こちらのページでは縦書きのスタイルシートを指定しています。表示確認は「InternetExplorer(Windows)」「Edge(Windows)」「Chrome(Android,Windows)」「Safari(iPad)」にて行っております。


 一般チャットで行われた実際の「オンライン☆わたてにんぐ劇場」のチャットログはこちらから。
 スクリーンショットは星野ひなたさんと里見灯花さん、姫坂乃愛さんが撮影したものになりますので、チャット内容や環境設定は彼女たち基準となります。
 今回も保護者の皆様の反応(パーティーチャット)をチャットログに時系列で入れこんでおります。また、天使たちの裏方のやり取りとなる血盟チャットを公開していただけましたので、天使たちの微笑ましい舞台裏も含めてお楽しみください。


 ※血盟チャット部分と一般チャット部分は基本ひなたさんのものを、パーティーチャットと一般チャット混在部分は里見灯花さんのものを、WIS部分は姫坂乃愛さんのものを使用し、合成して1枚にまとめております。
 ※今回はお題だけでなく、元ネタや背景を知ることで今回の公演をより深くお楽しみいただけると考えられる箇所にはピンク色の囲いもしくはアンダーラインを入れております。
 ※チャット欄の左側には大凡の時間を、右側にはピンク色の囲いもしくはアンダーラインに関連する注釈およびリンクの「☆型のボタン」があります。こちらをクリックするとモーダルウィンドウが開き関連情報を参照できるようにしております。

イベント開始前、集合時の様子 ~ ご歓談 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ ~ お題発表の様子
オンライン☆わたてにんぐ劇場 「よりかのよりかのより!?」 01 チャットログ ~ ご感想
オンライン☆わたてにんぐ劇場 「よりかのよりかのより!?」 02 チャットログ ~ ご感想 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ ~ ちぇろーかさん、由貴真里愛さん合流の様子
オンライン☆わたてにんぐ劇場 「よりかのよりかのより!?」 03 チャットログ ~ ご感想 ~ 由貴真里愛さんログアウト~ 集合写真撮影 ~ ハーブ・フォースさん、レミットさんログアウト ~ 血盟チャットによる打ち合わせ ~ うらりんさん合流の様子
オンライン☆わたてにんぐ劇場 「よりかのよりかのより!?」 04 チャットログ ~ ご感想 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ
オンライン☆わたてにんぐ劇場 「よりかのよりかのより!?」 05 チャットログ ~ ご感想 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ
オンライン☆わたてにんぐ劇場 「よりかのよりかのより!?」 06 チャットログ ~ ご感想 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ
オンライン☆わたてにんぐ劇場 「よりかのよりかのより!?」 07 チャットログ ~ ご感想 ~ 血盟チャットによる打ち合わせ
オンライン☆わたてにんぐ劇場 「よりかのよりかのより!?」 おまけ。 チャットログ ~ ご感想、ご歓談~流れ解散の様子



 このところ恒例となってきておりますように、今回もミスリル・ハーツ同盟員だけでなく「天使たちのお友だち」を対象とした即興劇を、人数制限のない一般チャット(白チャット)にて天使たちが実施してくださいました。
 今回は天使たちのお友だちであるまいちゃんさんから「小依さんと夏音さんのお誕生日会のお話」というリクエストをいただいたとのことで、「お二人の誕生日後に開催された3月初旬のお誕生日会」がテーマとなりました。
 また、チャットログをお読みいただくとお分かりのように、今回は主演のお二人が大変高度な試みを披露してくださいました。この妙味は発言者の確認できるチャットログが最も堪能できるのではないかと思いますので、今回は「チャットログがメインコンテンツ」と考えております。
 もっとも、下部の縦書きの本文部分につきましても、お二人の頑張りに敬意を表しその臨場感を少しでも味わう為の「仕掛け」を用意しておりますのでそちらもお楽しみいただければと思います。


 今回もページ下部に  【 エンジェリック☆インタビュー 】  のコーナーを設けましたので、そちらにていろいろと迫ってみようと思います。

 主なお客様はエプイさん、まいちゃんさん、うらりんさんとレム君、ちぇろーかさん、ハーブ・フォースさん、ハーブ・レミットさん、由貴真里愛さん、里見灯花さん、柊ねむさんでした。


