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■本作について

 本作は当ミスリルHPにあります「隊員専用BBS」におきまして、2020年3月23日に私DOSANが投稿したお話となります。

 ※リネージュ2内での同盟チャットを使用して織り成される天使たちの即興劇とは異なり、オフラインで推敲を重ねたごく普通の二次創作小説となります。

 既に公開済みの「わたてにんぐ☆オペラ」を執筆する前に、ある種実験的なお話として作成しました。個人的には初のわたてん!二次創作小説となります。

 ※お絵かきサイトであるpixivにも本作はDOSAN名義で投稿しております。 (pixivでのDOSANページ)






「ゆめと、うつつの、はざまで。」



 ■作品イメージタグ■
  #私に天使が舞い降りた! #わたてん! #姫坂乃愛 #星野ひなた #白咲花 #ひなノア #花ノア #一人称小説



「ミャ、ミャーさん、より…… アタシ、のほうが、好きだっ……て……っ!」

それは、天使の宿命。

「ノアはかわいいぞー。よーしよしよし」

 そう言って、ヒナタちゃんはアタシの両方のほっぺを下から持ち上げるようにムニムニしてくれる。くすぐったくてハズカシイから、誰かが見てるところではしないでホシイんだけど、ヒナタちゃんのそのすべすべとしたあったかいてのひらがとっても気持ちよくて、アタシはもう抵抗できなくなっちゃう。

「よかったね、ノア」

 ハナちゃんもそう言って、手元に置かれてるプリンには手を着けずにアタシのことをやさしい笑顔で見つめている。

「ノアは世界一かわいいぞー。よーしよし」
「そうだね、ひなた。ノアは世界一かわいいね」
「でっひょーっ!」

 ムニムニされながらだからうまく言えなかったけど、二人にはちゃんと伝わったみたい。
 「世界一かわいい」かぁ。ヒナタちゃんはたまにそう言ってくれるけど、ハナちゃんから言われたのはこれがハジメテかもしれない。えへへ、なんだか改まって言われるとさすがのアタシでもハズカシイなぁ
 ヒナタちゃんはそのやわらかそうなほっぺを赤くしながら、アタシの瞳をじっと見つめてやさしくムニムニし続けてくれてる。ハナちゃんもプリンそっちのけで、うらやましそうな顔でヒナタちゃんとアタシのことを見つめてくれている。うん、アタシ今みんなの視線ヒトリジメだね!

「はーい。二人の分も持ってきたよ。ひなたとノアちゃんのプリン、ここに置いておくからねー」

 ミャーさんはプリンを置くと、おもむろにカメラを構え出した。
 あー、またハナちゃんが主役の時間が始まっちゃうんだネ。でも、今日はもう二人にいっぱい見てもらえたし、満足カナー。うんうん。
 もうちょとだけこの時間が続けばいいのに。なんて思っていたら、案の定ミャーさんのシャッター音が響き始めちゃった。あーあ。

「いいねー、いいよノアちゃん! ムニムニされてるのサイコー! あ、気持ちいいところごめん、目線だけこっちにー! ヒューッ! カワイイ!」

 あれ? なんかミャーさんがいつもと違う?
 ううん。ミャーさんはいつも通りなんだけど。そっか、対象が違うんだ。ハナちゃんにしかしないようなキモイ撮影の仕方を、今はアタシにしてくれてるんだ。
 うんうん。そうそう。アタシもそんな風にミャーさんに注目されて、ハナちゃんにするような撮影をしてほしいって思ってたんだ。実際されるとやっぱりちょっと引くけど、でも、ミャーさんもやーっとアタシのカワイサに気づいてくれたんだね。嬉しいなぁ。

「ノア。ノアのこと、世界一好きだぞ。みゃー姉より、ノアが一番だからな」



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──   「ゆめと、うつつの、はざまで。」   ──
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 ヒナタちゃんがそう言ってくれる。それは、アタシがずっと聞きたかった言葉。
 ヒナタちゃん、アタシも。アタシも、ヒナタちゃんが大好きだよ!
 アタシはそれをヒナタちゃんに伝えようとしたけど、泣いてしまってうまく言葉が出せなくなっちゃった。

