃー いやー満足! 今日もみんなかわいかったよ!」
「こういうのも新鮮でイイネ!」
「のあも甘くておいしかったぞー!」
「やーん、ヒナタちゃんってばー☆」
「え・・・ これ味するの?」
被り物を外してかぷっとしてみた。お姉さんの甘い匂いはするけど、やっぱり味はしなかった。まぁそうだよね。うん。
被っていた紫のモンブランをひげろーに抱えさせて、私たちはリビングへと降りていった。
03
「いただきまふっ!」
「いただきます!」
「いただきまーす☆」
「はーい、めしあがれー」
リビングで出てきたモンブランは、さっき私たちが被っていたものとそっくりのデザインだった。三色のカラーリングで、土台のタルト生地の上に絞り出したモンブランペーストが山のような形でそびえている。
頂上にそれぞれかぼちゃ、マロン、紫芋の甘露煮が乗っているところまでは一緒だけど、被り物と違うのはシュガーパウダーが雪のようにかかっているところ。
高さ7センチくらいの雪山。かわいらしいけど、とってもおいしそう。
「モンブランってね、山の名前だけど元々「白い山」って意味の言葉なんだよ。イタリア語だとモンテビアンコって言うみたい」
「それでお砂糖かかってるんですね。きれい・・・」
手で持って食べられるサイズだけど、なんだかもったいない気がして。用意されているナイフとフォークで食べることにした。
スグッ・・・
「え・・・ なにこれ・・・」
フォークでケーキを押さえながら、ナイフを縦に入れてみる。ほとんど何の抵抗もなく、土台のタルト生地までするっと切れちゃった。
固そうに見えるタルト生地だけど、どうやらシロップがたっぷりしみこんでしっとりやわらかくなっているみたい。もっと固いと思っていたから、ちょっとびっくり。
30度くらいの角度に切って、フォークで取り出してみる。しっかり冷やしてあるみたいで、崩れたりしない。
断面を見てみると、中央に紫芋のペーストがコアとして縦にのびていて、それを軸にして生クリームでコーティングされている。
その生クリームで山の形を作って、さらにその周りを細く絞り出した紫芋のペーストで覆ってあるんだ。手が込んでるな・・・。
「はい、ヒナタちゃん。あーんω」
「お? おおー、あーんっ んんー、のあのもうみゃいみゃ!」
「でっしょー! ヒナタちゃんのも、その、ひとくちもらえる?」
「いいぞー はい、あーん」
「あ、あーん・・・。 わー かぼちゃもおいひいネ!」
「だろー? さっすがみゃー姉!」
二人のケーキも見てみると、やっぱり同じように作られているみたい。純白の生クリームとそれぞれの色が映えてとってもきれい。
あーん、かぁ・・・。いいな・・・。
お姉さんは・・・と見てみると、同じテーブルについているけど頬杖をついて私たちのことを見つめていた。お姉さんの分のケーキはないのかな。むむ、それじゃひとくちずつ交換であーんできる相手が・・・。
あ、そうか。
「はい、お姉さん。あーん」
「えっ は、花ちゃんっ!?」
「お姉さんの分、今日もないみたいなので。どうぞ」
「あ、ありがとうね。じゃあ、その、あーん・・・」
お姉さんは顔を真っ赤にしながら、私の差し出したケーキを食べてくれた。よかった。これでお姉さんも私たちと一緒ですね。やっぱりおいしいものはみんなで食べないと。
でも、お姉さんに差し出したフォークには生クリームがいっぱい付いていて。もっとちゃんとなめとってほしいのに。
ぱくっ ちゅるっ
「は、花ちゃん・・・そ、それ・・・」
「もう。お姉さんちゃんと生クリームなめとってください。もったいないですよ・・・うん。やっぱりおいしい」
「は、はいぃ・・・」
隣でノアが例の顔でニヨニヨしている。何なの?