 なお、今回もこの時の公演会の記事を【週刊うらりん】に掲載してくださったようです。 →  【週刊うらりん】続・露店三昧の日々
 いつも天使たちの公演を記事掲載していただきまして、ありがとうございます。
 記事では本記事の公演会のこと、同盟の方々とのふれあい、お仕事が大変だったことなどを拝読できます。皆様ご一読くださいませ。

 また、まいちゃんさんも今回の公演会の内容にふさわしいイルミネーションアートを作ってくださり、その製作過程の記事を掲載してくださったようです。 →  祝エーレなかなかいいですね・w・
 いつも天使たちの公演内容に合わせたイルミネーションアートを作ってくださいまして、ありがとうございます。
 作品につきましてはいつも通り、乃愛さんがヴァラカスサーバにて撮影してくださいましたので本ページ下部に掲載させていただきます。
 記事では祝福されたエーレ装備のこと、祝福されたアトラスイアリングのこと、イルミネーションアートのことなどを拝読できます。皆様ご一読くださいませ。


 ■記載ルール■
  メイン記述者(進行者。今回は種村小依さん、小之森夏音さん)が直接一般チャットに地の文を書き、他登場人物は「」で囲む形でセリフを書くことで物語を紡いでいきます。
  今回も純度100%の即興にて構成されています。


☆☆☆☆☆ イントロダクション ☆☆☆☆☆

── リンドビオルサーバのとある同盟では ──
── 気ままに天使たちが舞い降りては 一遍の物語を協力して紡ぎ 人知れず飛び去っていく──
── という噂がまことしやかに囁かれています ──

こちらの記事は「エンジェリック・ミスリル・ハーツ・フェデレーション」内「天使が舞い降りた」同盟において
天使たちの紡いだ物語を一般公開できる形で記録に残そうと考えまとめたものとなります。(天使たちの公開許可はいただいております)

「私に天使が舞い降りた!(わたてん!)」という作品世界から、こちらの世界に飛ばされてしまった天使たち。
戻る術が見つからない日々の中、お友だちの代理露店をこなしながら元気に楽しげに生活されています。
時折、突発的に始まるリアルタイムでの「物語の編纂(即興劇)」というお遊戯は、その完成度の高さ、内容の睦まじさにより
見る人に癒しと潤いを与えてくれるものとなっており、まさに【天使】のような存在となっています。


今回のメイン記述者は「小之森夏音」さん、「種村小依」さん。
主なキャストは「星野ひなた」さん、「姫坂乃愛」さん、「白咲花」さん、「星野みやこ」さんでした。



私に天使が舞い降りた! 公式サイト より、プロフィール画像はこちらになります。(コンパクトにまとめました)










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──     よりかのよりかのより!?     ──
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 ■作品イメージタグ■
  #私に天使が舞い降りた! #わたてん! #種村小依 #小之森夏音 #星野ひなた #姫坂乃愛 #白咲花 #星野みやこ #よりかの #かのより #お誕生日会 #入れ替わり

 ■作品文体■
  一人称小説

 ■お題■
  「鏡」
  「失敗」
  「ちゅー」

  ※オンラインでのわたてにんぐ劇場では、白咲花さんがメイン記述者に「3つのお題」を開始直前に出されます。
   メイン記述者もしくは参加者はランダムで出されるその「お題」を地の文やセリフのどこかに取り入れてお話をリアルタイムで紡ぎます。開始直前に発表される為、事前に考えておくことができません。
   事前にお題を出され、じっくり考えた場合でもランダムキーワードを取り入れて物語を紡ぐことはかなりの高等技術ですが、毎回みなさんすんなりとオンラインリアルタイムでこなされているので驚愕しております。

 ■本作固有の留意事項■
  ・今回は幼馴染であるお二人の「入れ替わり」がひとつのテーマとなっておりますので「どなたが発言したセリフなのか」は重要な要素となります。その為こちらの縦書きの表示においても「夏音さんと小依さんのどちらが発言したのか」を文字の色により表現してみようと思います。(その他の天使のみなさんや擬音はベースのままとしております)
  ・種村小依さんが発言したセリフおよび担当した地の文は小依さんのイメージカラー(髪色)である【この色】にて記述し、小之森夏音さんが発言したセリフおよび担当した地の文は夏音さんのイメージカラー(髪色)である【この色】にて表現しております。