「────ア。 ────ノア」
「ヒ、ヒナ、タちゃ、ん アタシ、アタシも!」

 やっとのことで、たどたどしく声を出せた。でも、これ以上は言えなくって、アタシはヒナタちゃんにそのまま抱きついた。だって、こうでもしないとアタシの気持ち、伝えられないと思ったから。

「────おーい、ノアー。おきろー。みゃー姉がプリン持ってきてくれたぞー!」
「へぅ えっ?」
「おー、やっとおきたかノア。おはよう!」
「ヒ ヒナタ、ちゃん?」
「ほら、もう花は先に食べてるぞ。私たちも食べるぞー!」

 あれ? ちょっと待って、アタシなんでヒナタちゃんのおヒザを枕にしてるんだっけ?
 起きろって、アタシ寝てたの?

「あ おはよう、ヒナタちゃん
「おう! ノアもちょっとだけ元気になったみたいで、よかった。さっき顔真っ赤だったからなー、心配したぞ」

 ヒナタちゃんはそう言ってから、ミャーさんのプリンをスプーンですくうと大事そうにお口に運んでいた。
 そういえばさっき、ヒナタちゃんの隣にいられるのが嬉しくて、ちょっと顔を赤くしていたのを思い出した。そしたらヒナタちゃんに「ノア、熱あるのか?」なんて言われて、ピトッておでこくっつけられて、熱が上がってダウンしたような、ソンナ気がする。

「んー! やっぱみゃー姉のプリンは世界一だな!」
「んくっ んくっ」

 ハナちゃんはいつも通り、なんにも言わずに無心でプリンを食べ続けていた。その幸せそうな顔で、ミャーさんのプリンは今日もおいしいんだと分かる。分かるけど
 さっきまでのは、何だったの? ユメだったの? そんなぁ
 なんだか、涙が出てきそう。でもここで泣いたらヒナタちゃんに心配させちゃうから、ぐっとこらえる。こらえろアタシ。
 涙をこぼさないように顔をちょっと上に向けると、視界の端でハナちゃんがプリンを食べ終わって満足そうな笑顔になってるのが見えた。

ハナ、ちゃん」
「へ ノア?」
「ちょっと、来て。一緒に」
「え?」

 アタシはハナちゃんの返事を待ってられなくて、立ち上がりながらハナちゃんの腕を掴んでリビングからヒナタちゃんのお部屋までダッシュした。ダッシュしながら、自分でも不思議なくらいボロボロ泣いていた。引きずられてるハナちゃんにも、ヒナタちゃんミャーさんにももう見られていないって、安心したからかな。

 2階のヒナタちゃんのお部屋について、そのままドアを開けてハナちゃんを連れこんで、内側からカギをかける。そのままハナちゃんをヒナタちゃんのベッドに座らせて、アタシはハナちゃんの前に座りこむ。そこまでが限界だった。

「ハ、ハナちゃ うああぁぁぁん!」
「えぇ ノア、ちょっとどうしたの? 怖い夢でもみたの?」

 涙がボタボタと床に落ちるのが聞こえる。フローリングでよかったナー。カーペットだったら染み作っちゃうとこだったし。そんなことを考えられるくらい、アタシは一歩引いたところから今の様子を見ていた。
 ハナちゃんはそんなアタシを前にして最初はオロオロしてた。当然だよね、アタシがハナちゃんだったらきっとおんなじ風になるしネ。
 でも、ハナちゃんはそこから、アタシの頭を抱き寄せてお腹のところで抱きしめてくれた。ハナちゃんの服、よごしちゃうからでもそうしてくれるのが今はすごく嬉しかった。

ノア。いいよ」
「ハナ、ちゃ
「落ち着くまでそのままでいいよ」

 ハナちゃんはそれだけ言うと、何も言わなくなった。アタシの背中をゆっくり上下になでてくれて、だんだんと気持ちが落ち着いてくる。ハナちゃん、アリガト

「ぐすっ ごめんね、ハナちゃん。もう大丈夫」
「うん」
「あの、えっと、ゴメンネー? アタシ、なんか寝ぼけてたみたいでー」
「ノア
「アハハー



 ダメダメ! なにごまかそうとしてるの、アタシ! せめて巻き込んだハナちゃんには説明しなきゃ!

