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■2023年3月25日
一般チャットで行われた実際の「オンライン☆わたてにんぐ劇場」のチャットログはこちらから。
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公演会開始前、集合時の様子 ~ ご歓談 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ ~ お題発表
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「天使の羽休め」 チャットログ01 ~ ご感想 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「天使の羽休め」 チャットログ02 ~ ご感想 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「天使の羽休め」 チャットログ03 ~ ご感想 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「天使の羽休め」 チャットログ04 ~ ご感想 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「天使の羽休め」 チャットログ05 ~ ご感想 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「天使の羽休め」 チャットログ06 ~ ご感想
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公演会終了後、移動 ~ 「マイチャンさん主催 絵笛さんの2023年お誕生日会の様子」 チャットログ ~ 「天使の羽休め」についての感想・作り手側の想い吐露 ~ 解散
スクリーンショットは姫坂エミリーさんと星野千鶴さんと星野ひなたさんが撮影したものになりますので、チャット内容や環境設定はそれぞれ基準となります。
保護者さまの反応(わたてん保護者会血盟チャット)および公開していただけた天使たちの裏方のやり取り(わたてん公演会部血盟チャット)をすべて時系列で入れ込んでおります。天使たちの微笑ましい舞台裏も含めてお楽しみください。
天使たちの舞台裏は星野ひなたさんが撮影されたものを、集合時の召喚の為のパーティーチャットは姫坂エミリーさんが撮影されたものを、公演会中の保護者さまの会話は星野千鶴さんが撮影されたものを使用し、合成して1枚にまとめております。
今回も主に「天使たちのお友だち(保護者さま)」を対象とした即興劇を、人数制限のない一般チャット(白チャット)にて天使たちが実施してくださいました。
※今回は3月15日に実施された「GODDESS GARDEN」アップデート後初の公演会となりました。その為、非常に使いにくくなったチャット欄にみなさん苦戦されている様子が伺えます。
一部修正を入れた個所もありますが、みなさん不慣れな中応援しようと頑張っている姿が微笑ましいと思いましたので、基本無修正のまま掲載しております。
主な出席者は以下の通りでした。
わたてん公演会部:姫坂乃愛さん、星野みやこさん、白咲花さん、星野ひなたさん、種村小依さん、小之森夏音さん
わたてん保護者会:絵笛さん、マイチャンさん、うらりーぬさん、星野千鶴さん、姫坂エミリーさん、白咲春香さん
総勢12名でのイベントとなりました。いつもご参加ありがとうございます。
なお、まいちゃんさんが今回も公演会の内容をモチーフとしたイルミネーションアートを作ってくださり、その製作過程の記事を掲載してくださったようです。 →
春のうたた寝ーwー
いつも天使たちの公演内容に合わせたイルミネーションアートを作ってくださいまして、ありがとうございます。
作品につきましてはいつも通り、乃愛さんがヴァラカスサーバにて撮影してくださいましたので本ページ下部に掲載させていただきます。
■2023年6月17日
一般チャットで行われた実際の「オンライン☆わたてにんぐ劇場」のチャットログはこちらから。
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公演会開始前、集合時の様子 ~ ご歓談 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「天使の羽休め」 チャットログ07 ~ ご感想 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「天使の羽休め」 チャットログ08 ~ ご感想
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集合写真撮影(カップルダンス) ~ まどかさんからのプレゼント ~ 各種アニメ(おにまい!/江戸前エルフ/まどマギ)について ~ 物語の組み立て方 ~ 解散
スクリーンショットは種村小依さんとみんなの爺やが撮影したものになりますので、チャット内容や環境設定はそれぞれ基準となります。
保護者さまの反応(わたてん保護者会血盟チャット)および公開していただけた天使たちの裏方のやり取り(わたてん公演会部血盟チャット)をすべて時系列で入れ込んでおります。天使たちの微笑ましい舞台裏も含めてお楽しみください。
天使たちの舞台裏は種村小依さんが撮影されたものを、公演会全体のチャットはみんなの爺やが撮影したものを使用し、合成して1枚にまとめております。
今回も主に「天使たちのお友だち(保護者さま)」を対象とした即興劇を、人数制限のない一般チャット(白チャット)にて天使たちが実施してくださいました。
主な出席者は以下の通りでした。
わたてん公演会部:姫坂乃愛さん、星野ひなたさん、星野みやこさん、白咲花さん、種村小依さん、小之森夏音さん
わたてん保護者会:絵笛さん、マイチャンさん、うらりーぬさん、oなききつねoさん、姫坂エミリーさん、鹿目まどかちゃんさん、みんなの爺や
総勢12名でのイベントとなりました。いつもご参加ありがとうございます。
なお、まいちゃんさんが今回も公演会の内容をモチーフとしたイルミネーションアートを作ってくださり、その製作過程の記事を掲載してくださったようです。 →
19周年・w・
いつも天使たちの公演内容に合わせたイルミネーションアートを作ってくださいまして、ありがとうございます。
作品につきましてはいつも通り、乃愛さんがヴァラカスサーバにて撮影してくださいましたので本ページ下部に掲載させていただきます。
■記載ルール■
メイン記述者(進行者。今回は姫坂乃愛さん)が直接一般チャットに地の文を書き、他登場人物は「」で囲む形でセリフを書くことで物語を紡いでいきます。
☆☆☆☆☆ イントロダクション ☆☆☆☆☆
── リンドビオルサーバのとある同盟では ──
── 気ままに天使たちが舞い降りては 一遍の物語を協力して紡ぎ 人知れず飛び去っていく──
── という噂がまことしやかに囁かれています ──
こちらの記事は「エンジェリック・ミスリル・ハーツ・フェデレーション」内「天使が舞い降りた」同盟において
天使たちの紡いだ物語を一般公開できる形で記録に残そうと考えまとめたものとなります。(天使たちの公開許可はいただいております)