  ※これは即ち、「見た目という物質的なものが同じであれば声は入れ替わらないであろう」という発想から、「声」をイメージしやすくしたカラーリングとなります。

「ねぇ、かの。  ・・・じゃなかった。よりちゃん」
「なぁに? よりちゃん・・・ じゃなくて、か、かのー・・・?」



─────────────────────
──   よりかのよりかのより!?   ──
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01

 今日は、3月に入ってすぐの土曜日。午後からひなたちゃんのおうちで私たちのお誕生日会を開いてくれることになっていて。
 よりちゃんも楽しみにしていて、昨日の夜から私のおうちでお泊まりをして、二人で一緒にひなたちゃんのおうちに行こうねって話をしていたのでした。
 よりちゃんがお泊まりに来てくれるのはいつも通りのことで。その日もいつも通りお泊まりにきてくれました。
 よりちゃんのお泊まりセットはうちに置いてあるので、よりちゃんはいつも通り手ぶらでおうちに来て。
 いつも通りよりちゃんとお風呂に入って、いつも通りお夕飯をいただいて、いつも通り私のベッドに一緒に入りました。
 そして、翌朝。
 いつも通り目が覚めたら、ひとつだけいつも通りじゃないことがありました。
 それは────。

02

 あ、えっと・・・。その、私は今、よりちゃんに見えるかもですけど、夏音なんです。
 目が覚めて、最初に目に入ってきたのは「私」でした。なんだか鏡を見ているみたいだなーなんて寝ぼけながら眺めていると、そのうち「私」も目が覚めて、目が合いました。
 じーっと見つめてみると、まばたきのタイミングが違うんです。まばたきしてる自分を見られるなんて、なんだかとても不思議な感覚です。
 そこで気がついたのが、よりちゃんがいないっていうこと。周りを見回してもよりちゃんがどこにもいません。
 あれ? よりちゃん隣で寝ていたはずなんだけどな。おトイレかな? なんて考えていると「私」が声をあげました。

「あれ? 私・・・?」
「え・・・?」
「こんなところに鏡あったかしら?」

「私」は起き上がると私の髪の毛をつまんでみたり、ひなたちゃんがするようなほっぺたむにむにをしてきました。くすぐったいよー。

「あはは、おもしろいわね! むにむにできるなんて、立体的な鏡ね。それに」

「私」は私の後ろに回り込むと、私の髪の毛を手にとって整え始めました。

「後ろもとっても見やすいわ。髪のセットしやすくていいわね。ねぇ? かの」

 「私」は私のことを呼ぶと、きょとんとしています。
 私、自分のこと呼んでておかしいなぁ。ふふ。

「かの・・・?」

「私」は何かに気付いたのか、カーテンを開けると窓ガラスに映る自分の姿を確認しています。

「なーんだ。かの、こんなところにいたのね。ほら、早くこっちに来なさい!」


ガラッ


「・・・あれ? かのいなくなっちゃった。どこにいるの?」

 どうやら「私」は、窓ガラスに映った自分のことを私だと思っているみたいです。
 あれ? それって、どういうことなんだろう?
 今ここにいる私って・・・?

「あ、あの・・・」
「私はちょっと待ってて。今はかのを探してるんだから」
「あのね、その。私がかのんだよ?」
「なに言ってるのよ。あなたは私じゃない。かの、トイレかしら」

 うーん?
 私の目の前にいる子は、間違いなく「私」で。
 それじゃあ、私は?
 私はさっき「私」が開けた窓を閉めて、自分の姿を確認してみました。そしたら────。

「・・・よりちゃん?」

 窓に映る私は、よりちゃんの姿をしていました。
 どうりで動くたびに髪の毛が引っかかったり、重いなぁって思ったわけです。
 ・・・そうじゃなくて。あれ? ということはこの「私」は・・・?