「ハナちゃんもこれ食べてみて。アタシの黄色いの。あーん」
「おー、私のかぼちゃのもうまいぞ! あーん」
「ちょっと順番に・・・ あーん うんおいひぃ んくっ あーん んぁ、かぼひゃもいいへ」
うん。どれもおいしい。ベースは同じだけど風味が違う。
私のも二人に食べてもらって、飲み物をすすって落ち着く。
あれ・・・これ日本茶だ。緑のきれいな緑茶だった。なんでだろう、洋菓子なのに不思議と緑茶が合う。
「紅茶にしようと思ったけど、栗や芋の餡を使う和菓子も多いから合うだろうなって思って」
「はい。ぴったりです」
「甘くない紅茶とかも合いそうだけど、香りが強すぎるとマロンの風味消えちゃうかもだしネ」
「さすがみゃー姉。いいチョイスだ!」
お腹も落ち着いたところで、本題を出してみよう。
ノアの七夕のお願いのこと。ひなたはどう思ってるんだろう。ちょっと遠回しで聞いてみよう。
「ねぇ、ひなた」
「はな? なんだー?」
「七夕のときのお願いは叶ったの? ひなたは」
「おう! 今のところは順調だぞ! あれから妹も増えてないし、みゃー姉はうちにいてくれてるからなー」
「そっか」
ひなたはとても嬉しそうにきらきらした笑顔だった。やっぱりお姉さんの話題だとそうなるよね。
お姉さんは「増えたことないでしょー?」ってひなたの頭をなでながらたしなめている。でも、運動会の時のことを考えたら、いつ増えるか分からないっていうのも分かる。お姉さん、いつも私のことおもちゃにしてるのに、新しい子に手を出していたし、お菓子もあげていたし。むぅ・・・。
七夕のことを思い出してもらったところで、いざ本題。ノアのことを聞いてみよう。
「ひなたはノアのお願いを叶えてあげるって言ってたけど、どうなったの?」
「おおー、あれな」
ひなたはそれだけ言うと、ノアのことを正面からじっと見つめる。
トゥンク ってノアの口から聞こえた気がするけど、ノアは驚いたような赤い顔でひなたのことを見つめ返している。
「のあから、いつどこに行きたいって言い出すの、待ってるんだけどな」
「えっ!? そうだったの? アタシはてっきり・・・」
なるほど、そういうことか。
「今度二人でお出かけしたい」ってノアのお願い事だったから、ひなたは「ノアから誘いがある」って思っていたんだろう。
ノアはたぶん、主導権はいつもひなたにあるって思ってるから、ひなたから誘ってもらえるのを待っていたんだろうな。
でもそれなら、ひなたから「決まったか?」って聞かないのも意外な気がするけど・・・。
「・・・のあはきっと、あちこち行きたい場所があって悩んでいるところだと思うんだ。だから、私からどうだー? って聞くとあわてさせちゃうって思ってな」
「ヒナタちゃん・・・!」
「のあにはゆっくり考えてもらって、ここ! っていうのが決まったら教えてもらおうって思ってたんだ」
「ソ、ソウダヨネ! うんうん。ごめんねーまだ決められてなくって・・・うぅ」
ノアは真っ赤になってうつむいている。自分が勘違いしていただけじゃなくて、ひなたが忘れてるんじゃないかって考えていたと思うから。
ひなたのことを信じてあげられなかったって思ってるよね。気持ちはすごく分かる。
「ノアちゃん、今月誕生日だよね。ひなたと同じ12歳になるんだね」
「あ、うんうん。アタシから言うのも・・・って思ってたけど、そうなんだー」
「ああ・・・。ノアごめん。去年は言い過ぎちゃった」
去年のノアの誕生日は、一週間前からずっと「あと何日!」ってノアがカウントダウンしてたからツッコミ入れたんだった。
そのこと気にしてるみたいで、今年は確かに大人しかった。ごめんね、ノア。
「あ、それじゃあ、お誕生日までにどこにいきたいか決めるから、お誕生日デートってことでもいい?」
「おー、いいぞ!」
「お誕生日は水曜日だから、そのあとの土日とかで」
「予定あけておくぞ。大丈夫だぞ」
「やったー☆」
よかったね、ノア。とりあえず話が進展して。あとは二人にまかせて大丈夫かな。
ノアは私の方を見て拝むようにありがとうって表現してる。気にすることないよ。私たち親友でしょ。
今度の給食のプリンで手を打ってあげるから。うん。
04
「おー、のあーーっ!」
「ヒーナタちゃーん、ここだよー☆」
11月28日。今日は日曜日だ。
朝のアニメ見てると間に合わないから録画しておいて、せっせっせっとお出かけ準備をしてた。そういえばあのアニメも最初のころとぜんぜん感じが違ってきていて、戦ってた子たちが仲良くなってきているんだ。
あのあとハロウィンのときにもう一度戦って、成長したピンク髪の双子ががんばって緑の髪の子と引き分けってところまでもつれ込んでいた。戦った後、ピンク髪の子が緑の髪の子にも回復アイテムを分けていて。ほっとしたのを覚えてる。