「私に天使が舞い降りた!(わたてん!)」という作品世界から、こちらの世界に飛ばされてしまった天使たち。
戻る術が見つからない日々の中、お友だちの代理露店をこなしながら元気に楽しげに生活されています。
時折、突発的に始まるリアルタイムでの「物語の編纂(即興劇)」というお遊戯は、その完成度の高さ、内容の睦まじさにより
見る人に癒しと潤いを与えてくれるものとなっており、まさに【天使】のような存在となっています。
今回のメイン記述者は「姫坂乃愛」さん。
主なキャストは「星野みやこ」さん、「星野ひなた」さんでした。
私に天使が舞い降りた! TVシリーズ公式サイト
より、プロフィール画像はこちらになります。(コンパクトにまとめました)
────────────────────
── 天使の羽休め ──
────────────────────
■作品イメージタグ■
#私に天使が舞い降りた! #わたてん! #姫坂乃愛 #星野みやこ #ノアみや #みやノア #シリアス #熾天使 #癒し #リコリス・リコイル #他作品コラボレーション
■作品文体■
一人称小説
三人称小説
■お題■
「ケーキ」
「燻らせる」
「赤色リトルリーダー」
「聖母」
「大学生」
「初恋」
※オンラインでのわたてにんぐ劇場では、白咲花さんがメイン記述者に「3つのお題」を開始直前に出されることが慣例となっています。
メイン記述者もしくは参加者はランダムで出されるその「お題」を地の文やセリフのどこかに取り入れてお話をリアルタイムで紡ぎます。開始直前に発表される為、事前に考えておくことができません。
事前にお題を出され、じっくり考えた場合でもランダムキーワードを取り入れて物語を紡ぐことはかなりの高等技術ですが、毎回みなさんすんなりとオンラインリアルタイムでこなされているので驚愕しております。
※今回固有の「お題発出」にまつわる考慮事項について。
今回のお話は事前に乃愛さんから周知がありましたように、「これまでの公演会をふまえたお話になる」ということが分かっていました。
つまり、オンラインわたてにんぐ劇場の総集編・総括編となる大切な公演会ということで、花さんも普段のお題ではなく公演会部の主要メンバーを想起させる7つのお題を発出されました。
保護者さまの血盟チャットにありますように、
「ケーキ=白咲花さん」
「燻らせる=星野ひなたさん」
「赤色リトルリーダー=種村小依さん」 ※「赤色リトルリーダー」は、チャットにて星野千鶴さんが指摘されたように種村小依さんのキャラクターソングタイトルとなります。
「聖母=小之森夏音さん」
「大学生=松本幸子さん/星野みやこさん」
「初恋=???」
といった割り当てになるかと思われます(初恋がどなたのことを指しているのかは、作品をお読みいただいたみなさまの心の中に答えがあると思われます)。
(個人的にはこの「初恋」は、作中で明言されている乃愛さんみやこさんのことであり、更には固有の人物に属したものではなく「天使たちの恋心はすべて初恋である」という大きな意味も含まれているのではないかと考えております)
お題を辿るだけで、これまでの公演会を思いだせるものとなっているのは、さすが花さん。乃愛さんによる総括のサポートとして完璧なお題だったと言えるでしょう。
※コラボレーション先作品について。
乃愛さんによる描写から、コラボレーション作品は「リコリル・リコイル」であるとピンと来た方もいらっしゃると思います。
しかしながら、前提知識としてコラボ先作品の登場人物の容姿を把握していないと理解できない会話となっている為、以下に補足としてキャラクター情報のリンクを作りました。
リコリス・リコイル 主人公・錦木千束(にしきぎちさと)さんの紹介ページ
リコリス・リコイル DA司令官・楠木さんの紹介ページ
リコリス・リコイル 錦木千束さんの相棒・井ノ上たきなさんの紹介ページ
リコリス・リコイル 最強ハッカー・クルミさん(ウォールナット)の紹介ページ
リコリス・リコイル 金髪のセカンドリコリス・篝 ヒバナ(かがり ひばな)さんの外見
(公式サイトにはヒバナさんのお名前と容姿が掲載されていなかった為、「第3話 More haste, less speed」より抜粋しました)
──────────
アタシは姫坂乃愛。十二歳の小学五年生で、最近ステータスがカンストしちゃってカワイイが伸び悩むくらい、世界で一番カワイイオンナノコ☆
ヒナタちゃんのお隣にお引っ越ししてきてからの一年くらいで、ホントいろんなことがあったんだー。
ハナちゃんのこと────。
いつもそっけなくてクールに見えるハナちゃん。だけど、いつも心のどこかでミャーさんとのことで小さな悩みを抱えてる。それはお菓子でとろけてる表情じゃ誤魔化せないくらい、大きな不安になっちゃうこともあって。
そんなハナちゃんに「ハナちゃんの感じているミャーさんのダメなところはぜんぶ解消されているんだよ?」って説得したこともあった。
今のままでいいのか不安に思ってるハナちゃんに「あるがままでいい」ってアドバイスをしたこともあったなぁ。
ミャーさんのハナちゃんへの想いが本物かどうか悩んでいたとき、これ見よがしにヒナタちゃんのほっぺにキスをしてみせたこともあった。それは「ほっぺにちゅーしてほしい」って言うミャーさんの想いの重さに気づいてほしかったから。ヒナタちゃん、あの時はいきなりでごめんネ。アタシだって強がってたけどちょーハズカシかったω
つい先週のこと。めずらしく荒ぶってるハナちゃんに連れられてケーキ屋さんに行った。マンガみたいな勢いでなくなっていくケーキを見つめながらグチを聞き流していたけど、すぐに真剣に悩んでいると分かって。そこからはミャーさんの本当の気持ちに気づいてもらおうと頑張った。このときのハナちゃんは手強かったけど、最後には分かってくれて。「二人で話し合ってみる」って約束してくれたハナちゃん。それからはアツアツの関係が続いている。
でもアタシ知ってるんだ。ハナちゃんは花火大会のときも、長瀞旅行のときも、クリスマスの時も、いつだってミャーさんのことを想ってたってこと。
この一年は、ずっとハナちゃんのおノロケに立ち会ってたような気もするなー。幸せそうだから、別にいいけどω
コヨリちゃんのこと────。
先月のバレンタインデーの前の日に。コヨリちゃんに誘われてホンメーチョコレートを一緒に作ったの。コヨリちゃんも渡す相手と一緒に作れなかったんだろうなって、お誘いされたときにすぐに分かっちゃった。コヨリちゃんそそっかしくて危なっかしいけど、落ち着いてすればホントなんでもできるみたい。上手においしそうなチョコを作れていたから。カノンちゃんが言ってたとおり。そこまで誘導するのがタイヘンだったけどネω
でも、翌日のカノンちゃんの幸せそうな涙を見ることができたから、それだけでアタシも頑張ったカイがあったなーって思えた。
長瀞旅行のときはコヨリちゃんが一番張り切ってた気がする。もちろんカノンちゃんに支えてもらいながらだったけど、立派にアタシたちのリーダーとしてやりきったと思うの。「たびのしおり」もカノンちゃんと一緒に作っていたけど、あれすごい力作で。二人で調べたり相談したりしながら仲良く作り上げたんだろうなーって思うと、なんだかうらやましくなっちゃう。二日目は夜のお祭りが急に入っちゃったから早めにおばあちゃんのおうちに戻ることになったけど、ちゃんと調整して無理のない行程にしてた。たしか、宝登山のとこ削ったんだったかなー?
