「・・・ねぇ、花ちゃん?」
「ん・・・。んん・・・?」
「大丈夫?」
「・・・こより?」
「あ、トイレ行くでしょ? お姉さんがついていってあげるわ!」
─────────────────────────
── おおきなよりどころ ──
─────────────────────────
「・・・いや、別に行かないけど」
「遠慮しなくていいのよ! ほら、せっかくお姉さんが一緒に行ってあげるんだから」
「そう。いってらっしゃい」
温泉旅館の大部屋で、みんなで一緒に寝ているところ。
うす暗い部屋の中で時計に目をこらしてみると、今は午前2時みたい。私、なんでこんな真夜中に起こされたの?
声の主であるこよりを放っておいてもう一度寝ようと思ったけど、なんだかこよりがもじもじしているように見えて考えが変わった。ここでされても困るし。仕方ないついていってあげよう。
「はぁ・・・。それじゃ、行こうか」
「よかったぁ・・・じゃなくて、早く行きましょ!」
周りのみんなを踏まないように、うす暗い中で慎重に歩く。
こっちのお部屋──マタタビの間──は私たちので、お姉さんたちは別のお部屋──鈴音の間──にいるから、今ここにいない。
別に寂しくなんかないけど。うん。
パイルドライバーみたいな体勢になってるひなたとノア。またいちゃついてる。ノアはぴくりともしないけど、あとでザオラル・・・じゃなかった。エンジェルズリザレクションでもかけておこう。うん。
かのんは幸せそうな顔をして、おとなしく布団の中にいた。
私たちは音を立てないようにふすまを閉めると、廊下を歩きだす。怖がってるようにみえるこよりだけど、それでも私の前に立ってずんずんと進んでいくところはある意味頼もしい。
でも・・・。
「ねえ、こより」
「な、なに?」
「トイレ反対方向だよ」
「!?」
こよりは歩きながらでももじもじしてるように見える。もっと早く行けばいいのに。ギリギリまで我慢してたんだろうな。
まったく。世話が焼けるんだから。
「・・・早くしないと漏れちゃいそう。急いで行こう」
「そ、そうね! 行きましょ!」
それとなくこよりを後ろから誘導して、無事にトイレに到着。すぐにこよりは個室にかけこんでいた。よかった、間に合ったみたい。
とりあえず入口でこよりが出てくるのを待つ。ひとりになってみると、廊下の電灯のジジッ・・・という音がよく聞こえるくらい静まり返っていることに気がついた。廊下は明るいけど・・・。遠くの方のうす暗い曲がり角から、何か出てきたりしたらやだな・・・。
そういえば今は「うしみつどき」っていう時間帯。なにか怖いものが出てくるかもしれない、魔の時間帯。うぅ、お姉さん起こして3人で来ればよかった・・・。
なんて考えていたらこよりが戻ってきた。ちょっとほっとした。
「すっきりしたー。花ちゃんはしないの?」
「ん。じゃあ、ちょっとしてくる」
「あ、こよりお姉さんがトイレ手伝ってあげよっか!」
「お姉さんみたいなこと言い出さないで」
「え? 今のお姉さんっぽかった?」
「限りなくお姉さんっぽいからやめて」
はぁ・・・。
とりあえず個室に入ってトイレを済ませる。
手を洗ってこよりのところに戻って、マタタビの間に向かって移動する。
さっき感じた怖さはもうなかった。こよりが一緒だからかな?
手はかかるけど、確かに堂々としているし。でも、誕生日は数日しか変わらないんだから、お姉さんって感じでもない。同級生だから当たり前なんだけど。
放っておけないというか、放っておくと危ないし、でもなぜかこういうときは頼もしく感じるこより。ちょっとだけ、かのんの気持ちが分かるような気がした。
かのんかぁ・・・。
「こより」
「花ちゃん?」
「どうして私だったの? 隣にかのんいたでしょ」
「だって、かの、幸せそうに寝てるんだもん。起こすのかわいそうでしょ!」
「私はかわいそうじゃないの?」
こよりは前を行く足を止めてこっちに振り返ると、こんなことを言い出した。
「んー、花ちゃん寝苦しそうだったから。っていうか、ちょっと花ちゃん泣いてたから」
「・・・え?」
「お姉さん、って言いながら花ちゃん泣いてたのよ?」
「・・・なんで・・・」
「お姉さんがいなくてさびしかったんでしょ? 違うの?」
こよりはそれだけ言うと、私の手を引いて進んでいく。
ちょっと・・・。まさかこよりにお姉さんとのことを言われるとは思ってなかった。お姉さんいなくて寂しいなんて、そんな風に見られてるのかな。
というか、お姉さんって言いながら泣いてたって・・・。ちょっと私、どういうことなの?
「いい? かのを起こさないように、静かに入るのよ」
「・・・分かってるってば」
マタタビの間に戻ってきた私は、こよりにおやすみを言う余裕もなくお布団に飛びこんでまくらに顔を押しつけた。
恥ずかしい・・・。今は誰にも顔を見せられない。こよりにまで知られてたなんて・・・。
「花ちゃん」
「・・・こより?」
「そんなにお姉さんが必要なら、こよりお姉さんが添い寝してあげるわ!」
「間に合ってます」
「!?」
おしまい。
─────────────────────────
── 愛情を込める、ということ。 ──
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■作品イメージタグ■
#私に天使が舞い降りた! #わたてん! #白咲花 #小之森夏音 #種村小依 #花かの #よりかの #バレンタインデー #チョコレート #テンパリング
■作品文体■
一人称小説
■お題■
~ 今回は省略 ~
「二人はそろそろ誕生日だね」
「わー 覚えててくれたんだー。ありがとう」
「二人とも誕生日近いから」
─────────────────────────
── 愛情を込める、ということ。 ──
─────────────────────────
私の誕生日が3月7日で、かのんが2月28日で、こよりが2月20日。私たちは誕生日が半月くらいの間にまとまっていて、なんとなくそれだけで親近感がある。
今日はお姉さんの家でチョコ作りをする日、ということでみんな集合して手渡しをするチョコを作っている。
かのんもみんなと一緒にチョコを作っているけど、手際がいいというか、ずっと見ていたくなるような動き方をしていた。お姉さんほどじゃないけど。
「花ちゃんは作らないの?」
「ん。私はもう作り終わって冷蔵庫に入れてきたから」
「そうなんだー。花ちゃん早いねー」
なんて話をしながらも、かのんの手は止まらず動いたまま。おしゃべりしながら手を動かせるなんて、いっぱい練習してるんだろうな・・・と感心する。
私は溶かしたチョコを型に入れて冷蔵庫に入れただけだから、あっという間にできちゃった。かのんはこよりのチョコを手伝っていたから、それもあって時間かかっているんだろうなって思った。
でも、それだけじゃないみたい。かのんの作り方を見ていると、私が考えもしなかったことをいろいろやっていたから。
チョコを溶かしたところまでは同じだけど、かのんはチョコレートのボウルに温度計を差し込んでいる。チョコの温度を測ってるみたいだけど・・・なんでそんなことをしているんだろう?