「・・・ねぇ、よりちゃん?」
「なによ。私は今、かのがいなくて落ち着かないの。後にしてちょうだい」
「ちょっと、ちょっとここで並んでくれる?」

 私は「私」を立たせて窓際まで連れていきます。そして、二人で並んで窓ガラスに映ります。
 そこにはいつも通りの私たち、よりちゃんと私がいました。

「あら、かのいるじゃない。って・・・あれ?」
「やっぱり・・・。よりちゃん、これって・・・」

 窓ガラスと、お互いを何度も見比べながら。
 私たちはようやく、何が起きたのかを理解したのでした。

「私たち・・・」
「入れ替わってるー!?

03

「ねぇ、かの」
「・・・よりちゃん?」
「とりあえずやりにくいから、私たち二人きりのときはいつも通りにしましょ」
「そ、そうだねー・・・」

 どういうわけか分からないんですけど、よりちゃんと入れ替わっていて。
 よりちゃんが私で、私がよりちゃんで。
 不思議なことってあるんだなぁ・・・。
 私の部屋を出る前に、よりちゃんとお互いになりきる練習をして。そして、約束もしました。
 私たち二人きりのときはいつも通りでいいけど、みんながいるときはお互いに「なりきり」でがんばろうって。

「でも、意外とお母さんたちにはバレなかったわね」
「あはは・・・。上手にできたねぇ」

 これも「おさななじみ」の強みかもしれません。お互いが、それぞれおかぁさんたちにいつもどう接しているのかをしっかり分かっているからできることだと思うので。

「今日のお誕生日会って、何時からだったかしら」
「えっとね・・・。お昼ごはんもごちそうしてくれるみたいだから、お昼ちょっと前には行っておかないとだね」
「それじゃ、ちょっと早いけど行きましょ。お外で歩いてるほうがなんとなく気が楽だし」
「そうだねー よりちゃん」

 よりちゃんとお外に出て、一緒におててを繋いでひなたちゃんのおうちを目指します。
 こうしてると、いつも通り。入れ替わっていても、こうしていたらいつもと何も変わらなくて、ほっとします。
 やっぱり、よりちゃんと一緒だと安心するなぁ。
 でも・・・。

「ね、ねぇ。よりちゃん」
「なに? かの」
「その、いつもと逆だから、ね・・・?」
「・・・そうね。じゃ、かの前に」
「う、うん・・・」

 いつもよりちゃんが私の手を引いてくれてるから、今は私が手を引かないと。
 私はよりちゃんよりちょっと前に出て、手を後ろに伸ばしてよりちゃんの手を握ります。
 なんだかすごく慣れなくて、でもちょっとだけ新鮮で。
 私はぎこちなくよりちゃんのおててを引きながら、ひなたちゃんのおうちまで歩いていったのでした。

04


ピンポーン


タタッ


「・・・よりちゃん?」
「なんだか、ピンポン押したらダッシュしなきゃって気がするのよね」
「ダメだよー? よりちゃん」

 ひなたちゃんのおうちに着いて、よりちゃんが呼び鈴を押して。
 いたずら気分のよりちゃん。私たち入れ替わってるのにすごく余裕だなぁ・・・。私はドキドキして仕方ないのに。
 それに、私の姿でいたずらをしてるよりちゃんを見るのも、なんだか別の意味でドキドキしちゃうな。

「はーい!」
「あ・・・ ひなたちゃん? 私たち到着よ!」
「おう! 開けるからちょっと待っててくれー!」

 たたたっ と軽快な音が聞こえたかと思ったら、ひなたちゃんがドアを開けてくれました。
 いつもの太陽のような笑顔で、今日も元気いっぱいのひなたちゃん。

「いらっしゃい! あがってくれー!」
「お邪魔するわ! ほらかの、行きましょ」
「う、うん。お邪魔します」

 おうちの中に入ると、いい匂いが玄関まで漂ってきました。お昼ごはんはカレーみたいです。

「そろそろお昼だからなー。みんな呼んでくるから座っててくれ」

「ありがとうー ひなたちゃん」
「そうさせてもらうわ!」

 うん。いつも通り。いつもの私たちでいられてるはず。
 でも、なんだろう。お友だちをだましていることには間違いないから、やっぱりちょっと後ろめたい気持ちはあるなぁ・・・。
 ひなたちゃんたち、ごめんね。