今は双子の子が交代で緑の髪の子とデートに行ったりしていて、その行く先々で起きるトリック満載の事件を力を合わせて解決するってお話になってる。
最初は体のかたちがなくなるくらいぐしゃぐしゃになるまで傷つけ合っていた、敵同士だった子たち。その子たちが協力して事件解決しているのを見ると、こころがあったかくなってくる。
黒幕がベーカー街ってところにいるっていうのは何となく分かってきたけど、その目的とかもまったく分からないんだ。なんだか不気味なんだよなー。
「おおー、今日もすごくかわいいな、のあ!」
「えへへ・・・ アリガト☆」
前にノアと映画館に行ったときとおんなじで、うちからちょっと離れたところを待ち合わせ場所にした。のあがそうしたいって言ってたから。
いつも学校に行ってるときみたいに、家の前から一緒ってのと違ってこういうのは新鮮でいいな。ドキドキしてくるぞ。
今日ののあはベージュと茶色でまとめていてなんだかとっても大人っぽい。ふんわりとしたチェック柄のロングスカートとベレー帽がチョコみたいに濃いブラウンで、丈の短いふんわりしたカーディガンとポシェットが淡いベージュだった。カーディガンからのぞいてるレースのシャツは真っ白で、見とれちゃうくらいかわいかった。さすがのあ!
私はのあがかわいくて女の子らしいのを着てくるだろうと思って、今日もボーイッシュなのにした。みゃー姉が手伝ってくれるって言ってくれて嬉しかったけど、結局ぜんぶ自分で選んだんだ。
白っぽいクリーム色のスラックスに、グレーのタートルネック。それに濃いめのオレンジのブレザー。柿とかかぼちゃとかそんなイメージで、秋っぽくていいかなーって。
「ひ、ヒナタちゃんも、すっごくかわいいし、カッコイイ・・・!」
「へへ、ありがとな!」
真っ赤になってるのあの手を引いて、歩き出す。今日はデートだからな。手をつないだり、腕を組んだりしたほうがいいんだろうな。
そういえばどこに行くんだろう。まずはそれ聞かないとなー。
「えっと、電車で30分くらいのところにある美術館に行って、そのあと駅前の喫茶店でお昼と休憩してー、戻ってきてから軽く駅前でウィンドウショッピングしたいなーって」
「いいぞ! それじゃまず駅にいくか」
天舞市とお隣の宝崎市をつないでいる天宝線の電車にのあと乗る。日曜日の朝だからかな、空いていて二人でならんで座ることができた。
そんなに長い時間乗ってなかったけど、おしゃべりしたり、窓の外をすっとんでいく景色を二人で楽しんだり。
いつも電車に乗らないから、こういうのも新鮮だな。前に乗ったのはみゃー姉と一緒に水族館に行ったときだもんなー。
「小学生ふたりでお願いします!」
美術館の入り口でのあに待っててもらって、入場券を買ってきた。
日曜日だからかもだけど、大人はすごく高いのに、小学生はその三分の一くらいの金額で入れちゃうみたいだった。よく見ると、小学生から大学生まではとっても安かった。美術館って、学生にいっぱい来てもらいたいのかな?
「へー すっごいお得なんだネ! チケット買ってくれてありがとー☆」
「おう! これ、のあのぶん」
チケットをのあに渡して二人で美術館の中に入る。急に静かになって、薄暗くなって、空気が濃くなったような、そんな感じになった。
「わー・・・ オゴソカな雰囲気だねぇ」
おー、それだそれ。おごそか!
やっぱのあは難しい言葉もいろいろ知ってるよなー。かっこいいぞ!
二人で静かに作品を見て回る。どれも不思議な絵や彫刻でおもしろい。
美術館のなかを一通り見た後、外にも作品があるって書かれてたからそっちにも移動してみた。
「わぁ・・・」
「おおー」
もう寒い時季なのに、見渡す限り緑色の芝生だった。
あちこちにぽつんぽつんと彫刻が置かれていて、説明のプレートも立てられている。
「おー、なんかこれおもしろいな」
「これ、なんだろうネ? 二人の人が踊ってるとこかな?」
「のあ、まねしてみるぞ!」
「え? う、うん・・・?」
彫刻とおんなじように、二人で両手をつないで、それぞれ片足を上げているポーズをとる。こういう楽しいポーズとってると、なんだか気持ちも楽しくなってくる。
「へへ、のあー よっ ほっ」
「ヒーナタちゃーん☆ やっ とっ」
そんな調子でいろんな彫刻を見て回っては、人っぽいのがモチーフになってるのは真似てみることにした。
「これはー・・・ どうする?」
「んー、とりあえずやってみるか。今度はのあが下で」
「よーし、やってみるネ!」
芝生の上にのあがごろんと横になって、あおむけになる。そして、両手を上に伸ばして、両膝を曲げたまま足を上に上げる。
私はそののあのうえに乗っかって、のあの伸ばす両手に自分の両手を、のあの両膝に自分の膝を乗せるようにしてバランスをとる。
「お、おお これ、なんか むずい、な お おお」
「ひ、ヒナタ、ちゃん やっぱり ちょっと お、重・・・ きゃっ」
「おわー」
ど────んっ!