「あ、花ちゃん。ちょっとそこのナッツ取ってもらってもいいかなぁ?」
「ん。ふぉれね」
「ありがとー、花ちゃん」
思わず口に入れてしまっていた手元のナッツ類を、器ごとかのんに手渡す。
かのんはその中からアーモンドを選んでビニール袋に入れて、すりこぎの棒でコンコンと軽く砕き始める。かのんはチョコの温度計をじっと見ながらコンコンしていたけど、しばらくすると棒とアーモンドから手を離してチョコの方に移動した。
かのんはいつも通りの穏やかな顔をしているけど、その目は真剣そのものだった。見ている私まで思わず背筋が伸びるような、そんな雰囲気。
チョコの入ったボウルをあったかいお湯の入った大きめのボウルに浮かべて、混ぜながらずっと温度計を見つめている。そんなに温度が大事なのかな? ただ溶ければいいと思っていたけど、そうじゃないのかな。
「・・・うん。これでいいかなー」
かのんは一言だけつぶやくと、お湯からチョコの入ったボウルを引きあげて布巾の上に置く。そして、砕いていたアーモンドをいくつかの型にポンポンと置いていって、そこにチョコを流し込んでいた。
そこからは私と同じで、トレーに並べたチョコたちを冷蔵庫に入れこんでいた。
「ふー。これでいいかなー」
「かのん、おつかれさま」
「花ちゃんずっと見てたね。楽しかった?」
「うん。なんだかずっと見ていたくなっちゃって」
「そうなんだー」
気になっていたことがあって、かのんに聞いてみることにした。
「ねえ、かのん」
「なぁに? 花ちゃん」
「その。前にかのんが、愛情をこめて作るとおいしくなるって言ってたけど」
「そうだよー」
「あれって、どういうことなんだろう。じっと見ていたけど分からなくて」
「それで見てたんだねー」
かのんは「うーん」と唸っていたけど、まとまったのか私の方を見てくれた。
「お料理って、まず科学なんだよー」
「・・・へっ? カガク?」
「うん。化学って言ったほうがいいのかなー」
「どういうことなの?」
「お料理にはレシピってあるでしょ? あれは設計図で、手順書なんだー」
「うん。そうだよね」
「書いてある時間とか、分量とか、そういうのをね。しっかり守って作らないとおいしくできないんだよー」
「うん。そうみたいだけど・・・」
よく分からなくなってきた。「愛情をこめて作る」ってことと、「決められた通りに作る」ってことは同じことなのかな。
私が頭にハテナを浮かべていると、かのんが続けて教えてくれた。
「えっと、ごめんね。レシピ通りに作るっていうのは、まず前提なんだー」
「前提・・・。そこから先もあるってこと?」
「そう。花ちゃんも、おねぇさんのお菓子で感動するでしょ?」
「うん」
「おねぇさんのお菓子は、きっちりレシピ通りに作れるようになって、そこから先の積み重ねがすごいってことなんだよー」
「レシピ通りの、その先・・・」
かのんはにこにこしながら教えてくれてるけど、あんまり実感がわかない。
お姉さんの作るお菓子は確かに世界で一番おいしいと思うけど、お姉さんがそんなに努力してるようには見えないし。
私が考え込んでいると、かのんが助け舟を出してくれた。
「例えばね、うーん。花ちゃんはプリン大好きでしょ?」
「うん」
「でも、おねぇさんのプリンって、他のとはぜんぜん違うでしょ?」
「うん」
「食べた感じ、どう違うかなぁ?」
「えっと・・・」
お姉さんのプリン。目の前に置かれるだけでよだれがすごいことになっちゃう、お姉さんのプリン。
他のプリンも確かにおいしいけど、お姉さんのは別格。どう違うのかって言われたら、そうだな・・・。
べたっとはしてないのに、お口に入れると舌にまとわりつくような濃厚さがあって。甘さは意外とひかえめなんだけど、バニラの香りとカラメルの香ばしさがお口から鼻の方に抜けていくのが快感で。十分に味わったあとは、つるっと、すっと喉に残らない感じではかなく消えていくの。
ああ、思い出しただけでよだれ出ちゃう。
「・・・ふふっ」
「じゅるっ かのん・・・?」
「やっぱり、おねぇさんすごいなぁ。思い出しただけで花ちゃんをそこまで幸せそうな顔にさせちゃうんだもん」
「え・・・。そんな顔してた?」
「うん。みとれちゃうくらい幸せそうだったよー」
かのんに改めて言われて、ちょっと恥ずかしい。
これも全部、お姉さんのせい。まったく・・・。なんてね。
「花ちゃんにとって最高のプリンがどういうものなのか、おねぇさんはよく分かっていて」
「・・・そうなの?」
「うん。それでね、おねぇさんはそのイメージ通りのものを作れるってことなんだよー」
「お姉さん・・・」
かのんが言うことが本当なら。
お姉さんは私のことをよく理解してるってことになる。私から「こういうプリンが好きです」なんて、今まで言ったことないのに、どうして・・・。
「おねぇさんはね、花ちゃんがプリン食べてる時は花ちゃんのことじっと見てるでしょ?」
「・・・そうだね」
「花ちゃんの反応を見て、次はもっと花ちゃんがおいしくて笑顔になれるプリンにしようって参考にしてるんだよー」
「・・・そうなの?」
「あとたぶん、普段からおねぇさんは花ちゃんのことをずーっと考えてるはずだよー」
「そうなんだ。かのんもこよりのこと、いつも考えてるの?」
かのんはきっと、自分の経験から教えてくれてるんだろうな。そう思ってかのんのことを見つめてみると────。
今までに見たことがないくらい、真っ赤になっていた。どうしたの?
「そ」
「・・・そ?」
「そ、そう、なんだけど、ね・・・。あはは・・・」
「うん」
「と、とにかく、おねぇさんがそこまでするってことは、そういうことなんだよー」
「そういうこと・・・?」
どういうことなんだろう。「愛情をこめて作る」ってことかな。
ということは・・・。お姉さんは私のために愛情をこめて作ってくれてるってことなんだよね。
それってつまり、お姉さんは私のことを愛してるってことで・・・。
・・・お姉さんが、私のことを、愛し、て・・・・・・。
えっ・・・? それって・・・?
「・・・か・・・、かのん・・・」
「な・・・、なぁに? 花ちゃん」
「かのんも、こよりのこと、愛して、るんだね・・・!」
「っ!!!」
私は真っ赤になってしまって、何も言えそうになかったけど。
教えてくれたかのんの為にどうしても伝えたくて、頑張って伝えてみた。そしたら・・・。
かのんは目をぐるぐるさせたかと思ったら、その場にうずくまって両手で顔を隠しちゃった。
ちょっとだけ見えてるほっぺが、真っ赤になってるのが見える。
かのんも私と同じで恥ずかしいみたい。ごめん、かのん・・・。
「かの? どうしたの? 具合悪いの?」
「こより・・・」
「花ちゃん。かの、どうしたの? なにか悪いものでも食べちゃった?」
うずくまってるかのんを心配して、一番最初に来たのがこよりだった。
でも、こよりじゃないんだから、拾い食いとかしないよ。
かのんがこうなってる理由、ちゃんとこよりに伝えておかないといけないよね。
うん。頑張れ、私。
「あのね、こより」
「花ちゃん?」
「かのんは、こよりのことが大好きで、いつも見つめているの。それはこよりのことを愛しているから、みたいで────」
「花ちゃーーーーーーーーーーーーんっ!!」
おしまい。
───────────────────────────
── いちばん近い、あの子のために。 ──
───────────────────────────
■作品イメージタグ■
#私に天使が舞い降りた! #わたてん! #種村小依 #小之森夏音 #よりかの #バレンタインデー #お姫様だっこ #ひざまくら
■作品文体■
一人称小説
■お題■
~ 今回は省略 ~
───────────────────────────
── いちばん近い、あの子のために。 ──
───────────────────────────
かのは大きな声を出したかと思ったら、ぺたんと床に座りこんじゃったわ。
両手で顔も隠してるし。もう、何をそんなに恥ずかしがってるのよ。
私はかのの正面に座りこんでかのをやさしく抱きしめる。
かのはびくっとしていたけど、私だと気づいて目を合わせてくれたの。
「かの」
「・・・より、ちゃん・・・」
「しっかりしなさい! ほら、立って」
「う、うん・・・」
手を引っ張って立たせる。かのは顔をそむけているけど、目だけは私に合わせてくれている。
その瞳には、確信の持てない期待がゆらゆらしているように見えて。
「私も、かののこと、大好きよ!」
「よ・・・より、ちゃん・・・!」
「いつもおいしいお菓子ありがと。かののお菓子が世界で一番よ!」
「より、ちゃん・・・。ぐすっ」
「この気持ち、なんだか分からないけど。でもきっと、私もかのと同じ気持ちだと思う」
「・・・!」
「だから、心配しないでいいのよ。かのはいつだって私の一番で、大好きで、世界で一番大切な人なんだから!」
「よ、より・・・ うわーん!」
ああ、もう。結局、私がかのを泣かせちゃった。かの、ごめん・・・。
私も泣きそうになるけど、我慢しなきゃ。かのが泣いてる時に私は泣けないの。昔からそうだったから。
泣いてるかのを、正面から抱き締めて。濡れているほっぺに、ほっぺをくっつけてすりすりする。
かのが泣きやんでくれますように。かのが落ち着いてくれますように。
神さまにお願いをしながら、かのの背中をやさしくトントンする。
かのも私の背中に手をまわしてくれた。ちょっと落ち着いてきたみたいね。
でも、かのはすっごくドキドキしてる。ぴったりくっついてるから分かるけど、全速力で走った時みたいになってる。
「かの、大丈夫なの? すごくドキドキしてるわよ?」
「う、うん・・・。大丈夫だよ?」
「熱でもあるんじゃないの?」
こつん
おでこをかののおでこにくっつける。やっぱり、すごくおでこも熱くなってるわ。
「よっと」
「きゃっ よ、よりちゃん?」
「いいから私にまかせなさい!」
かのをお姫様だっこして、近くのソファまで運ぶ。あとちょっとってところで────。
こけっ
「あっ」
「きゃっ」
ぼふーん
かのと一緒にソファに転がり込む。
かのにケガさせちゃったかも! 大丈夫?
