DOSANの妻、という人。番外編 ミスリルな、人たち。(ホワイトデー編)
一悶着ありながらも、バレンタインデーに娘からプレゼントをもらった
「ミスリルを冠する者」のみなさん。
中でもミスリルの光刃さんは慣れていない為か、ホワイトデーのお返しを
何にすべきかで思い悩んでしまうのでした。
そんな時、見知らぬ女性から声をかけられます。
「あんたがミコちゃんかい?」
何の前触れもなく現れた彼女は、唐突に光刃さんを狩りに誘います。
光刃さんはその展開についていけず唖然とするのですが、
結局は彼女の修行にお付き合いすることに。
ホワイトデーのお返しを考えなければならない光刃さんと、
初登場ながらもその気迫と強引さでは他の追随を許さない謎の女性との物語。
一体どうなるのでしょうか…
■ あとがき ■
この物語を紡ぐ者 DOSAN
Page:1
「あの小娘の喜ぶ物といったら、一体何だ?」
ホワイトデー当日に、光刃さんは悩んでいました。
そこへ現れた、重装備に両手剣装備という謎のヒューマンメイジ女性。
自ら名乗ることなく、強引に光刃さんを狩りへと誘い出すのですが…
Page:2
オルマフムが住み着いている「棄てられた露営地」にて、彼女の修行が始まりました。
引き方も勉強と言いつつも、光刃さんは周囲のアクティブモンスターを引いてくるのでした。
いささか数が多く彼女も困惑していましたが
「仇敵オルマフム外人部隊、覚悟なさいっ!」
気合一閃。彼女の両手剣が炸裂し、ボロボロになりながらも殲滅に成功します。
一度戦ってすぐ座り込んでしまう不思議な女性。
さすがの光刃さんも話をしてみたくなったようです。
会話の中で明らかになる彼女の思い。
名はミスリルの救世主。早くビショップへと転職したいと切に願っていますが、
その理由はどうやら光刃さんにあるようです。
一方、光刃さんは自分の過去を他人に、それも見たこともない女性に口外した
娘への不快感を募らせてしまうのです。
Page:3
「あの小娘にも困ったものだ。人の弱みを簡単に口外するんだからな」
光刃さんのその言葉に、ミキさんの中で何かが弾けました。
娘がどんな思いで彼女に光刃さんのことを話したのか。
盟主として、そして光刃さんの過去を知るひとりの女の子として。
幼い自分には何もできないという悲しみと、それでも何かしてあげたいと思う心。
そのせめぎあいに耐えかねて、娘は思い悩んだ末に誰よりも命の尊さを知っている
救世主さんに光刃さんのことを託したのでした。
そう。彼女は娘にお願いをされて光刃さんの元へとやってきたのです。
その時の娘の痛々しい様子を思い出し、ついつい語気が荒くなってしまうミキさん。
彼女の剣幕に押され、ようやく「自分が及ぼした影響」について理解して落ち込む光刃さん。
そんな険悪なムードの中、どこからともなく娘が現れていつもの笑顔を振りまいていくのでした。
Page:4
「ミコちゃん、ありがとぉ」
グルーディン村に用事があるからついでに寄ったんだよぉ。
娘はそう言いますが、本当は二人が心配で様子を見に来たに違いありません。
爺やに会いに行くというのは場所的に使いやすい口実だったのだろうなと思います。
(爺やさんすみません^^;)
ホワイトデーのお返しをどうすればよいか。そう思い悩んでいた光刃さんの為に
「娘へのプレゼントとなるように」という思いから「修行に付き合ってもらっていた」ミキさん。
同性ということもあるのでしょうが、どうやら彼女は光刃さんより娘のことを理解しているようです。
「あの小娘にプレゼントを渡す時に謝ろうと思う」
「あんたねぇ。あれであの子は満足なのさな」
そう言われても理解できない光刃さん。
「物を贈る」という考えから離れられない彼は、突如現れたミカさんとミケさんに諭されます。
「娘さんへのプレゼントは、何も「物」である必要はないのですよ!」
ミキさんの修行をお手伝いしようとやってきた二人でしたが、しっかりと
今回の物語の「解説役」もこなしてくれました。
納得した光刃さんはプレゼント探しという肩の荷が降り、心に少し余裕ができたことで
快く修行のお手伝いができるようになったのでした。