あはは、やっぱ無理だったか。でも周りがやわらかい芝生だったからぜんぜん痛くないぞ。
それより、のあ大丈夫か?
「のあ、ごめんな? 私が下になればよかったな」
「う、ううん。こういうのも楽しい☆」
「そっか。よかった!」
のあもきらきらした笑顔で楽しめているみたいでよかった。
美術館だけど、こんな風に体も動かせて私も楽しいぞ!
ただ見て回るだけじゃなくて、こんなふうにアトラクションみたいに楽しんでいたら、あっというまに作品を見終わっちゃった。
あー、楽しかったなー。今度はみゃー姉やはなたちみんなと来たいな。
「はー 楽しかったネ☆ そろそろお昼の時間になるから、駅前まで移動しよっかー」
「おう! 動いたらおなかすいたぞ!」
こうして私たちは美術館をあとにして、駅前まで移動していったんだ。
05
「ごちそうさまでした! おいしかったなー」
「おいしかったネ! ごちそうさまー☆」
駅前の喫茶店で、のあとごはん。
喫茶店ってお茶を飲むところだと思ってたけど、思ったよりいっぱい料理もあってしっかりしたお昼ごはんになった。
「なんかすごくきれいでかわいいごはんだったなー」
「うんうんー 写真に撮って残したくなっちゃう☆」
実際、のあはお料理とかデザートとかをスマホのカメラで撮っていた。今度はなたちに見せてあげるんだって。ついでに私のことも撮ってくれてたけど、なんかお料理より私のことを撮ってるほうが多かった。
んー、私もお菓子みたいなものなのか?
「のあのあれ、おもしろい見た目してたよなー。すらいむみたいな」
「あー、あのデザート。丸いアイスクリームの上にメロンゼリーがかぶせてあっておいしかったよー」
「顔も描いてあったよなー」
「うんうんー バブルスライムみたいだったネω ヒナタちゃんのはゴメちゃんみたいだったよねぇ」
「そうだぞ。食べるのかわいそうになるくらいかわいかった。かぼちゃ味でおいしかったけどな」
「スライムの形したかぼちゃペーストに、飴細工で作った羽がついてたねぇ」
言われてみたら、メニューもそれっぽいのがいっぱいだった。
【肉巻きおにぎり ~噛んだら最期!ばくだんいわ風 シェフのザオリク付き~】
【オレンジジュース ~ゴーストのグラスでお届け~】
【デカ盛りチャレンジ ~キングスライムサイズのソーダゼリー 食べ切れたら100ゴールド~】
【滋養強壮マホイミサラダ ~その回復力は閃華裂光拳並み~】
【激辛!!!ペペロンチーノ ~カイザーフェニックス3匹分~】
【トマトとチキンのポットパイ ~地上を崩し魔界の溶岩に浸して召し上がれ~】
あれ、なんか・・・普通のメニューはコーヒーくらいしかないかも?
見た感じ普通の駅前の喫茶店なのにな。お店の人が好きなんだろうな。
「ヒナタちゃんの食べてたあれ、おいしかった? ドラゴンの紋章の形にケチャップがかかってたけど」
「おう! なんか強くなれそうだし、おいしかったぞ。【ドラゴニックオーラのオムライス<黒の核晶入り>】 これで寝相も数段パワーアップだな!」
「アーウン、ソウダネーω」
「のあのはちょっとトゲトゲした形してたよなー」
「そうそう! 【天地魔闘の構えで作ったカラミティサンドウィッチ】っていうの。頭に角が三本もあって怖そうなお顔の形に並べられてたけど、おいしかったー!」
「シェフさんがだいまおうなのかもなー」
「まっさかー☆」
ちらっとキッチンのほうを見てみると、一瞬だけシェフさんが見えた。
長いおひげのおじいちゃんだったけど・・・まさかなー。
お店を出るとき、あらためてお店の名前を見てみたら「冒険者の憩いの場 ~キッチン・バーンパレス~」って書いてあった。
やっぱり、あのおじーちゃん・・・!?