「か、かの! 大丈夫?」
「う、うん・・・。よりちゃんは?」
「このくらい大丈夫よ!」
かのの足を伸ばして、おなかに私の上着をかけて。
少し休んでもらわないとね。
「じゃあ、かの。ゆっくり寝てなさい」
「あ・・・ よりちゃん」
「かの?」
「その・・・。ひざまくら、しててほしい、な・・・」
「しょうがないわね。こよりお姉さんがしてあげるわ」
「ありがとー、よりちゃん」
さっきから真剣にチョコ作ってたし、大きな声も出してたし。きっと疲れちゃったのね。かの。
ずっと顔が赤いままで心配だけど、かのは幸せそうな顔をしているし、具合が悪い感じでもないからしばらく様子みましょ。
こうして、私たちはしばらくの間ふたりきりの時間を過ごしたの。たまにはこんなバレンタインデーもいいわね!
おしまい!
─────────────────────────
── それは繊細な飴細工のように ──
─────────────────────────
■作品イメージタグ■
#私に天使が舞い降りた! #わたてん! #白咲花 #姫坂乃愛 #花ノア #温泉旅行 #露天風呂 #月
■作品文体■
一人称小説
■お題■
~ 今回は省略 ~
「ノア」
「んー? なぁに? ハナちゃん」
「ひなたのどんなところが好きなの?」
─────────────────────────
── それは繊細な飴細工のように ──
─────────────────────────
みんなと温泉旅行に行くことになって、今は初日の夜。みんなでおいしいお夕飯をいただいて、あとは寝るだけって時間帯。
私はふと、夜の露店風呂に入ってみたくなって、ノアを誘って入りに来た。
どうしてノアだったのか、どうしてお姉さんじゃなかったのか、自分でもよく分からないけど。
体を清めてからノアと一緒にお湯につかって、まんまるのお月さまを見上げてみる。お姉さんの作るクリームブリュレみたい。きっと甘くておいしい。
なんて考えながらあったかいお湯を堪能していたら、二人きりというのもあってさっきみたいなことを聞きたくなっちゃった。
「・・・ハナちゃん」
「うん」
「それを聞くってことはー、もちろんハナちゃんにも聞き返していいんだよネ?」
ノアはもっと慌てふためいているかと思ったら、そうでもなくて。
お月さまに照らされて、なんだか大人っぽい顔で私のことを見つめてくる。
「別に、いいけど・・・」
「にゅふふーんω じゃあ、教えてあげる☆」
もともと、透き通るように真っ白な肌のノア。今は青白いお月さまに照らされていて、まるで陶器のよう。
向かい合って座っていたけど、ノアは私の左隣に移動してきて、肩同士をくっつけて寄り添いあうような状態になった。
なんだろう? って思ってノアに目線を送るけど、ノアはお月さまをじっと見つめて私のことは見ようとしなかった。
「・・・ヒナタちゃんはね、アタシが落ち込んでるとなぐさめてくれるんだ」
「うん」
「誰もアタシを見てくれない時も、ヒナタちゃんだけは見つめてくれるの」
「うん」
「胸の一番奥まで、するっと届くような言葉を、なんでもない感じでかけてくれるんだ」
「うん」
「そういうのを重ねていたら、いつの間にかヒナタちゃんのそばにいたいって思うようになってね」
「うん」
「ハナちゃんの聞きたかったことはこのくらいかなー☆」
ノアは特徴的な前髪をゆらゆらさせながら私に教えてくれた。
その間、ずっとお月さまを見つめ続けていたノア。その横顔は、恋する乙女って言葉がぴったりなような気がした。
「だからネ、アタシ・・・ 好きなんだ。ヒナタちゃんのこと」
片想いなんだけどネ。なんて。ちょっと寂しげなノア。
そのノアが流し目でこっちを見て、目が合った。
ドキッとした。
ノアは美形だから、というのもあるけど、それだけじゃない気がした。
前にかのんが言ってたっけ。ノアは神さまの使い──天使──みたいだと。
目の前にいるノアは、確かにいつものノアなんだけど、かのんの言ってた意味も分かるような気がした。
人を超えた、見る者をとりこにする「魅了」の力。私も引きこまれそうになって────。
「じゃあ、次はハナちゃんの番ネ☆」
「────あ。うん」
「ハナちゃんは、ミャーさんのどこがそんなにいいの?」
暗示が解けたような。
さっきまでの崇高な雰囲気はどこかに行ってしまって、悪だくみしてるようなニマーっとした顔のノアがそこにいた。
「どこって・・・。別に私はそんなんじゃ」
「えー? ハナちゃんずるーい! アタシ正直に教えたのにー」
「う・・・」
はぐらかそうとしたけど。ニマニマしてるノアの瞳は笑ってなかったから、私も諦めて素直に伝えることにした。
「・・・よく、分からないの」
「うん?」
「お姉さんに感じるこの気持ちが、なんなのか分からないの」
ノアはまた私に肩をくっつけると、私と一緒にお月さまを見つめる。
そっか。私、ノアに話を聞いてほしかったんだ。お姉さんのこと。
ひなたでもなく、お姉さんでもなく、ノアを誘ったのはそういうことなんだと分かった。
「・・・お姉さん、いつも私にだけ変な服着せてくるし」
「うんうん」
「おいしいお菓子が待ってるから断れなくて、気持ち悪い撮影されるし・・・」
「うんうん」
「なにしてるんだろ、私・・・。かのんにも、「それたぶん、やってちゃダメなやつじゃないかなぁ」って言われたことあるし」
「うんうん」
「私だけのアルバム作ってるって言ってたし。私、どうしたらいいのかな・・・」
「ハナちゃん」
呼ばれて。
ノアのほうを見てみる。ノアはお月さまを見つめたままだったけど、ひとことだけ呟いた。
「ミャーさんのこと、好き?」
言われて、私は考えをまとめるためにお月さまを見つめる。
お姉さんのことは嫌いじゃない。
お姉さんのまっすぐなところは私も好きだし、おしゃれすればきれいだし、人見知りも治そうと頑張ってるし。
お姉さん、お姉さん・・・。
お姉さんのことを考えると、さっきみたいなイヤなところが最初に出てくるんだけど、そのあと胸があったかくなって、自然と笑顔になる。なんでだろう・・・。
あ、そういえば。
お姉さんにこんなこと言われたことあったな。
「・・・私の為に、一生お菓子を作ってくれるって、お姉さん言ってた・・・」
「・・・ミャーさん、やるなぁ。それで、ハナちゃんはなんてお返事したの?」
「はい。よろしくお願いします。って」
お月さまを見つめていたノアは満足そうな顔をしながら目を閉じると、ざばっと立ちあがった。
「あー、あっつーい! そろそろ出よっかー」
「うん。そだね」
「あ、それからネ。ハナちゃん」
「ん?」
「ミャーさんのこと、なんにも心配いらないと思う。ハナちゃんはあるがままでいればダイジョウブ☆」
「あるがまま・・・」
「自分が感じるまま、あろうとするままってこと。そうすればきっとうまくいくから☆」
「・・・別に私は、お姉さんとうまくいきたいなんて」
「あー、いいお湯だったー! 今日はぜーったいぐっすりだよー」
ノアは私の言うことなんてどこ吹く風で、さっさと更衣室に行ってしまう。
私はひとり取り残されて、まんまるお月さまを見上げてみる。まるでノアみたいに、きれいなお月さまを。
ノアは一番近くでいつも私とお姉さんのことを見てくれている。そのノアが「あるがままでいい」って言ってくれたんだ。
なんだか、それだけでほっとする。心も体もあたたまった感じ。
そっか、私、不安だったんだ。今のままじゃダメなんじゃないかって、ずっと不安だったんだ。
「・・・ノア。ありがとう」
ぽつりとつぶやいて、私もノアのいる更衣室まで歩いていった。
おしまい。
【 エンジェリック☆インタビュー 】
今回の公演会にご参加くださいました天使たちに、【エンジェリック☆アラカルト】について自由気ままに語っていただきました。
インタビューイー:
白咲花さん
種村小依さん
小之森夏音さん
姫坂乃愛さん
星野ひなたさん
星野みやこさん
インタビューアー:DOSAN
・・・それじゃあ、みんな。 せーのっ
お父さん、おかえりなさい。
わたてん!