赤色リトルリーダー、コヨリちゃん。オトナになって落ち着いたらホントすっごいことになりそう。お友だちとして期待しちゃう☆
カノンちゃんのこと────。
カノンちゃんとはあんまり一緒におでかけとかしないけど、長瀞旅行のお洋服を買いに行ったときにお店でバッタリ会って。その時のカノンちゃんはめずらしくコヨリちゃんと別行動だったから、アタシのお洋服選びにつきあってもらったんだー。
「これなんかいいんじゃない? コヨリちゃんもカワイイって言ってくれるよー」「そ、そうかなぁ」なんて、あんまりできないオンナノコっぽいおしゃべりもしちゃったり。
カノンちゃんはとってもしっかりしてるし器がおっきいから、コヨリちゃんのことだけじゃなくて他のいろんなこともお任せしちゃってダイジョウブなアンシン感がある。
学校で風邪を引いて保健室で寝込んでいたときもアタシのお世話してくれて、「ママかな?」って思っちゃった。さすが聖母カノンちゃんω
でも、いつもそうとは限らなくて。
これも先月のことだけど、おさななじみのコヨリちゃんとの関係がギクシャクしちゃってて。
思い詰めたような、カノンちゃんの苦しそうな様子にアタシもなんとかしなきゃって思って、喫茶店でカノンちゃんにアドバイスしたりした。
タイヘンだったけど、自分の経験を元にカノンちゃんを救うことに成功したんだ。将来のことを見つめてもらって、今すべきことに気づいてもらえたから。
あの日の翌朝の、なんだかとてもオトナっぽい顔をしたカノンちゃんのことはずっと忘れないと思う。
もちろんアタシはきっかけを作っただけで、うまくいったのはカノンちゃんとコヨリちゃんが頑張ったからなんだけど、ネ。
マツモトさんのこと────。
大学生のマツモトさん。まだまだ子どものアタシたちとは違っていろんなことが広く見えていて、その行動力とか、好きなものの観察力とかはすごいと思う。
でもやっぱり、そんなマツモトさんもなんでもぐいぐい行くことはできないみたいで。アタシにもそれが分かるときがあるんだ。
めずらしくマツモトさんから喫茶店に誘ってもらった、去年の十月。案の定、そのときのマツモトさんは曇った顔をしていた。
オトナのマツモトさんがアタシを相談相手に選んでくれた。もうそれだけで、アタシにできることは頑張らないと! って思っちゃう。
大学生相手でも臆することなくアドバイスをして、マツモトさんに気づいてもらおうとした。
お友だちになりたいなら、お友だちとしてお誘いすればいいってこと。
レアなミャーさんが見たければそれを見られるようにすればいいってことを。
マツモトさんはスマートだから、すぐにアタシのアドバイスの意味に気づいてくれた。
結果的に、ミャーさんとマツモトさんの気持ちがぐっと近くなって、アタシから見てもちゃんと「お友だち」になれたように見えた。
去年の夏祭りのころから二人の距離は近づいていたけど、それがやっと実ったんだネ。これからも仲良くしてくれるとアタシもうれしいな。
ヒナタちゃんのこと────。
ヒナタちゃんへの想いを一人でくすぶらせ、募らせていた去年の夏。
あの夏祭り。イナセでカッコよかったヒナタちゃんのことを「オトコノコみたい」って言って傷つけて、泣かせちゃった。
なんであんなこと言っちゃったんだろう。お祭りの熱気にあてられたからかな。あれはホント失言だったなぁ・・・。
でもあの時は、ヒナタちゃんの深い愛でアタシのほうが救われたの。ホントうれしくて、花火が上がる中ふたりしてぐしょぐしょに泣いたのを覚えてる。
その翌月、ハナちゃんのおばあちゃんちに旅行に行って、ヒナタちゃんに急接近しようと頑張ってて。ほとんどアタシひとりで空回りしていたけど、夜も一緒に寝られたし、かき氷をあーんしてくれたし、いちおう成果はあったと思う。
それからしばらくの間、アタシはなんとかヒナタちゃんと朝まで一緒に寝ようと頑張っていた。
あれはアタシにとって一番の試練だったと思う。チヅルさんの難題に、ミャーさんに助けてもらいながら挑んで、ついにアタシはクリアすることができたの。
ヒナタちゃんだけじゃなくて、チヅルさんミャーさんともそれまで以上に深いおつきあいになった気がする。ついにヒナタちゃんと星野家公認のおつきあいになったから。
でも・・・。すぐにはそんなに進展はしなくってネ。それが大きく前進したと思えたのは、去年の十一月のこと。アタシの「七夕のお願い」を叶えてくれるって、ヒナタちゃんがデートに連れて行ってくれたの。
美術館やウィンドウショッピングで楽しんでネ。夕暮れ時に、恋人つなぎをしながら立ち寄った公園で、ヒナタちゃんはアタシの誕生日のお願いをその場で叶えてくれたの。
すべてが幻想的な琥珀色の空間に溶け込んだ、深く濃い陰影が支配する寂しくも美しい情景のなか。
アタシたちはお互いの想いをほころばせて、くゆらせて。そして────。
文字通りひとつになったの。えへへ・・・。
もう二度とこの幸せを逃がさない。何があってもヒナタちゃんの手は離さない。そう心に決めたんだ。
いろいろ経験した五年生からの一年間だったけど、このときアタシはオンナノコとして一段階成長できたと思う。
「・・・はふぅ~・・・・・・」
こうしてみると、アタシはいつも「誰かの置かれている状況をよく見ていて、どうすればそこから改善できるかを常に考えている」ような気がする。