お腹いっぱいになった私たちは、ゆっくりと駅まで歩いて、電車で天舞市に戻ってきた。天舞駅の周りにある商店街で、のあとウィンドウショッピング。見て回るだけだけど、それでものあとなら楽しかった。
「あー! あのお洋服カワイイω これもいいなーあっちのもいいなー ねぇねぇ、ヒナタちゃんはどれがいいと思う?」
「のあはかわいいからな。どれだってきっとさいきょーにかわいくなるぞ!」
「ひ、ヒナタ、ちゃん・・・そういうところ! だけど、アリガト・・・」
のあが真っ赤になってうつむいちゃった。私、悪いこと言っちゃったかな?
でものあはすぐ顔を上げると、きらきらした顔で次の服を見ていた。
「ヒナタちゃんにはこれがいいと思う!」
「おおー んん、これか? こんなフリフリできゃるっきゃるの、私に合うかー?」
「あうよー! ヒナタちゃんとってもカワイイんだから!」
もにょっ
のあにかわいいって言われて、なんだか胸がもにょっとした。
のあからはいつも「かっこいい」って言われるけど、かわいいって言われることはあんまりないから・・・。
なんだこれ。慣れてないからこうなってるのかな? なんか顔が熱くなってくる。
「お、おう。でも、のあのほうがかわいいぞ」
「えへへ、ありがと☆」
しゅるりと、のあのすべすべの手が腕に触れて。
そのまま、指を組むような形で手をむすんで。
のあの甘い匂いがすぐ近くでして、ちょっとだけくらっとする。
みゃー姉の甘くて安心する匂いとちょっと違って、すごく胸がきゅんとして、ドキドキするけどいい匂いで。
「────このまま、歩きたい、な」
「・・・そうするか。のあ、こっち」
肩がのあに当たらないように、のあの足を踏まないように気をつけながら、ぴったりくっついて歩く。
目的地なんてなくて、ただ今はのあとこうしてくっついたまま歩いていたかった。
隣ののあの髪から夕日が透けて見える。オレンジの光を浴びて、のあのきれいな髪がまっしろに輝いている。
ああ、もう夕方になってたんだな。吹き抜ける風も冷たい気がする。
私の肩に少しだけ頭をあずけるような形ののあ。
その表情はいつもの元気いっぱいな強気の顔とは違って、今にも飛び立って消えちゃいそうな、そんなきれいではかない表情だった。
まるで天使みたいだ────。
そう思って、のあが飛んでいかないようにちょっとだけ強く手を握りなおして、のあを見つめる。
のあも私の方を見てくれて、のあと目が合う。
とても嬉しそうな笑顔ののあがそこにいて。
「・・・のあ」
「ん・・・」
「そこに入るぞ」
「うん」
公園の看板が目に入って、そこのベンチまでのあをつれていって。
二人で並んで座って、遠くに沈んでいく夕日を静かに見守ったんだ。
06
「────ヒナタちゃん。今日は一日ありがとう」
「私も楽しかったぞ。今日もありがとな」
沈んだ夕日を名残惜しむように、群青色と橙色の混ざり合った空を見つめる二人。
冬の寒い時期、日の落ちた時間帯に公園にいるのは、たった二人だけ。
そんな二人を静かに見つめるのも、陰の濃くなった遊具たちだけ。
「のあ」
「ヒナタちゃん?」
「のあの誕生日プレゼント、なにがいい?」
「え・・・? それって今日のデートで・・・」
蜜柑色の子は隣に座る菜の花色の子に体を向けると、両手を取って胸の前で包み込む。
それはまるで、祈りを捧げるシスターのようにも見えて。
「・・・なに言ってるんだ。今日のは「七夕のお願い」だっただろ?」
「あ・・・」
「まだのあのお誕生日のプレゼント、してないからな」
「う、うん。そういえばそうだったネ」
「だからな、その。私にできることなら、なんでも叶えるぞ」
「な、なんでも・・・!」
両手を包まれたまま、真っ赤になる菜の花色の子。
目を合わせられないのか、伏し目がちにうつむいている。
目を閉じて、お願い事を考えていた菜の花色の子。
決まったのか、その青く大空のようにきれいな瞳をぱっちりと開いて蜜柑色の子を見つめる。
「ヒナタちゃん。アタシ、ヒナタちゃんに────して、ほしい・・・」