アタシたち、わたてん☆5 ですっ☆
かの!
よりちゃーん^^
誰ひとりとして合ってない>ミ
んもー、みんなー! ちゃんと合わせなきゃだよー?
・・・それで、お姉さんは何を言わせたかったんですか?
私が「せーのっ」って言ったら、そりゃ「一迅社」でしょー。
あー、コレのネタだねー☆ →
コレ
よーし! みんな、もう一度だ!
いくよー? それじゃあ、せーのっ
\一迅社/
\一輪車!/
\一迅社!/
\芳文社!/
\一迅社/
・・・わ、わぁ~~~~(パチパチパチ)>ミ
どうしたー? みゃー姉。なんで泣いてるんだー? よしよし
アタシたちに話せることなら話してみて? ミャーさん
そんなことより、今日のお菓子はなんですか?
──ははは……(苦笑) 本日はお忙しいところ、みなさまご参集いただきましてありがとうございます。
■今回の公演スタイルとなった経緯について
──それでは早速入らせていただきます。毎回工夫を凝らしているようですが、特に今回はこれまでにない形のイベントとなりました。その経緯について教えていただけますでしょうか。
これは・・・ ノアかな?
はいはーい☆ じゃあアタシからね。一番最初にあったのは、「サイコロを使ってお話を作る」ってとこだったの。ひだまりスケッチのミヤさん(202号室の宮子さん)がやってるような「出た目に合わせてスムーズトーク! 宮子特製トークサイコロ」っぽいものをやってみたくて。ミヤさんのだと、サイコロのそれぞれの面に「今だから言えること」とか「できたてのカレーvs一晩寝かせたカレー」みたいなのが書かれてて、それに沿ってお話するっていうものなんだけど、こっちの世界のサイコロにはそういうのつけられないから悩んだんだー。
それぞれの数字に、「1:今だから言えること」とかつけていく案もあったよね。
うんうんー。でも、説明するの大変になっちゃうのと、途中で何度か「何番は何」っていうのをチャット欄に入れていくのも大変だなーっていうのもあって。そんなとき、マツモトさんのところが今回参加できそうにないって連絡があって、そうなると6人だなーって。そこから「じゃあ、1~6の目にアタシたちを割り当てたらどうかな」「誰かをベースにして、その人と振った目の人でお話をその場で作るのはどうかな」「年明け初だし、ここはメインヒロインのハナちゃんにベースになってもらおう☆」「あ、そういえば即興ニガテって言ってたし。よーし、これでやっちゃおう☆」っていうカンジで決まったんだよー。
私がメインヒロインって・・・。みんなそれぞれかわいいでしょ。それこそノアでいいじゃない。
分かってないなーハナちゃん。わたてん! ってお話はミャーさんが主人公で、そのお相手になるハナちゃんがメインヒロインなんだよー?
いつからそんなことに・・・。
──まぁまぁ。あまりメタに振るのもどうかと思いますので、そのくらいで。なるほど、乃愛さんの発案だったとのことで、花さんの苦手意識を克服する為のお手伝いをしようというお考えからだったのですね。
そうそうー! さすがパパ、分かってるー☆
──そこから昇華して、「エンジェリック☆アラカルト」として様々な思いを込めてのイベントとなったようですね。
そうなんだよー。メールでご感想もらったり、パパお手製のチャットログ見させてもらったり。今までの公演会に参加してくれたみんなの反応やフィードバックを取り入れてネ。こんな風にしたほうがいいのかなーって。
・即興ならどうしても長編は作りにくいから、フォーさんとか長いお話だと疲れちゃう人の負担を減らすために「完全即興」にしてみよー☆
・一本を短時間にすることで、時間の許す限り保護者さまからのリクエストに応えることができちゃう☆
・その結果、アラカルト形式でいろんなお話を少しずつ「つまみ食い」できちゃう☆
──準備段階で既に「すべては観客に楽しんでもらう為に」という天使の御心を感じます。ただ、これを実現するには演者のみなさまに多大な負担がかかることは容易に想像できたと思います。
確かに、今回は「台本禁止令」がノアから出ていたので。いつものように「事前にリクエストのあったお相手と、こういうお話で楽しんでもらおう」といったお話の流れを考えておくことができなくて、本当に開始直前の相談と、やりながらの血盟チャットでのタイミング合わせだけがすべてでした。そういうぶっつけ本番のお話作りになることは覚悟して臨みました。
うんうん。でもネ、台本を用意すること自体が悪い事じゃないんだよ? でも、ハナちゃんマジメだから、作り始めるとトコトン作りこんじゃうでしょ?
まじめかどうか分からないけど、うん。例えば今回のノアとの「それは繊細な飴細工のように」のお話だと、事前に作れてたら「その後」も作ってたと思う。
でっしょー? 今回のところが「01」で、アタシからのアドバイスを元にしてミャーさんとどう接するか。までを「03」くらいまでで描いて、その結果のハッピーエンドを「05」くらいまでかけて作りそうだもんネ☆
う・・・。章立てまで見抜かれてる・・・。
にゅふふーんω いつもはそういうガッツリしたお話で、それはそれですごく楽しいお話なんだけど、今回は「ライトなオードブルみたいなお話をいくつか楽しんでほしかった」ってことなんだよー。
■それぞれの物語に込めた思いについて
──ユニークだなと思いましたのが、即興であっても必ず最初にタイトルコールをされている点です。これは意図的なものなのでしょうか。
よく気づきましたね。実はこれも相談の一部というか、どういうお話にしたいのかをひとことで言うとこんなお話なの。というのをみんなに知らせる効果があるんです。
私は「こんな気持ちをこめてつくるからね」って宣言したつもりだったわ!