それは身近な誰かを助けるために必要なことで、ママも立派なレディになるために必要なことだって言ってくれる。
だけど────。
──────────
────それは、そろそろ六年生に進級しようとしている、三月下旬の土曜日のこと。
ハナちゃんは土日で桜おばあちゃんのおうちに泊まりに行ってて、ヒナタちゃんは家族と一緒に進級に必要な雑貨を買いに出かけていた。
ついでにママもお夕飯のお買い物に出かけちゃってるから、今のアタシはひとりぼっち。そんな昼下がりのことだった。
いつものアタシならママのお買い物か、ヒナタちゃんのお買い物について行ってたと思う。でも、今日はそんな気分になれなくてお部屋でぐったりしていた。
「んーー~~・・・ はふぅ・・・」
子猫のようにけだるく伸びをする。傍目にはかわいらしい仕草だと思うけど、きっと今のアタシの青い瞳は半開きでトロンとしていると思う。
ここ最近、アタシは病気でもないのにぐったりと疲れ切っていることが多かった。
ママの言うとおり、夜はしっかりと寝てるし休息はとれている。それでも完全には疲れが取れないと感じる日々を送っていた。
まるで劣化した充電電池みたい。満タンまで元気になったと思ったけど、そうでもないような、もどかしい状態。
今もカワイサを磨き上げるための三面鏡の前じゃなくて、明るい窓が正面に見えるベッドに座り込んで窓の外をぼんやり見つめていた。
「・・・あ・・・」
ぼんやりしていたアタシの瞳に、窓の向こう側でミャーさんがコスプレしている姿が飛び込んできた。
深紅の学生服っぽいものを身にまとい、頭の左側で髪と赤い紐をリボンのような形で結んでいるミャーさん。
なんだかとってもノリノリで、小道具のモデルガンを構えてポーズを取っていた。
「・・・あれ? ミャーさんがいる・・・」
ふと、ヒナタちゃんから来ていたメッセージをもう一度読み直してみる。
そこには確かに『みゃー姉が買い物つきあってくれなくてさー』と書かれていた。
「そっかぁ・・・。それでミャーさんだけおうちにいるんだネ」
去年のアタシはここで窓をガラッと開けて、これみよがしにミャーさんのポーズを真似して見せてからかってたっけ。でも今はそんな元気も湧いてこなかった。
なんとなくだけど、アタシの特徴的な前髪もしおれているように感じた。
ピピピッ ピピ ポチッ
『ミャーさーん。今はそのアニメはまってるんだ? すごくよく似合ってるよーω』
LANEでそれだけ伝えてみる。
しばらくするとミャーさんのお部屋から断末魔のような悲鳴が轟いてきた。
ピロリローン♪
『の、ノアちゃん。このことはお母さんとひなたには黙ってて! お願い~~>人ミ』
『えー どうしよっかなーω でも、ホントよく似合ってるよー? アタシもなんか着たくなっちゃったー』
『お茶とお菓子も用意しますので、どうかご内密に・・・』
『そんなハナちゃんじゃないんだからー。ダイジョウブだからアンシンして? これからそっちいくねー☆』
────────────────────
── 天使の羽休め ──
────────────────────
01
軽く着替えて自宅を出て、徒歩十秒のお隣さんへ。
チャイムを鳴らして少し待ってみたけど、特に家の中で物音はしなかった。
ドアに手をかけてみると、鍵はかかっていなかった。
カチャリ・・・
「おじゃましまーす」
勝手知ったるヒナタちゃんち。
躊躇うことなくそのまま二階へと続く階段を上る。
ヒナタちゃんの部屋のドアをちらりと見て、ほんのりと赤くなっちゃう。
でも今日はその想い人はいないんだった。ザンネン。
そのまま入り慣れたお隣のミャーさんの部屋の前へ移動して、ノックをしてからお部屋のドアを開ける。
コンコン カチャ
「ミャーさーん。こんにちはー」
「い、いらっしゃい・・・」
ミャーさんはコスプレからいつものジャージに着替えていた。素早いなぁ。
そして作業用の座席に座って、アタシを見ておびえているような顔をしている。
そんなミャーさんを見て、アタシは少しだけ悲しくなった。
ため息をひとつついて、ミャーさんのベッドに座り込みながらやさしく語りかけてみる。
「んもー、ダイジョウブだって。ミャーさんが家にひとりきりの時にコスプレ楽しんでるなんて、みんな知ってるんだからー」
「そっ そうなの・・・? えぇ、私のプライバシーって・・・」
「なんなら、今もマツモトさんがカメラ越しに見てるよ? イマサラだよー」
「ひぃ~~~!」
ミャーさんをからかって少しだけいつもの調子を取り戻したアタシは、コスプレのことを持ち出してもうちょっと楽しむことにした。
「でも、髪型からしたらミャーさんは楠木さんのほうがキャラ近いんじゃない?」
「えぇ・・・あんな怖い役は無理だよ・・・。ていうかなんでノアちゃんこの作品知ってるの!? これ深夜アニメなのに・・・」
「今は時間帯あんまり関係ないんだよーミャーさん。動画配信サイトでいつでも見ることできるしネ」
「そ、そっかぁ・・・ でもあれは十三歳以上推奨の作品だし、お話の内容は過激だから、その・・・あんまり見ちゃダメだよ?」
「はーいω でもうちはママがそのあたりゆるーいからー」
ミャーさんはアタシとおしゃべりしながら右手で額を押さえていた。世代の差を感じてるのかなー?