その消え入りそうな、鈴のような、砂金のようにきらめく切なる祈りをすべて受け止めて。
蜜柑色の子は、その瞳に驚きと決意をにじませる。
「・・・分かった。でも、本当にいいのか? のあ」
「うん。お願い、ヒナタちゃん・・・!」
物言わぬ、たそがれ色に染まる遊具たち。
変わらず静かに見つめる彼らも、そのたたずまいをもって二人を祝福するかのよう。
菜の花色の子も、蜜柑色の子も、その永遠にも感ぜられる時間を見つめ合って。
両手を組んで熱い想いをくゆらせ、ほころばせ、ゆわえ、なじませていく。
互いに目を閉じ、涙をにじませ、実を結んだ想いを天高く昇華させ、そして────。
遊具たちだけが見守る、ふたりぼっちのさびしくもぬくもりのある公園で。
二人の影がより深く、濃く、ひとつに溶け合い、山吹色の華が咲き乱れていった。
おまけ。
「・・・え? ひなた、歯医者なんですか?」
「そうなの。ノアちゃんが付き添いで行ってくれてるんだけど・・・心配だなぁ」
11月末に約束通り「お出かけ」をしてきた二人。
それはそれでほっとしたけど、その後から二人の様子がちょっとだけ変わったような気がする。どう変わったかって聞かれると困るけど、なんだかこう・・・元気がない? というより、よそよそしい? 私に対しては普段通りなんだけど、ひなたとノアがお互いにそんな感じ。一体なにがあったんだろう。
今日は今日で、三人でお姉さんのうちまで帰ってきたけど、すぐにひなたとノアの二人でお出かけしちゃったし。歯医者だって言ってたけど、今までひなたに虫歯があるなんて聞いたことなかったから意外な感じ。
ノアが学校で風邪引いたときに、こっそり「歯が痛い」って打ち明けてきた。だからノアが歯医者に行くっていうなら納得なんだけど。
「・・・ひなたって、前から虫歯ありましたっけ」
「ないよ? だから急にどうしたんだろうって不思議でね」
お姉さんはさっきからそわそわしている。ひなたが生まれて初めて歯医者に行ってるから、心配で仕方ないんだろうな。
いつもはひなたを突き放すようなことを言っているのに、こういうときはやっぱりお姉さんなんだなって思う。
「・・・お姉さんは、やっぱり虫歯いっぱいあるんですか?」
「やっぱりってどういうこと? うちはお母さんも私も虫歯はないよ。だからひなたもなかったんだけど・・・」
お姉さんは甘いものいつも作ってるから、きっと虫歯いっぱいあるんだろうなって思ってた。でも、ないみたい。
そういえば授業でやってたけど、虫歯っていうのは確か、ミュータンス菌っていうのがお砂糖とかを食べると作られる酸で歯が溶けちゃうことなんだって。
そのミュータンス菌は赤ちゃんは持ってないらしい。お母さんが噛んでやわらかくしたごはんを与えることで感染しちゃうって書いてあった。
ひなたのお母さんも虫歯はないみたいだし、お姉さんもないってことで、だからひなたもないっていうのは当然なのかも。
スプーンを使ってもうつるみたいだから、口移しとか、間接キスとかでも虫歯は広まっていくんだろうな。
「ん・・・? あ・・・・・・」
「花ちゃん?」
そっか。そういうことかぁ・・・。
ひなたとノアがよそよそしかったこと。急にひなたが虫歯になったこと。
ストンと納得できた気がする。
「・・・いえ。それで、お姉さんは虫歯、ないんでしたよね」
「そうだよー。密かな自慢だったりするんだけどねっ」
「よかったです」
「うん?」
「私も、虫歯ないんですよ」
「そうなんだ。あれだけ甘いの山のように食べてるのに、意外」
「だから、よかったですね。お姉さん」
「うん・・・???」
今日もいつもと変わらない。
朴念仁なお姉さんと一緒に過ごして、コスプレ撮影とお菓子をもらって。
昨日と変わらない今日を過ごし、今日と変わらない明日がやってくる。
いつもとなんにも変わり映えしない日々。変わっているのは私の心だけ────。
甘くなってきてる胸の内側に、いつになったら気づいてくれるのかな。
はぁ・・・。
ちゃんちゃん