おー、それで「いちばん好きな、あの子のために。」だったんだなー。かのんを一番に考えてたし、ぜんぶかのんのために動いてたもんなーこより。
ヒナタちゃん、「いちばん近い」だよー? でもそういうあまーいお話になりそうだなーっていうのは確かにタイトルで分かるもんネ。
えへへ・・・ よりちゃん、嬉しかったよ? ありがとう^^
──それでは、それぞれのお話に込めた思いを順に教えていただけますでしょうか。
最初のこよりとのお話では、そそっかしいけど頼りになるこよりのかっこいい面を出してもらおうと思いました。タイトルの「おおきなよりどころ」も、かのんなら分かると思うけどそういう意味でつけました。
かの?
うんうん。花ちゃんの考えてること、タイトルで分かったよー。よりちゃんって、「ちいさなよりどころ」って書いて「小依」なんだけど、花ちゃんは「そうじゃなくてちゃんと頼りになるんだ」ってところを出そうとしてくれてるんだなーって。そこがすごく嬉しかったんだー。
うん。かのんが「こよりちゃん」じゃなくて「よりちゃん」って呼ぶのも、もしかしたら「小さい」ってところを気にしてるのかなって思ったの。もちろん幼いときからの呼び方だから、「こ」の発音がしづらかっただけかもしれないけどね。
わー そこまで考えてくれたんだー。そうそう。「こ」が言いづらくて「よりちゃん」だったんだけど、大きくなった今でも「私だけの特別な呼び方」だから大切にしてるんだよー。もちろん、よりちゃんはとっても頼りになるから確かに「おおきなよりどころ」だねー^^
こよりは一番背が小さいけどな。でもそこもかわいいところだと思うぞ!
ヒナタちゃん!?
──ログを拝見しまして驚いたのは、冒頭で小依さんが「大丈夫?」とお声掛けしている点です。最後まで筋道を見通せていたように思えます。
かのじゃなくて、花ちゃんを起こすんだから、何か理由が必要でしょ? それで「寝苦しそうだったから」ってことにしてお話を始めたの。そのあとお話進めていたら、花ちゃんのお姉さんへの気持ちがいっぱい出てきてたから、「お姉さんいなくてさびしくて泣いていた」ってことに最後で変えちゃったの。
うんうんー。このヒトコトがなかったら不自然になっちゃってたし、それに「カノンちゃんを起こしたくなくてハナちゃんを起こした」っていうのをホントの理由にしてたらただのワガママな子になっちゃってたし。保険のかけかたがスゴイよねぇ☆
ふふーん。まかせて!
花ちゃん・・・ごめんね、一緒に寝てあげられなくて。
お、お姉さん、子どもあつかいしないでください。こよりもいっぱいって・・・。そんなに出してないでしょ。
チャットログ取ってきたぞみゃー姉!
ナイスひなた!
!?
えっとなー・・・。「お姉さんたちは別のお部屋──鈴音の間──にいるから、今ここにいない。」「別に寂しくなんかないけど。うん。」「うぅ、お姉さん起こして3人で来ればよかった・・・。」「お姉さんみたいなこと言い出さないで」「限りなくお姉さんっぽいからやめて」「こよりにまで知られてたなんて・・・。」
ダダモレだねぇ。特に最後のなんて、コヨリちゃんに何を知られちゃったってことだったの?
う・・・。お姉さんの前で言えるわけないでしょ。恥ずかしいからノーコメントで。でも、言われてみたらこよりとのお話だけど無意識にお姉さんのこと出しちゃってたな・・・。
無意識だったの!? ハナちゃんってホント・・・。
なに? なんなの?
ううん、なんでもなーい。ごちそうさまー☆
あとおもしろいなぁって思ったのが、花ちゃんとよりちゃんとで「お姉さん」の意味が違うってところかなぁ。原作にもあったやりとり取り入れてたよね。
そうそう! コヨリちゃんの「お姉さん」はフツウの年長者(そして誕生日がハナちゃんよりちょっと早い自分のこと)って意味のお姉さんだけど、ハナちゃんの「お姉さん」はミャーさんのことを表す固有名詞だネ☆
うんうん。7巻の53話かなぁ。「限りなくお姉さんっぽい」ってタイトルの4コマで。
ああ・・・うん。私とこよりって直接の接点があんまりないから、そういうめずらしく二人だけの原作シーンは取りこんだりオマージュしたりしたくなって。
そうね! こういうところはその場の思いつきになっちゃうけど、入れられるところに入れていくわ!
はなとこよりだと、ふたりでまるこげのクッキー作ったり、衣装作りでみゃー姉から戦力外通告されたりしてたイメージあるけどな。
・・・うん。でもそのくらいでしょ。使える原作ネタは使っていかないとね。
あのくろこげクッキー、ミャーさんどうしたんだろう。さすがにハナちゃん手作りでも食べてないと思うけど。
あ、あれはね。脱臭剤として玄関に置いたり、お水の浄化剤として使ったよ。
そんなにしっかり炭になってたんだな。あのまるこげクッキー。
──みなさんはカップリングが固定されていることから、花さんと小依さんのお話であっても小依さんの夏音さんへの想い、花さんのみやこさんへの想いが感じられて、そこが磐石な安心感となり物語を支えていると思います。
次はかのんとのだね。私、このお話でかのん追い詰めちゃったから・・・。あらためて、ごめん。
ううん。いいんだよー花ちゃん。確かに恥ずかしかったけど、お話の中のことはお話終わればそこまでだし、ね^^
私はお話の中でも外でも、かのがいちばん大切よ!
よりちゃん・・・! うん。私もだよー^^
えっと、二人の世界のところ口はさんでごめん。このお話も、直前でかのんと相談をしてチョコ作りの話に決まったんです。そのときに「テンパリング」のことを出そうってかのんから言ってくれて。
テンパリングは温度管理が難しいから高度な技なのに。やっぱりかのんちゃんすごいね・・・。
えへへ・・・ありがとうございます^^ 花ちゃんが「料理に愛情を込めるってどういうことかってお話にしたい」と言っていたので、手間のかかるテンパリングを出そうかなぁって。
かののお菓子はいつもとーってもおいしいのよ! チョコだってなめらかでとろっとしてやさしくて、かのみたいなんだから!
んー、私はかのんを食べたことないから分かんないけど、みゃー姉のと同じくらいおいしそうだな!
みんな食べたことないと思うのアタシ>ω<
あはは・・・本当は、今のよりちゃんみたいに、口当たりと口どけのいいマイルドなチョコがよりちゃんの好みだっていうのを出せていたら、レシピ通りのその先のプラスアルファでテンパリングを取り入れているんだーっていうところ分かりやすく表現できたかなぁって。
そうだね。でも、かのんがこよりのことを想ってどうしたら今以上においしくなるかを研究してるっていうのは、あの場のみんなに伝わったと思う。
コヨリちゃんはカホーモノだネ☆
そうよ! 家宝よ!
自分で言うの!? というか意味違うし。
──夏音さんに問われ、みやこさんのプリンを思い浮かべて幸せなお顔を夏音さんに見られてしまったり、花さんから小依さんのことを常に考えているか、愛しているか問われたりと、カウンターの応酬がありましたね。
かのんからプリンのお話を出された時、レシピのことから本題に・・・愛情を込めるってどういうことかについてシフトするんだろうなと分かりました。なので、そこで先が見通せてほっとしたというか。かのんを困らせるつもりはなかったんですけどカウンターを入れてかのんのかわいい面を出してもらおうと思いました。
うんうん。あそこで本題に入ろうかなぁって。そこまでの流れから、きっと花ちゃん入れ込んでくるだろうなぁっていうのは分かってたよー^^
うまく乗ってくれてありがとう、かのん。でも、こよりに心配させちゃったね。かのんのことで、こよりもごめん。
んー、確かにかのかわいそうだったけど、でもかのは意外としっかりしてるから大丈夫よ! 私もかののこと大好きだから!