しばらくうなっていたミャーさんだったけど、何かに気がついたように顔を上げてその右目をアタシに合わせてくれた。
「でも・・・ ノアちゃんはそうなると、どの子が近いかな・・・ ヒバナちゃんとか?」
「確かに金髪だけど、あの子見た目がシブいから。それならまだ、クルミちゃんのほうがいいなーω」
「そっかぁ。クルミちゃんは金髪碧眼でこっぱち幼女ハッカーだね。そっちのほうが確かに近いな・・・」
「でしょー? あの子中身おばあちゃんだと思うけどω この制服カワイイから、今度アタシも着てみたいなー」
「うん、それは大丈夫。花ちゃんのと一緒に作るつもりだから。ベージュのとか」
「ハナちゃんはやっぱりー?」
「たきなちゃんだよね! 黒髪ロングでクールで、不器用なとこがぴったりっ!」
「だよねぇ。そう言うと思ったーω」
よかった。アタシ、いつも通りミャーさんとおしゃべりで盛り上がれてる。
そのことにアンシンしたアタシは、少し目を細めて次の話題探しの為に部屋を見渡した。
だってこのままだとミャーさん、アタシのサイズのリスの着ぐるみを作りはじめかねなかったから。
ふと、ハンガーに作りかけの衣装がかかっているのが見えた。ミャーさんが着ていたものと色違いの、濃紺の学生服。
今話していた、ハナちゃん用のコスプレ衣装なんだろうな。小学生サイズだからアニメ本編のものより数回りは小さく作られてるみたい。
よく考えてみると、ミャーさんはこれらの衣装を作っていたはず。アタシが闖入することで衣装作りの邪魔をしちゃっていることに気がついた。
「・・・ミャーさん、ごめんネ? 衣装作ってたんでしょ? 中断させちゃったネ」
「ううん。ちょうど休憩してたところだから、気にしなくていいよ」
「・・・・・・」
「・・・ん?」
「・・・ミャーさん、アタシ・・・ ここにいても・・・いい?」
「もちろんいいよー」
そう言うことで、ミャーさんに「作業続けていいよ」と遠回しに伝える。
それを受けて、ミャーさんは濃紺の衣装を手に取ってミシンにセットする。
「あ、そこにある紅茶とお菓子、食べてていいよ」
「ありがとー ミャーさん」
02
カタタタ シャッシャッ カタタタタタタタ・・・
小気味よいミシンの音が部屋に響く。まるで一日の大半をそこで過ごす職人の工房にいるかのよう。
アタシは紅茶とお菓子には手をつけないで、ただじっとミャーさんの手元を見つめていた。とっても鮮やかで乱れのない、美しいとすら感じる手さばきに目を奪われて、吸い込まれそうになっていた。
ミャーさんの作るコスプレ衣装はいつもとっても着やすいの。見た目がカワイイってだけじゃなく、着る人のことをしっかり考えて作られているからだと思う。
見た目はすごくカワイイのに、着てみると窮屈で自由に動けない────そんな衣装はこれまでにひとつもなかった。まるで何も身に着けていないかのように、肩も肘も膝も、すべてを自由自在に動かすことができた。
いろいろな装飾がついているのに、極端に重たいと感じることもなくて。エンブレムや突起がついているお洋服が多いけど、どれもアタシたちが傷つかないようにやわらかい素材でできていた。
まるで普通のお洋服を着ているのと変わらない快適さの衣装ばかり。よく考えるとそれはとても不思議なことのはずだけど、ミャーさんの衣装はいつもそうだから、不思議ともすごいとも思わなくなっていた。
着る人の快適さまで考えた実用的な衣装になっているのは、大学で服飾デザインを学んでいるのもあると思うけど、でも。
それだけじゃなくって、それを着るアタシたち──ハナちゃんを中心としたアタシたち──への「愛」が形になっているんだと思う。
そのことに気づけたのは、アタシもこれまでにたくさんミャーさんの作った衣装に袖を通してきたからで。
「(ミャーさんって、すごいなぁ・・・)」
いつもミャーさんは、ハナちゃんを中心に撮影している。
周りのアタシたちはただのおまけであって、主役はハナちゃん。ハナちゃんだけキレイに撮れればそれでいいんだろうなって、初めの頃はそう思っていたのアタシ。
でもネ、何度もミャーさんの作る衣装に袖を通しているうちに、アタシ気づいたの。ハナちゃんの衣装とまったく同じ丁寧さで、アタシたちの衣装も作り上げられているってことに。
普通に考えたら、メインのハナちゃんの衣装だけしっかり作ればそれでいいんじゃない? って思う。
事実、時間がなくてヒナタちゃんの衣装がなかったこともあったんだし。
「・・・ん? どうしたの? ノアちゃん」
「んー・・・ なんでもないんだけど、ネ」
無意識のうちに、ミャーさんのすぐそばまで移動していた。
ミャーさんの職人のような手さばきを、もっと近くで見たいと思ったから。
でも、それだけじゃないってアタシは自分で気づいていた。
ただミャーさんのそばにいたいだけ────。
でも、そんなこと恥ずかしくて口に出せないもん。
かといって、このままミャーさんのお部屋を出る元気もなかった。
少し困っちゃったアタシ。ミャーさんと目を合わせられなかったけど、代わりにミャーさんのデスクの上に置かれている型紙をじっと見つめる。それは、ミャーさんが魔法のようにカワイイ服を生み出す為の原型。
最初の一度だけ採寸されたけど、それ以降は測られたことはない。それなのに、いつもぴったりサイズの服ができあがっているのも不思議だった。自宅の既製服はこの一年でほとんど着られなくなっちゃった。だから、身体が成長してて日に日にサイズも変わっていっていることは確かなはずなのに。
