DOSANの妻、という人。(番外編) 聖夜の、できごと。


こちらのページでは、4周年記念イベントのファンフィクション

(イラスト・コミック部門)に出展しました番外編を掲載いたします。

公式ページではすべてのページが繋がった形での展示となっておりましたが、

こちらでは1ページごとに解説・コメントを添えさせていただきます。


テオンに生きる、ある家族の物語。どうぞお楽しみください。




prologue

「この世界のどこかにいる、私の妻へ。」

DOSANのモノローグにて始まるこの物語は、空を見つめる娘に引き継がれ――

家族の紹介を経て、昨年のクリスマスへと移って参ります。





Page:2

「クリスマス」という特別な雰囲気だけで、嬉しさをおさえきれない娘。

はしゃぎすぎて転んでしまうのです。


DOSANは娘を抱き起こし、そして――

彼は、以前も同じように娘を抱き起こした経験があることを思い出すのです。


「あれは・・・ 10年ほど前のクリスマスの夜だったな・・・」





Page:3

10年前。あの時の娘のお願いは――


「ままにあいたい・・・な」


・・・普通の家族ならば、お願い事に上がることはないのでしょう。

しかし、娘にとってはサンタさんにお願いをしてでも叶えたいことだったのです。


「まま、どんなひとかなぁ」


娘のその言葉で、DOSANは否応なしに思い出すことになるのです。

「妻がどのような人であるか、自分には一切分からない」

という事実を――。





Page:4

DOSANは物思いにふけっています。


妻の記憶がないこと。

娘を育てる為に、冒険者であることをやめたこと。

ヒーラーではなくバッファーを志していたこと。

そして、自分と娘はまとめて捨てられてしまったのだろうということ――。


そんなDOSANを、爺やが呼び戻します。


クリスマスという特別な日に、爺やも数年前のことを思い出しているようです。

「孫娘」の記憶がない為に辻褄の合わないところもありますが、楽しい記憶のようです。


その頃娘は、寒空の下でケルティルと戯れていました。





Page:5

風が冷たくなってきています。自発的に家に帰ろうとする娘。しかし――

家族愛を感じさせる会話を聞いてしまい、急に母が恋しくなってしまうのです。


「まま・・・ どこにいるの・・・?」


母に会いたい。

その想いだけを胸に、娘は家とは反対方向へと駆け出してしまうのでした――。


一方、DOSANと爺やは引き続き話し込んでいます。


「どうじゃな。修行を再開してみないかの?」


娘のことを足枷のように感じているのなら、わしが引き取ろう。

爺やの好意は痛いほど伝わってくるのですが、今ひとつあの頃のような強い気持ちを

取り戻せないDOSAN。首を縦に振ることができずにいます。


その頃。幼い娘はあてどもなくさまよっていました。

まだ冒険者にもなっていない娘。凍てつく空気が張り詰めるエルモア地帯を走り回ることで

徐々に体力を奪われていくのです――。





Page:6

DOSANはようやく気付きました。娘が帰ってきていないということに――。

覚えたばかりのウィンドウォークをかけ、爺やと手分けして探すことに。

爺やにもウィンドウォークをかけようとします。しかし――


「わしには不要じゃ。お前さんのも置いておくからの・・・」


爺やが取り出したもの。それは高級移動速度向上ポーションでした。

自分の習得している魔法より効果の高いアイテムの使用。

それはバッファー失格の烙印を押されたに等しいことでした。

それでもDOSANは、自分自身に不甲斐無さを感じながらもポーションを使って走り出します。


「もっと力を引き出したい・・・!」


そう強く思うきっかけとなったできごとでした。


一方の娘。寒い中を走り回った為に意識が朦朧としてしまっています。

立ち止まって震える娘。再び歩き出そうと足を踏み出すのですが躓いて転んでしまいます。

クリスマスの日の、娘の願い。果たして叶うのでしょうか――。





Page:7

娘が意識を失おうとしていた、その時。