よ、よりちゃーん・・・。嬉しいけど、やっぱりちょっと恥ずかしいな・・・////
いまさら!?
──夏音さんの絶叫で幕を閉じるという、普段見られない意外な側面を見せていただいた場面からの、小依さんのご提案でしたね。
あの時のコヨリちゃんはホントかっこよかったよねぇ。王子様登場☆ ってカンジでω ご提案っていうより、提訴! ってカンジだったけどネ。
うん。あの時はうまくフォローしてくれて助かったって気持ちでいっぱいだったけど、今振り返るとそれだけじゃなくてすごくいいお話だよね。どこでも二人きりの世界を作り出せる、かのんとこよりならではのお話だった。
泣いてるかのんをぎゅっとして、ほっぺすりすりだもんなー。私も今度のあにしてみたいって思った。
ヒ、ヒナタちゃん・・・! アタシ、泣く練習しておくネ>ω<
・・・えっと。こよりの話に戻っていい?
おう!
ご、ごめんネー>ω<
もうあれだよね。こよりがかのんのお菓子が「世界で一番」って言ってて、それってつまりそういうことだもんね。
どういうことだ?
えっと、これ解説すると「愛情を込める、ということ。」のラストシーン再現になりそうだから言わないけど・・・。
あー☆ ハナちゃんは、ミャーさんのお菓子が世界で一番なんだもんネω つまりソウイウコトだよねぇ。にゅふふーんω
う・・・。やぶへびだった・・・。
ソファーにふたりしてダイブするのって、あの時もしてたよネ。えっと、にゃんころじーのとき?
そういえばしてたなー。こねこ捕まえようとして、どーんって。いつもこよりがかのんを押し倒してる気がするぞ。
そうだねぇ。今度逆をやってみると新鮮かもだネ☆
はわわ・・・。私、そんなことできないよー><
じゃあ、私がかのをベッドに引きこむから、そうすれば自然と私の上になるんじゃない?
なるけど・・・。それ、どういうお話になるんだろう?
普通に、夜一緒に寝るときでいいんじゃないの?
寝る前のプロレスってことだな!
そんなヒナタちゃんじゃないんだからー☆ でも、いつもと違うってワクワクするよねぇ。
こ、今度入れられたら、入れてみる、ね・・・。
どーんと来い、よ!
──そして、花さんと乃愛さんのお話に。「月」が象徴的に登場しており、即興劇というよりは文学作品のように感じられました。
これはもう、完全にノアのおかげです。今回もうまく乗ってくれたなって。
でっしょー! でも、地の文はハナちゃんだから、文学的って言われたらハナちゃんががんばったってことだよー☆
ノアをしっかり描きださないと、と思って頑張ったけど・・・。なんていうのかな。ノアって妖しい魅力を出す時あるでしょ? それをね、やってみたかったんだ。
はな。のあは松本と違って怪しくなんてないぞ!
ひ、ひなた・・・。呼ぶと本当に出てくるよ? 香子ちゃん>ミ
お? おー。
いや、松本さんみたいな怪しさじゃなくって・・・
うんうん。わかるわかる☆ ハナちゃんありがとネ^^ 年齢不相応の妖艶なミリョクを出そうとしてくれたんでしょー?
うん、そう。
──花さんの地の文は、端的で切れ味がよいものが多いですね。改行とうまく組み合わせることで前後の余韻を味わえる文章になっていたと思います。
おー。どんなところがそうなんだ?
──あまり私が語るのも気が引けますが、「ドキッとした。」「暗示が解けたような。」「呼ばれて。」の箇所ですね。余分なものを削ぎ落とすことでその前後の文章に重みを持たせる手法です。体言止めとはまた違う高度な技です。
すごーい。ハナちゃん、パパがべた誉めしてくれてるよー☆
あ、ありがとう、ございます・・・。この時は完全にノアの雰囲気に飲まれてしまっていることを表現しようとして、余裕のある長々とした文章で描写はできないだろうなって思ったので。
そっかぁ・・・。確かに張りつめたような、一人称の花ちゃんがドキドキしているのがよく伝わってくるよね。書き手の感情移入が一定ライン超えてくると自然とこういう書き方になるんだね。さすが花ちゃん、かわいい>ミ
お、お姉さん。恥ずかしいのでそのくらいにしてください・・・。というか、今はかわいいとは関係ないと思います。
まぁまぁ☆ ハナちゃんも素直にミャーさんに抱きついたらいいのにー。今度二人きりのときにしっかり甘えてネ☆
う・・・。
このお話のタイトル「それは繊細な飴細工のように」ってコール聞いた時に、なんだかノアちゃんのイメージで、黄色い☆の形したキャンディーが頭に浮かんじゃったなぁ。
あ、うん。実はノアとのお話になるから、私もそんなイメージでつけたんだ。ぽろっと折れそうなくらい繊細な作りだけど、でもお月さまの光のように美しくて、はかなくて、せつない。そんなイメージがあったんだ。だから、私の話というよりノアの話にしようとしてたんだよね。
そうだね。ノアちゃんの真剣でかわいい面も、花ちゃんの悩みや葛藤も、短い文でちゃんと表現できていたよ? 頑張ったね。
・・・その悩みと葛藤の原因はお姉さんなんですけど。
ぐぅ、それを言われると・・・>ミ
・・・ふふ。でも、ありがとうございます。今夜は一緒に寝てあげますよ。
は、花ちゃ~んっ!
あっまーい☆ うんうん。アタシのパートだとわたさんがよく言ってくれる、「ふびかわ(不憫かわいい)」ってところだよねぇ。地の文の「片想いなんだけどネ。」で補強もしてくれたし、ハナちゃん描いてくれてありがとネ☆
ノアは、ほら。参加者さんの中にもファンがいっぱいいるでしょ? しっかり描いて期待に応えたかったの。
のあはなにしててもかわいいからなー! そこは私がほしょーするぞー!
やーん、もうみんな、ありがとー☆
■フリートーク
──ここまでは私からの質問にお答えいただいておりましたが、以降は自由に話してみましょう。
そういえばほむらちゃんが言ってたけど、あの水浴び場って神さまの居場所だったみたいだねぇ。
なんだっけ・・・。エヴァ様? 音楽とか詩とか、そういう芸術の神様みたいだね。
じゃあ、神さまのおうちで公演したってことね。前にやったサイコロおじいちゃんのところもそんな感じだったわね!
あのおじーちゃんも元気かなー。またソリナサブレ食べに行くか!
サブレ! お姉さん、明日一緒にサブレのところ行きましょう!
あはは・・・。いいのかなぁ・・・。
ホントにフリートークになっちゃうけど、パパの小説! みんな読んだ?
もちろんだ! のあがいっぱいかわいかったし、いっぱい頑張ったな! よーしよしよし
むえへぇへぇ~ ヒナタちゃん、わしゃわしゃありがとー>ω<
うん。すきあらばいちゃついてるこっちのノアたちと違って、現実味があるというか。ノアってやっぱりいろんなことを考えているんだなっていうのが分かったよ。同級生とは思えない・・・。
お姉さんもかっこよかったわね。ノアちゃんのこと考えてくれてて私も嬉しかったわ!