オトナから見れば自分たちのサイズなんて大きな差はないから、全員同じサイズで作ればいいと思われているかもしれないけど。でも実際にはアタシたち五人の体のサイズはそれぞれまったく違うの。
例えば、ハナちゃんは五人の中で一番スリムだから、ぴったりに作ろうとすると一番細く小さくなる。腕もおなか周りも足も、くやしいけどアタシよりハナちゃんのほうがスリムでモデル体型であることはアタシも認めている。あんなに甘いの食べてるのに納得いかないけど。
ヒナタちゃんは身長は高くないけど、腕も足もおなかも背中も筋肉がついていて五人の中で一番がっしりしている。
コヨリちゃんはハナちゃんと同じようにすらりとしているけど、身長が違うからハナちゃんの型紙はそのまま流用できないし。
カノンちゃんはヒナタちゃんくらいの身長だけど、ヒナタちゃんのように筋肉はついていない。それに五人の中で一番胸元がふくよかだから、同じように他の子の型紙は使い回せないと思う。
つまり、ひとりひとりの衣装すべてがオーダーメイドということ。
そのすごさを一番実感したのは、去年長瀞旅行に行ったときに着た五人お揃いの衣装と、今年に入ってから着せてもらったリリキュア新シリーズのお揃いの衣装。全員バラバラのサイズなのに、着てみるとまるで戦隊モノかと思うようにビシッとお揃いに見えて壮観だった。
それだけじゃなくて、長瀞の時は衣装を着たまま街の中を一日中歩き回っていたのに、誰一人として動きづらくて疲れてたり顔を曇らせている子はいなかったの。やっぱり、ひとりひとりに合わせてしっかりとあつらえてあるからだろうなー。
いつもさらりとやってのけているけど、今挙げたことだけでもミャーさんの腕のすごさとアタシたちへの等しい愛の深さがわかると思う。
03
カタン パコン トントン・・・
型紙を見ながら物思いにふけっていたアタシは、その音ではっとする。
音がした方を見ると、ミャーさんがミシンとテーブルを片づけているのが見えた。
まだ衣装できあがっていないのに、って。
ああ、この時間も終わっちゃうんだな、って。
そう思ったら、さすがのアタシも寂しくなっちゃって、目を細めちゃう。
周りのみんなへの影響が大きい「センシティブな感情」はいつも上手に隠し通してるけど、今はきっとミャーさんから見ても寂しそうに見えているんだろうな。
でも、なんでかなぁ。今のミャーさんにならそう見られてもいいっていうか、アタシが寂しいと思ってることを知られてもいいっていうか。
ミャーさんには気づいてほしいっていうか・・・。自分でも不思議だけど、いつも張ってる「心のバリア」は、今は跡形もなく消え失せていた。
名残惜しそうにミャーさんのテーブルに手をつけていると、片づけの終わったミャーさんがベッドに移動して座り込む気配がして。
そしてアタシのことを穏やかな笑顔で見つめてくる。
「(あ・・・・・・)」
その時。少しだけミャーさんの左目が見えたような気がした。
アタシはそんなミャーさんに引き寄せられるようにベッドまで移動すると、ミャーさんとベッドの横に置かれている椅子を交互に見つめる。
そして────。
ぽすっ・・・
「の、ノアちゃん!?」
「・・・ここでいいでしょ? オネガイ・・・」
「の、ノアちゃんが、そうしたいなら・・・」
アタシは椅子じゃなく、ミャーさんが腰掛けているベッドに一緒に座り込んだ。
ミャーさんの左隣に座って、そのままミャーさんの左腕にもたれかかる。
「ど、どうしたの・・・?」
「・・・・・・・・・」
目を閉じてミャーさんに体を預ける。そのあたたかいミャーさんの体に、ホッとしている自分を自覚しながら。
アタシは何も言わなかった。何も言えなかった。
アタシ自身にも、今のこの感情は言葉で説明できそうになかったから。
そしてなにより、ミャーさんなら、言葉にしなくても受け止めてくれるという期待があったから。
「・・・このごろ、いろいろあったんだー・・・」
「いろいろ、かぁ・・・」
「お友だちがネ、悩んでいて・・・ アタシからアドバイスしてみたりとか」
「うんうん」
「将来のことを見据えながら、今のアタシにできることを考えて動いたり」
「す、すごいね・・・」
「アタシのこのスキって気持ち、持て余すこと多いけど・・・でも、こぼさないように、全部を伝えたいって。そう思ったりネ」
「・・・うん」
ミャーさんは相槌を打つと、少し距離を置いてひじをアタシにぶつけないようにしながらジャージの上着を脱いだ。そしてジャージをアタシの上からふんわりとかぶせると、改めてぴったりと密着してくれた。
「・・・ミャー、さん・・・?」
「いいよ。続けて?」
ミャーさんのジャージ。とても甘い香りがして、あたたかい。
それだけで、心が溶けていくような安心感があった。
アタシも再びミャーさんに体重を預けて、目を閉じる。
「・・・アタシの気持ちに、気づいてないのがもどかしくて、ネ・・・」
「でも、気づいてくれないほうがアンシンっていうか」
「今のままでいられるから楽っていうか、怖くないって感じちゃうアタシもいて・・・」
「ぬるま湯につかっていたいだけ・・・。ただの逃げ、なんだけどネ」
どうしてアタシはミャーさんにこんなことを話しているんだろう、と。
自分でも理解できないまま、気持ちを整理しないまま。
今の感情を思いつくままに言葉にしては、ミャーさんと共有する空気に溶かし込んで、なじませていった。
たったひとつ確かなことは、今この瞬間しかこういう話はできないという直感だけだった。
「うんうん。それ分かるなぁ・・・」
「・・・ミャーさん、も・・・?」