やりすぎは禁物ですけども(苦笑)
DOSANです。最後までお読みいただき、ありがとうございます。
それでは今回初登場しましたミキさんこと「ミスリルの救世主」さんのご紹介をさせていただきます。
彼女の裏設定なども含めて簡単にまとめてみます。
-------------------------
彼女は幼い頃、グレシア王国によるアデン王国への侵攻の煽りを受け、故郷のバーニス村をオルマフム外人部隊により壊滅状態にされるという経験をしています。
(バーニス村は現在、「悲嘆の廃墟」と呼ばれています。時を同じくして廃墟となったロスタン村は「絶望の廃墟」として地図に残されています)
目の前で倒れゆく親友、そして父親…
彼女の父親はビショップでした。母親も同じくビショップを目指すクレリック。その母親は娘を夫に預け、負傷した村人の救助活動の為別行動を取りました。
ビショップだった父親も、出会う負傷者を救助しながら娘を護って逃げていました。広範囲の高位治癒魔法であるグレーターグループヒールの届かない範囲の負傷者をも救うべく、村の中を右往左往する父親。
しかし… さすがに負傷者の数が多すぎました。父親はその精神力が尽きるまで治療を続けましたが、その結果、父親は周囲のオルマフム達の憎悪(ヘイト)を一身に受けることになったのです。
娘と共に周囲を取り囲まれた父親。彼はオルマフム達の攻撃をすべてその身に受け、娘のことを護りました。そしてそのまま娘に覆いかぶさり、動かなくなりました。
こうしてオルマフムに襲われることを免れた彼女。父親が冷たくなっていくことを感じながら、怖くて、恐ろしくて、身動きひとつできませんでした。
どのくらい時間が経ったのでしょう。悲鳴も、オルマフムたちの足音も聞こえなくなり、グレシア軍の攻撃により炎上した家屋が爆ぜる音しか聞こえなくなった頃。彼女は父親の亡骸から這い出し、辺りを見回すのですが…目に入るのは無残な亡骸ばかりでした。
ビショップであった父親ですら生き残れなかったのです。クレリックだった母親がどうなったのかは、想像するまでもありませんでした。
バーニス村唯一の生き残りとなってしまった彼女。生きたくとも生きられなかった者達の無言の声に脅え、本来の名を伏せて生きていこうと誓ったのでした。
そんな日々の中、ふとしたことでDOSANの娘と出会い友達となりました。生い立ちを話し合う仲となり、忌まわしい自分の過去のことも娘に話して聞かせたのでした。娘は泣きながら聞いていましたが、彼女の話が終わると涙を拭い、こう言いました。
「おねえちゃん。バーニス村のみんなはおねえちゃんのことを怒ってないと思う。ううん。村のただ一人の生き残りとしてしあわせになってほしいって、きっと思ってるよぉ」
「しあわせ…に?」
「うん。おねえちゃんはどうしたらしあわせになれると思う?」
「そうさな…そんなこと考えたこともなかったねぇ。もう村のみんなを生き返らせるのは無理だろうからね…。あたしがすべきことは、消えそうになっている誰かの命を守ることかな。両親があたしにしてくれたことを、みんなにね。それが惨劇の村唯一の生き残りであるあたしの道だと思う」
「うんうん…。それじゃあ、わたしといっしょにいこ」
「え…? そういえば娘ちゃん。あんた血盟に入ってるってことは冒険者なんだねぇ」
「そぉそぉ。わたしが新しい名前をつけてあげるから、いっしょにいこ。ね^^」
こうして、ミスリルの救世主が誕生することとなったのでした。
-------------------------
以上がミスリルの救世主さんの設定です。
彼女だけでなく、「ミスリルを冠する者」のみなさんはそれぞれ上記のような独自の設定を持っています。それぞれ番外編を設けてご紹介する予定ですが、ここで彼らが「ミスリルを冠する者」となった契機について簡単に触れておきます。
守護神さんはオーク村の次期族長選抜制度自体が部族間の争いの種になっていることに心を痛め、その旧い因習を両親と族長の目の前で断罪しました。結果として流罪に近い形で追い出され、故郷とその名を捨てて放浪します。一族の頭脳と賞賛されるオーバーロード、そしてドミネーターとなるべく生まれた彼は、自らが護ろうとしていたものは何だったのかと思い悩み、何をするにも無気力になってしまいました。そんな折に、彼はとても仲睦まじげな親子――DOSANとその娘――と出会うのです。