こっちの私も頑張ります・・・。
でもやっぱり、ひなたちゃんのおかぁさんがすごかったねー。あそこまで子育てに真剣なのは憧れちゃうなぁ。
いつもはただ怖い鬼なんだけどね・・・。でも、美化されすぎてるってこともなくて、確かにうちのお母さんはあんな感じかもしれない。
そうだなー。自分が悪いときや間違えたときは、ちゃんと対等にごめんなさいってするの、おかーさんらしいって思ったぞ。9巻でもはなやのあのおかーさんにごめんなさいしてたしな。
あのお話で、アタシ一歩オトナに近づいた感じがする。でも、ラストシーンでミャーさんチヅルさんから認められたけど、それでもまだ子どもでいていいんだなぁって思えて。んー、うまく言えないけど、やっぱりオトナってすごいんだなぁって思っちゃった。
守られてる感じするよね。でも、その守られてる内側で、厳しくしつけたり、成長を促したり、律する感じがすごくよく出てたと思う。
ノアちゃんも、もっとこう、おでこじゃなくってお口にキスするのかしらって思ってたら、最後までしなかったわね。なんか意外っていうか。
よ、よりちゃーん><
アタシそんな風に思われてたの>ω< んー、でも確かに言われてみたら、オペラの時は最初からそんなカンジだったし、熾天使も11のところはそっちでもよかったかもだネ☆
小学生なんだから、まだ早いでしょ。節度あるおつきあいしなきゃ。・・・相手がお姉さんならともかく。
えっ? ハナちゃん、今なんて
はい、じゃあ次の話題。2月6日にライブがあって、その時に「次のアニメは劇場版」と発表があったね。
はぐらかされたー>ω< でも、うんうん。アタシたちも知らされてない情報でびっくりだったー! 公式サイトの情報はこっち☆ →
こっち
まだ一枚絵しか出ていないけどね。う~~、今から緊張する~~~>ミ
ミャーさん、きっと来年とかになるから今からキンチョウしてたら体がもたないよ?
そうだぞみゃー姉。リラックスだ!
リラックスか・・・。あ、じゃあお姉さん。あとで一緒に温泉入りましょう。
は、花ちゃん!? ありがとう、嬉しい・・・。じゃあ、後で、ね・・・?(それはそれで緊張しちゃうんだよなぁ・・・)
──まだまだ語り足りないとは思いますが、一旦ここまでとしましょうか。そろそろひなたさんが舟を漕ぎ始めているように見えますので。
おフネって言えば、ここの上に遊覧船通ってるんだって! ヒナタちゃんと乗ってみたーい>ω<
おー・・・。いいぞー・・・。
ノア。もうひなた限界だよ。また今度にしてあげなよ。あと、ちゃんとギランまで責任持って連れ帰ってね。
まかせてー☆
かのも眠かったらギランまでおんぶしてあげる!
あ・・・うん。でも、まだ大丈夫だからいっしょにおててをつないで帰ろうね♪
お姉さん。私たちも帰りましょう。今日はお姉さんをクッションにして寝ますのでそのつもりで。
は・・・、はい!(また今夜も寝られなさそうだなぁ・・・)
──はは・・・。本日もどうもありがとうございました。次回以降もこのコーナーを設けようと思いますのでよろしくお願いいたします。
<2月27日追記>
まいちゃんさんの公式記事にて以下の2種のイルミネーションアートが掲載されていましたので、こちらにもリンクをつけさせていただきます。
↓
クイーンアント討伐です・w・
記事では新生クイーンアントの討伐から始まり、最近のイベントについての情報などを拝読できます。
幅広く楽しまれているのがよく伝わってくる内容になっていますので、皆様ご一読くださいませ。
■ ヴァラカスサーバのわたてん!イルミネーションアート01(温泉旅行にてわたてん☆5が仲良く入浴しているシーン) ■
ヴァラカスサーバ在住のまいちゃんさんは、生粋のイルミネーションアーティストです。
このところ、何度も公演会の題材に応じたイルミネーションアートをヴァラカスサーバにて作ってくださっています。
今回は2つも作ってくださったようで、メンテナンスの前後で2作品に分かれております。
まず1作品目は「わたてん☆5が揃って温泉につかっている様子」です。
ヴァラカスサーバにて、わたてん☆5のみなさんが揃って観賞されたようです。
この時はゲーム内時間で夜間であった為、背景や人物が暗く沈んでしまっています。
(このイルミネーションアートのコーナーは色合いが変わってしまう恐れがある為、色調補正をかけておりません)
ただ、その中でも撮影者の乃愛さんはイルミネーションが最大輝度となった瞬間を狙って撮影してくださったそうです。
■ ヴァラカスサーバのわたてん!イルミネーションアート02(「それは繊細な飴細工のように」のワンシーン) ■
続けて2作品目は今回の花さんと乃愛さんで作り上げた即興劇「それは繊細な飴細工のように」のワンシーンです。
ヴァラカスサーバにて、わたてん☆5のみなさんが揃って観賞されたようです。
この時はゲーム内時間にて昼間の時間帯となるように、しっかり時間合わせをして集合されたようです。
確かに、周りの背景もですがイルミネーション自体もはっきり見えて美しいですね。
作者のまいちゃんさんに、しっかり天使たちに見ていただけたことをご報告すべくこちらに掲載させていただきました。
素敵な作品、ありがとうございました。
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── エンジェリック☆アラカルト おかわり++ ──
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一般チャットで行われた実際の「オンライン☆わたてにんぐ劇場」のチャットログはこちらから。
スクリーンショットは星野ひなたさんと鹿目まどかさん、DOSANが撮影したものになりますので、チャット内容や環境設定は各自の基準となります。
今回も保護者の皆様の反応(パーティーチャット)をチャットログに時系列で入れこんでおります。
※血盟チャット部分と一般チャット部分は基本ひなたさんのものを、パーティーチャットと一般チャット混在部分は鹿目まどかさんとDOSANのものを使用し、合成して1枚にまとめております。
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「エンジェリック☆アラカルト おかわり++」 01「秘めたる気持ちの大きさは」(白咲花さんと星野ひなたさん) チャットログ
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オンライン☆わたてにんぐ劇場 「エンジェリック☆アラカルト おかわり++」 02「チョコより甘いその味は」(白咲花さんと星野みやこさん) チャットログ
このところ恒例となってきておりますが、同盟員だけでなく「天使たちのお友だち」を主な対象とした即興劇を、人数制限のない一般チャット(白チャット)にて天使たちが実施してくださいました。
今回は天使たちのお友だちであるまいちゃんさんから「前回のエンジェリック☆アラカルトで時間切れになっちゃった子とのお話を見てみたい」というリクエストをいただいたとのことで、「バレンタインデーイヴにおけるチョコ作り」がテーマとなり、組み合わせも「花さんとひなたさん」「花さんとみやこさん」となりました。
前回のエンジェリック☆アラカルトの時は「花さんに即興に慣れてほしい」という、いわばトレーニングという印象がありました為、難易度が跳ね上がる「お題」については省略されていました。
しかしながら、今回は花さん自らがお題について話を振り、小依さんにお題を出していただく流れとなりました。この点からも、花さんの成長が感じられますね。
今回も天使たちの裏方のやり取りとなる血盟チャットを公開していただけましたので、天使たちの微笑ましい舞台裏も含めてお楽しみください。
主なお客様はエプイさん、わためさん、まいちゃんさん、うらりんさんとレム君、佐倉杏子さん、鹿目まどかさん、DOSANでした。
■記載ルール■
メイン記述者(進行者。今回は白咲花さん)が直接一般チャットに地の文を書き、他登場人物は「」で囲む形でセリフを書くことで物語を紡いでいきます。
今回も純度100%の即興にて構成されています。
☆☆☆☆☆ イントロダクション ☆☆☆☆☆
── リンドビオルサーバのとある同盟では ──
── 気ままに天使たちが舞い降りては 一遍の物語を協力して紡ぎ 人知れず飛び去っていく──