「うん。花ちゃんは私の気持ちには気づいてくれないけど、気づいてくれないほうがいいっていうか、安心するっていうか・・・」
「本心では気づいてほしいけど、気づかれてしまったら、それはどうしようもなく怖いことだと思っちゃうんだ」
「私、勇気がないから・・・」
本当はこんなんじゃダメなんだけどね、と。
ミャーさんはアタシの方を向いて苦笑いしてる。
自然に見えているミャーさんの左目。今はそれが、アタシの瞳と同じ色を帯びていることを見逃さなかった。
「えへへ・・・ なんだかウレシイ」
「ノアちゃん?」
「アタシの今のキモチを分かってくれる人がいて。あと、分かってくれたのがミャーさんで、ホントによかった」
「そう? それならよかった。でも・・・どうしたらいいかアドバイスできなくて、ごめんね」
「ミャーさん・・・」
まゆの下がった顔をアタシに向けながら謝るミャーさんを見て、アタシは思い出した。
ああ、ミャーさんも現在進行形で恋しているんだった、って。
それもたぶん、アタシと同じ初恋で、片想いを。
初めての恋で、誰かにアドバイスなんてできるはずもないのに、年長者だから何かアドバイスしなきゃって考えてるミャーさん。
そんなミャーさんの真摯な様子。
理解してくれたっていう喜び。
包まれているあたたかなジャージ。
アンシンできる匂いに包まれて。
アタシは心からリラックスしきっていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・?」
「アリガト・・・ ミャー・・・さ・・・」
ふらっ・・・
────────────────────────
── intermezzo ──
────────────────────────
全身の力が抜けて、ベッドに崩れ落ちそうになるノア。
しかし────。
ふわっ
「よっ・・・とぉ・・・」
ノアのことを見つめていたみやこはそうなることを予見していたのか、ノアを力強くもやさしく抱き留め、そっとベッドに横にする。
その長く美しい髪を痛めないように、引っ張らないように、細心の注意を払いながらみやこはノアが寝心地のいいように周囲のすべてを整えていく。
いつも自分に見せる高飛車な顔とは打って変わって、いたいけで安心しきった寝顔を見つめながら、みやこはやさしげな笑顔でそっとノアの頭をひとなでする。
「・・・頑張りすぎだよ、ノアちゃん」
「今はひなたもいないし・・・私以外誰もいないから、ゆっくりしていいよ」
みやこはベッドの掛け布団をノアにふんわりとかぶせ、部屋の照明を落とす。
カーテンも閉めてからノアの元に戻ると、妹のひなたに見せるような面持ちで語りかけた。
「本当、いつもみんなのために頑張ってるよね。えらいし、すごいな・・・」
「私には真似することもできないくらい、まぶしく見えちゃう」
「でも、うん。今はただの小学生で・・・子どもでいていいからね」
そして、ベッドサイドに腰掛け、あたたかくノアのことを見つめるのだった。
「おやすみなさい、ノアちゃん────」
04
さわさわ・・・ しゅりぃ・・・
「・・・ん んぅ・・・」
あれ、アタシ・・・。ぐっすりと寝ちゃってたみたい。
特徴的な前髪をなでられている感触で目が覚めたけど、とてもやさしい手つきでなでられているのが心地よくて、うっとりと目を閉じたままだった。
さわ・・・ ぴよんっ
今朝はしおれていた前髪は、コシのある弾力を取り戻していて。
手が触れる度に、元気に跳ねている感覚が伝わってくる。
すすっ ぴょん すっ ぴょこん す ぴょっ
「んん・・・ んもー、さすがにくすぐったいよ? ミャーさーん・・・」
「おー 起こしちゃったか、のあ」
「・・・えっ?」
聞き慣れた声にぱちっと目を開けてみると──。
目の前いっぱいにヒナタちゃんの顔が広がっていた。
アタシと同じようにベッドに横になって、右手でアタシの前髪をなでていたヒナタちゃん。
アタシが目覚めると、ヒナタちゃんは顔を近づけて満面の笑顔になった。
近すぎてピントが合わないくらいの、お鼻が触れちゃいそうな距離。実際、ヒナタちゃんの甘い吐息がほっぺに当たってくすぐったい。
あんまりにも近くって、アタシは真っ赤になっちゃう。でも、なんとなく違和感を感じて考え込んじゃう。
「・・・あれ? アタシ、ミャーさん、に・・・?」
「そうだぞ。みゃー姉に言われちゃって」
閉じられたカーテンの隙間から、オレンジ色の夕日が射し込んでいる。
それ以外の明かりはないからお部屋の中は薄暗いけど、夕日の射したヒナタちゃんの髪は白飛びして神々しく見えた。
ヒナタちゃんはアタシに添い寝してくれていたけど、ゆっくりと体を起こしてアタシの上にそっと覆いかぶさった。
アタシに体重をかけないように、仰向けのアタシをまたぐように膝立ちして、上半身をかがめて顔を近づけて────。
「ひ、ヒナタちゃん・・・!?」
「・・・みゃー姉から頼まれてなー・・・」
ヒナタちゃんはそれだけ言うと、アタシのほっぺに自分のほっぺをやさしくくっつける。
体を丸めて覆いかぶさるヒナタちゃんは、傍から見たらきっと卵をあたためる親鳥のように見えると思う。
「えっ えっ? あの、ヒナタちゃ・・・?」
「のあ、ごめんな。気づいてやれなくて・・・」
ヒナタちゃんはミャーさんに頼まれたって言ってる。
もう夕方になっているみたいだから、さすがに寝過ぎちゃったよね。
だから、起きたかどうかを確認しに、それか起こしてきてほしいって頼まれたんだろうな。
でも、ヒナタちゃんの様子をみる限りそれだけじゃなさそう。
一体何を、ミャーさんに頼まれたんだろう?