空騎士さんは子どもながら優れた戦闘能力を持つ戦士でした。日頃から両親と仲の良くなかった彼女は、ある日嫌々ながらも両親と外出した際に殺人鬼(PK)に遭遇。彼女自身は何故か襲われませんでしたが、両親を目の前で殺められてしまいます。それだけでなく、その時両親の血が大量に目に入ったことで彼女は失明してしまうのです。彼女が最後に見た光景は両親の死。不仲とはいえショックの大きい彼女は事件のことを記憶の奥底に閉じ込めてしまいます。その後も犯人は捕まらず、次第に彼女は「親殺し」という冤罪を背負わされることに。若くして様々なことに絶望した彼女は、そんな折に娘と出会うのです。
賢者さんは実戦経験に乏しいながらも、その知識量からエルフ村の次期長老候補として期待されていました。しかし、ある日エルフ村の世界樹付近で負傷していたダークエルフを助けて匿ったことを罪に問われてしまうのです。「自分はこんな村の村長になる為に生まれてきたのか」と苦悩する彼は、エルフとダークエルフの対立は間違っていると村長に直訴。勘当される形となりましたが「自らの意志で」村の外へ出るのです。その後彼は娘と出会い、新たな名を与えられてミスリル・リンク隊員として行動を共にすることになりました。(ミスリルの賢者、という人。参照)
光刃さんは親友との修行中、誤って相手を殺めてしまいました。その場ですぐに蘇生し謝罪すればよかったのですが、彼はその場から逃げてしまいます。それだけでなく、その罪からも逃れる為にあろうことか自らの手でシーレンの元に旅立とうとしたのです。彼は成人式の祭壇で自らの喉元に短剣を突きつけ、自害しようとしました。しかしその時、駆け付けた娘に引き止められ、散々説教されて思い留まるのでした。その時の娘のことを「まるで母親のようだった」と回想する彼は、その娘により新たな名を与えられます。そして、去っていった親友に謝罪できる機会を伺いながら娘と行動を共にするのです。
みなそれぞれ、名を捨てるか伏せるかをせざるを得ない状況で彷徨っていた時にDOSANの娘と出会い、現在の名前を付与されて共に歩もうとしている方々です。特殊な事情を抱えていますが、ミスリルの一隊員として今後も一緒に楽しんで行ければと考えております。
あまりあとがきらしくなくなってしまいましたが…
ミキさんの「誰よりも命の尊さを知っている」という背景は、彼女の過去を知らなければご理解いただけないと思いまして紹介をさせていただきました。
「命を粗末にする人間を許せない」というのも、生きたくとも生きられなかった故郷の人たちと光刃さんの所為を照らし合わせた時に自然と出てきた言葉でしょう。ミキさん的には光刃さんは一緒にいたくないタイプの人だとは思いますが、それでも娘の思いを優先したいというミキさんのやさしさが今回の物語全体に伝播している… ように描けていれば本望です。
(この後、何かとミコさんの傍にいて世話を焼きたがるミキさんが、彼に対して淡い恋心を抱くようになるのはまた別のお話)
つまり…
「ミコさんを助ける為に」ホワイトデーのプレゼント準備を手伝ったのではなく、純粋に「娘の笑顔を見たいから。これ以上悲しませたくないから」という思いが根底にあり、娘の心配の種である光刃さんを「娘が心配しなくても大丈夫なように仕立て上げる」という目的がミキさんにはあったのですね。
4ページの物語を単独で読んで、上記のような裏の思いまで読み取れるように作れているかは微妙なところですが、何通りかの読み方ができるようにとその辺りまで考慮して製作しております。
DOSAN家が4名。「ミスリルを冠する者」たちが5名。その他「管理者」やリネージュ2の世界を舞台にする上で無視できない重要な公式NPCなどなど…
それぞれ異なる思いを持った多くの人物が登場するこの物語は、今後もそれぞれの個性を大切にしながら製作して参ります。引き続きのんびりお付き合いいただけますと幸いです。