── という噂がまことしやかに囁かれています ──
こちらの記事は「エンジェリック・ミスリル・ハーツ・フェデレーション」内「天使が舞い降りた」同盟において
天使たちの紡いだ物語を一般公開できる形で記録に残そうと考えまとめたものとなります。(天使たちの公開許可はいただいております)
「私に天使が舞い降りた!(わたてん!)」という作品世界から、こちらの世界に飛ばされてしまった天使たち。
戻る術が見つからない日々の中、お友だちの代理露店をこなしながら元気に楽しげに生活されています。
時折、突発的に始まるリアルタイムでの「物語の編纂(即興劇)」というお遊戯は、その完成度の高さ、内容の睦まじさにより
見る人に癒しと潤いを与えてくれるものとなっており、まさに【天使】のような存在となっています。
今回のメイン記述者は「白咲花」さん。
主なキャストは「星野ひなた」さん、「星野みやこ」さんでした。
私に天使が舞い降りた! 公式サイト
より、プロフィール画像はこちらになります。(コンパクトにまとめました)
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── 秘めたる気持ちの大きさは ──
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■作品イメージタグ■
#私に天使が舞い降りた! #わたてん! #白咲花 #星野ひなた #花ひな #バレンタインデー #まんまる #四角 #ハート型 #50センチ
■作品文体■
一人称小説
■お題■
「ハート」
「悪い子」
「太陽」
※オンラインでのわたてにんぐ劇場では、白咲花さんがメイン記述者に「3つのお題」を開始直前に出されます。
メイン記述者もしくは参加者はランダムで出されるその「お題」を地の文やセリフのどこかに取り入れてお話をリアルタイムで紡ぎます。開始直前に発表される為、事前に考えておくことができません。
今回は白咲花さんがメイン記述者となることから、開始直前に種村小依さんがお題選出と発表をされていました。
事前にお題を出され、じっくり考えた場合でもランダムキーワードを取り入れて物語を紡ぐことはかなりの高等技術ですが、毎回みなさんすんなりとオンラインリアルタイムでこなされているので驚愕しております。
「んん? はなー」
「なに? ひなた」
「はなの作ってるチョコ、なんかふたつだけ大きいな」
────────────────────────
── 秘めたる気持ちの大きさは ──
────────────────────────
ペタペタとチョコの形を整えていたら、ひなたがふらっとこっちに来てそう言った。
こういうとき、ひなたがお姉さんのところから離れて私のところに来るのはめずらしい。
「うん」
「ふたつのうち、ひとつは四角くて大きいだけだけど」
「うん」
だって自分で食べる分だし。どんな形でも味はおなじでしょ。お姉さんの用意してくれたチョコ、いっぱい食べたいから。
「もうひとつのは、はなにしてはきれいにできてるな!」
「・・・うん」
私にしてはって・・・。
でも、ひなたに悪気がないってことは、その太陽のようなぺかーっとした笑顔を見ればわかる。
「ハートの形してるの、私にも分かるぞ。がんばったなー」
「うん・・・」
これは、そう。お姉さんの。
いつも食べさせてくれるお菓子のお礼っていうか、そんなところ。
チョコなら、どんなに形が崩れても味は大丈夫だから、私も安心して作れるし。うん。
別にまんまるでも四角でもよかったけど、なんとなくこの形にした。理由なんて特にないけど。
「でも、こんな大きいのみゃー姉食べられるかー?」
「うん。お姉さん、私たちより体大きいし」
「んー、そうだな!」
ひなたはニカッと笑うと、私の肩にぽんっと手を乗せた。
「はなはぶきっちょだからな。心配で見にきたんだけど、大丈夫そうだな!」
がんばれよー!
そう言いながらひなたはノアのところに走っていった。
面と向かってぶきっちょって言われたのに、なぜかひなただと気にならない。むしろ、私のことを心配してきてくれたことが嬉しかった。ひなた、ありがとう。
「お姉さん・・・」
前にかのんが言ってたっけ。食べてくれる人のことを考えながら作るとうまくいくって。
お姉さんはさっきこよりがひっくり返したチョコのボウルの片付けにかかりっきりで、こっちにはきてくれない。だから、ひなたが見にきてくれてほっとしたんだ。
でも・・・。お姉さん、いつもはあんなんなのに、こういうときはしっかりお姉さんしてるんだから。まったく。
「・・・ふふ」
自分でもよく分からないけど、なぜか笑顔になって。
ほぼ飾りつけの終わったこの大きなチョコを、みんなに渡すチョコと一緒に冷蔵庫に入れ込んだ。
お姉さんは体が大きいから大きなチョコ。うん。それも確かにそうなんだけど。
でも本当は、私のチョコでお腹いっぱいになってほしいからだったりする。
他の子のじゃなくて、私のチョコだけでお腹いっぱいになってほしい────。
変な気持ち。いつもならみんなが作ったチョコをお姉さんに食べてほしいって思うのにな。
なんだか私、悪い子になっちゃったみたい。
「はぁ・・・。これもやっぱり、お姉さんのせいですね。ふふ」
冷蔵庫に入れた直径50センチのチョコが固まるまでの間、私は忙しく動き回るお姉さんをずっと目で追っていたのだった。
おしまい。
───────────────────────
── チョコより甘いその味は ──
───────────────────────
■作品イメージタグ■
#私に天使が舞い降りた! #わたてん! #白咲花 #星野みやこ #花みや #バレンタインデー #防犯ブザー
■作品文体■
一人称小説
■お題■
「恋」
「濃い」
「鯉」
※オンラインでのわたてにんぐ劇場では、白咲花さんがメイン記述者に「3つのお題」を開始直前に出されます。
メイン記述者もしくは参加者はランダムで出されるその「お題」を地の文やセリフのどこかに取り入れてお話をリアルタイムで紡ぎます。開始直前に発表される為、事前に考えておくことができません。
今回は白咲花さんがメイン記述者となることから、開始直前に種村小依さんがお題選出と発表をされていました。
事前にお題を出され、じっくり考えた場合でもランダムキーワードを取り入れて物語を紡ぐことはかなりの高等技術ですが、毎回みなさんすんなりとオンラインリアルタイムでこなされているので驚愕しております。
「どんなチョコにしようかな・・・」
「溶かしたチョコを流し込む型はここにあるから、いろいろ試せるよ」
「ありがとうございます」
───────────────────────
── チョコより甘いその味は ──
───────────────────────
バレンタインデーイヴ。そんな日はないけど、ノアたちが勝手に名付けて、去年から2月13日は「お姉さんの家でチョコ作りをする日」ってことになっちゃった。
ということで、私もお姉さんのところで、お姉さんと一緒にチョコを作っている。
隣に立つお姉さんはゴムベラで手際よくチョコを混ぜ込んでいる。いつも通り手際がよくて、見ていると吸いこまれちゃいそう。
チョコもいい匂いだけど、負けないくらいお姉さんも甘い匂いだし。
ふとお姉さんのお顔を見てみると、ぽつんと黒いものがついているのが見えて。
「お姉さん」
「んー? どうしたの? 花ちゃん」
「その、ちょっとかがんでください」
「かがむ? こう?」
ぺろっ ちゅぅっ
「・・・うん。おいしい。ほっぺにチョコがはねてたので」
「・・・・・・・・・・・・」
なんだろう。お姉さんが口をぱくぱくさせている。まるで鯉みたい。
ほっぺのチョコはきれいになったけど、今度はお顔全体が真っ赤に、濃い赤になっていって。まるでりんごみたい。ふふ。
・・・・・・あれ?
あれ、私、今なにを────?
よくよく自分がしたことを考えてみたら、私、お姉さんに自分からちゅーを・・・。
きっと今の私は、お姉さんとおなじくらい真っ赤になってるはず。うわぁ・・・。
恥ずかしすぎて涙がにじんできた。お姉さんは・・・と見てみると、ぷるぷる震えながら手元のチョコをくちびるに塗っていた。
そんなお姉さんを横目に見ながら、私はあふれそうになる恋心を抑え込んで防犯ブザーをポケットから取り出したのだった。
おしまい。