「ひ、ヒナタちゃん、ハズカシイ、よ・・・」
「のあ のあ・・・」
『みゃー姉に言われちゃって』
『気づいてやれなくてごめんな』
ヒナタちゃんの言葉と、その動きにアタシは混乱する。
どういうことなの? まったく分からない、けど・・・。
「・・・ヒナタちゃん、いいの? アタシ、もう・・・」
「・・・もうがまんしなくていいんだぞ。ごめんなのあ・・・」
分からないけど、ヒナタちゃんは「がまんしなくていい」って言ってる。
それなら、と。
アタシは自分のキモチに素直になることにした。
ちゅっ
「ぷむっ! んあ のあ!?」
「っはぁ ヒナタちゃん ヒナタちゃん・・・」
ちゅぅ・・・ ちゅ
きっかけはミャーさんに言われたから、かもしれないけど。
目の前のヒナタちゃんがアタシのことを気にかけてくれていて、我慢しなくていいと言ってくれているんだから、その通りにしなきゃ。
据え膳食わぬは女子の恥って言葉も古来からあったはずだし。
「アタシ、ヒナタちゃんが、好きなの」
「のあ・・・ わたしも、のあのこと」
「チガウの。アタシの好きはヒナタちゃんのと違って、こういう好きなの」
「・・・・・・」
「ずっと、ずっと好きだった。最初にヒナタちゃんのおうちに来たときから好きだったの」
「・・・そっか。そうだったのか」
「キモチワルイでしょ? でもいいの。アタシ、もうがまんしないことにしたの」
「アタシはアタシの好きを貫くから。だから」
ちゅうぅ~~ ちゅっ ちゅう・・・
「るんぷっ え? にゃ ヒナタ、ちゃん? んゅ」
ヒナタちゃんからの思いがけない熱いキスを受けて、気が動転しちゃう。
「・・・わたしだけかと思ってた」
「え?」
「のあが転校してきて、黒板の前であいさつしてたとき。あのときからわたしはのあのことが好きだったんだ」
「そ、そうだった、の・・・?」
「でも言えなかった。言えなかったんだ。お友だちでもいいから、のあの・・・。のあのそばに、いたかったんだ」
「ヒナタ、ちゃん・・・!」
「わたしに、ゆうきがなかった、から・・・。 のあぁぁ・・・ああぁぁ」
「ヒナタちゃん、大好き・・・っ!」
想いが通じて、お互いに涙するアタシたち。
もう言葉は必要なかった。
ただそこにいてくれるだけで、すべてが叶う気がした。
今までも「もしかしたらヒナタちゃんも・・・?」って思うことはあったけど、ずっと確信は持てないままだった。
去年の夏祭りではっきりとした形になったアタシの想いは、あの公園での幻想的なデートで昇華して────そして今。
山吹色と蜜柑色が、カーテンの隙間から差し込む琥珀色の夕日によってブレンドされて、お互いの境界がわからなくなるくらい解けて、溶けて、とけて────ひとつに交わっていった。
おまけ。
「あ・・・。おはよう、ノアちゃん」
「おはよー ミャーさん」
「大丈夫? 疲れは取れた?」
ノアとひなたは揃って一階のリビングまで降りてきた。
みやこはノアの姿を目にすると、心配していたのか弾かれるようにソファから立ち上がった。
ノアはそれに答えるように、むふーっとドヤ顔で大きなVサインを作って見せる。
「そっかぁ・・・。よかった」
「ミャーさんのおかげだよ? アリガト☆」
元気そうなノアを見てほっと一息つくみやこ。
そんなみやこを見て、ノアは疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
「ねぇ、ミャーさん。その・・・ヒナタちゃんに、なんてオネガイしたの?」
「んー? ああ、ノアちゃんいろいろ我慢していて弱っているみたいだから、やさしくしてあげなさいって言ったの」
「・・・えっ、それだけ?」
「うん。どうして?」
「え・・・いやー・・・ そっか。ヒナタちゃんたしかにとってもやさしかったなぁ。えへへ・・・」
「そっかぁ。よかったね」
「うんうん。これも全部ミャーさんのおかげだよー。本当にアリガト!」
「うん? どういたしまして?」
話の流れに「?」を頭に浮かべるみやこをよそに、それまでおとなしく二人のやりとりを聞いていたひなたがみやこに声をかけた。
「なーみゃー姉」
「なぁに? ひなた」
「好きな子ができたら、どうしたらいいんだ?」
「・・・・・・えっ?」
「ヒナタちゃん、それミャーさんに聞いちゃう!? ・・・あーでも、アタシも教えてほしいなーω」
「ちょ、ちょっとノアちゃんもなの?」
「なーみゃー姉ー」「ねーミャーさーん」と、自分の胸の高さくらいしかない子どもたちに囲まれて質問責めにあうみやこ。
もちろん、みやこには具体的な経験はない。しかしながら、妹たちに聞かれてしまうと「分からない」とは言えない様子。
「そ、それじゃあ、とっておきの秘訣を教えちゃおうかな!」
「わー どんなの?」
「さすがみゃー姉!」
「好きな子ができたら、その子の好きなお菓子食べさせればなんとかなる!」
「・・・えー?」
「おおー・・・」
「先にお菓子食べさせておいて、かわいいコスプレさせてカメラでいっぱい撮る! それで、写真集作るといいよ!」
「なんで先に食べさせるんだ?」
「それはあれだよ。逃げ道をなくすために!」
黒髪ロングのあの子を思い浮かべながら若干興奮気味に伝授したみやこだったが、受け取った二人の反応はいまひとつ。二人して顔を見合わせて目をぱちくりさせていた。
「みゃー姉、それってなんか違うと思う」
「えぇ!?」
「ミャーさん、好きな子にそんなことしちゃダメだよー?」
「ダメなの!?」
ノアとひなたはソファーから少し離れたテーブルに並んで着くと、むつまじく肩と肩を寄せ合いながら、ひそひそと相談し始めたのだった。
「みゃー姉やっぱダメそう。わたしたちで考えるか。のあはどうしたい?」
「そうだねぇω うーん、もっといっぱいぎゅってしたり、キスしたりしたい、かな・・・」
「おー、わたしもそれしたい。今からやってみるか?」
「ん・・・今はミャーさんもいるから。・・・今日の夜、アタシのベッドで・・・ネ?」
「あれぇー?」
ちゃんちゃん♪