「その、さっきユメの中でね」
「うん」

「ヒナタちゃんがやさしくしてくれて、ハナちゃんもプリンそっちのけでアタシをホメテくれてね」
「うん」
「ミャーさんも、いつもハナちゃんにするみたいなキモイ撮影をアタシにしてくれたりして」
「うん」
「ヒナタちゃんが、アタシのこと、世界一好きだぞって、言ってくれて、ね
「うん」
「ミャ、ミャーさん、より アタシ、のほうが、好きだっっ!」

 ダメだ、また泣いちゃう。なんでアタシ
 そのとき、ハナちゃんがベッドから降りてきて、アタシの前に座り込んだ。そのままアタシを正面から抱きしめてくれて、ハナちゃんのやわらかいほっぺを首のところで感じられる姿勢になった。

「ノア」
「うん
「つらいね」
「うぅ

 もう言葉はいらなかった。ハナちゃんはまた泣きだしたアタシを、そのままにさせてくれた。
 そうだよ。よく考えたらオカシイことばっかりだったじゃない。いつものアタシなら、一発でユメだと気付けたはずなのに。
 でもアタシは、そのユメにひたっていたかったんだ。ユメでもいいから、みんなに注目されて、そして ヒナタちゃんに一番だって、一番好きだって言ってほしかったんだ、アタシ。

「ノア。二人のこと、間近で見てたから私にも分かるよ」
「ハナ、ちゃん
「なんとなくだけど、ね。ノアはひなたのことが好きなんでしょ?」
「う、うん。ってなんかハズカシイ
「ごめん。でも、私もそれは分かってるし、ノアたちのこと応援したいと思ってるから」
「ハナちゃん!」
「ひなたの刷り込みはてごわいけど、きっとなんとかなるよ。信じてみようよ」

 ハナちゃんはそう言うと、ちょっとだけ距離を空けてアタシのことを見つめてくれた。そのときのハナちゃんは、まるで天使のようで。ミャーさんがメロメロになるのも、分かるような気がした。

「アリガト、ハナちゃん。アタシ、なんだか頑張れそうな気がしてきたよ」
「うん。ノアはかわいいんだから、自信持って。自信いっぱいのノアが一番かわいいし」
「でっしょー! えへへ、アリガト☆」

 ハナちゃんも応援してくれるみたい。よかったぁ。
 そっか、アタシ不安だったんだネ。ひとりっきりで、どうにもならない壁にぶつかってもがいてる気がして。
 でも、ひとりっきりじゃなかった。ハナちゃんはアタシのこと分かってくれてたから。

 ヒナタちゃんのミャーさん好きは本当手ごわいけど、いつかアタシだけを見つめさせるんだから!
 悲しいユメだったけど、それはアタシのヒナタちゃんへの気持ちが本物だってことの裏返しだと思ってる。
 また今日みたいに泣きつくこともあると思うけど、これからもよろしくね、ハナちゃん!



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──   「ゆめと、うつつの、はざまで。」   完 ──
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【おまけ】


「みゃー姉、大変だー! ノアと花が部屋から出てこないんだー!」
「えー? なにがあったの?」
「わかんない。カギかかっちゃってて入れないし」
「えぇ。ちょっと、大丈夫なの?」
「それがなー。なんかさっき、ノア悲しそうだったんだ。泣いてるみたいだった」
「ちょっとひなた、ノアちゃんに何かしたんじゃないの?」
「そんなことないぞ! でも、ノアのことは世界で一番大好きだからな。気になるぞ」
ひなた。それ、しっかりノアちゃんに伝えてあげるんだよ?」
「お? おう! ノアが出てきたらな!」


ちゃんちゃん♪





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