祝福魔法を詠唱する際に使用される魔法陣(魔法円)と良く似た光の紋様が編み出され、

娘と採掘場全体が光で包みこまれます。

その膨大な光と魔法力に、DOSANは振り返り――

そして、その光の中心に娘がいるのだと、直感で悟るのです。


凍死寸前だった娘は、その光の魔法により癒され、そして――

溢れる光の中で、母親に抱きしめてもらえたように感じるのでした。


「まま、あいたかった・・・ だきしめてくれて、ありがとぉ・・・」


幸福感を感じている娘。ふと気付くと誰かが自分を呼んでいます。


「娘・・・ お願いだから目を覚ましておくれ・・・」


そこには母親ではなく、見慣れた父親の姿がありました。





Page:8

母親に抱きしめられている感覚は、父親に抱きしめられている感覚に取って代わられ――

やはりあれは夢だったのかと思ってしまう娘なのでした。

しかし――


「夢ではないよ」


いつもはっきり言わない父。その父が断言していることで娘は驚いています。


「お母さんはきっとお前のことを見守ってくれている」

「いつかは必ず会える。そう信じるんだよ」


彼女に捨てられたと思いこんでいたDOSAN。

彼は娘が言うことを信じて今の奇跡を「彼女」が起こしたものだと考えることにしたのです。

自分と娘がこれからも歩んでいく為に。前向きに考えようと転換した瞬間でした。


その夜。娘が寝入ったあと、DOSANは爺やに伝えます。


「大切な人を守る為に。私はプロフィットになりたいのです!」


爺やから修行の再開を促されても、首を縦に振れなかったDOSAN。

気持ちの整理がついたのか、自らの強い意志に裏づけられた「修行再開宣言」をするのでした。


気が変わったら、とは言ったがその日のうちにとはのぉ・・・

爺やは少し面食らったようですが、それでもDOSANの為に門出の言葉を述べています。

長い間待っていた、DOSANの言葉。内心では嬉しかったのかもしれません。





epilogue

「補助魔法とは、その人が持つ力を引き出すためのメソッド(方法)である」

これは、DOSANの信条です。

後付けで力や機能を足すのではなく、元々持っている力を引き出している。

それが補助魔法だという考え方です。

ヒューマンメイジのバッファーとしては最高峰である、プロフィット・ハイエロファント。

これらを目指し、DOSANは旅立つのでした。

妻に会えるかもしれない、という淡い期待と共に――。


――そして、プロフィットとなった現在。

娘を抱きかかえたまま、まるで白日夢のような回想にひたっていたDOSAN。


「パパ! ぱぱ! ぱぁぱっ」


娘のシャウトによりようやく戻ってきます。

「ぱぱ」と呼ばれたせいなのか、はたまた確信犯的なものなのか。

ぎゅっと、力強く娘を抱きしめるのでした。

鼻をすってしまって痛がっている娘の鼻に、あごひげを押し付けながら・・・(苦笑)


そして――

今回の物語もいつものように、お互いへの感謝の言葉で締めくくられるのでした。

【いつもありがとう】









■ あとがき ■

DOSANです。

こうして1ページずつ区切って読みますと、ペース的にちょうど良いのですが・・・
すべてを繋げて読みますと、どうもペースが速いといいますかアップテンポな
物語展開になってしまったと思います。いつもは「間」を重視しているのですが・・・

それぞれのシーンで、あと2コマずつでも使えていたら「間」の取り方としてはもう少し
良かったのだろうと思いますが・・・縦サイズ13000ピクセルという制限があるので
仕方がありませんね(苦笑)
もう少し内容を削ってもよかったのですが、この時期にあったできごとやニュアンスは
盛り込んでおきたかったのでこういう形になりました。

今後も大きな流れを本編で取り扱い、そのときどきに起きたできごとを番外編として
切り出していきたいと思っております。
まだまだ先の長い物語となりますが、お付き合いいただけますと幸いです。

この物語を紡ぐ者 DOSAN





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