「二人ともいらっしゃーい☆」
「いらっしゃい」

 ノアちゃんと花ちゃんが降りてきて、ご挨拶です。
 今日も二人ともかわいいなぁ。花ちゃんも、その独特なひげろーがワンポイントになっていて、一周まわってかわいく見えます。

「みんな、できたから運んでー」
「まかせろ、みゃー姉!」
「はーい☆」
「はい」

 おねぇさんが声をかけると、みんなでお手伝いに行っちゃいました。
 私たちもお手伝いに行かなきゃ。

「えっと 私も運ぶわよ!」
「コヨリちゃんが運べるもの・・・ じゃあ、落としてもダイジョウブなスプーンとかお願い☆」
「ダメでしょー。二人とも今日は主役なんだから運ばせたりしたら」
「・・・それもそうでしたね。私たちがやるからかのんたちは座ってていいよ」
「それじゃ悪いよー。飲み物だけでも運ぶねー」

 よりちゃんは人数分のグラスの乗ったトレーを持つと、テーブルの方まで運んで行きました。
 そんなに長い距離じゃないから大丈夫かな。
 なんて思っていた矢先のことでした。



こけっ


「あっ」


ばっしゃーん カラン カラン・・・


「かのん!? 大丈夫か?」
「えっ カノンちゃんが!?
「どうしたの・・・?」

 私は布巾を持ってよりちゃんに駆け寄ると、倒れてるよりちゃんを起こしながら怪我をしていないかどうか確認します。
 転び慣れてるよりちゃんは体のどこにも怪我をしていないみたいです。ほっとしました・・・。
 その流れで私はよりちゃんの周りの床を拭いてきれいにします。コップはプラスチック製だったみたいで割れたりはしていませんでした。本当によかったぁ・・・。

「かの・・・ ごめんなさい・・・」
「いいんだよーよりちゃん。怪我がなくて本当によかったぁ」
「うん・・・。ありがと」
「怪我してなくてよかったな。それにしても、今日のかのんはこよりみたいだなー」
「そうだねぇ。まさかあそこでカノンちゃんが転ぶなんて」
「うん。それに、今もこよりがかのんのフォローしてるし。いつもと逆みたい」
「そっか。じゃあ、今日の二人は中身入れ替わってるってこと? お誕生日のサプライズ! とかで」

 ああ、おねぇさんには見破られちゃってました。
 よりちゃんも私のこと「かの」って呼んでいたし、私もよりちゃんって呼んじゃってたから、もう隠し通せないかな。

「んもー、ミャーさん冗談言ってないでタオル取って!」
「そうだぞ、みゃー姉。飲み物も新しいの入れてくれー!」
「まったくお姉さんは。友だちが転んでるのにそんな」
「違うんです」
「こより、ちゃん・・・?」

 私はよりちゃんに立ってもらうと、二人で並んでみんなの方に向き直ります。
 よりちゃんと手を繋いで、みんなにこう伝えたんです。

「あのね・・・。私たち、今朝から入れ替わっちゃってるんだー・・・。えへへ・・・」

05

「ごちそうさまー☆」
「ごちそうさま! 今日もおいしかったぞみゃー姉!」
「ごちそうさまでした。りんご入りカレー、甘くておいしかったです」
「ごちそうさまでした・・・」
「ごちそうさま・・・」

 勇気を振り絞ってみんなに告白したんですけど、みんなはまた私の下手な冗談だと思ったみたいで本気にしてくれませんでした。
 先にお昼済ませちゃおうってことで、入れ替わりのことは一旦置いておいて、みんなでおねぇさんお手製のおいしいカレーをいただきました。
 でも、やっぱり食べてる時も、みんなの視線が私たち二人に注がれていて。私たちが一番端のお誕生席に座ってるのもあって、みんなの視線が自然と集まってきていました。

「・・・さて。それじゃ、さっきのお話にもどろっか」
「いいぞー!」
「かのんとこより。入れ替わっちゃってるって言ってたけど・・・。それはいつからなの?」
「えっと・・・ 今朝、起きた時からかなぁ。気が付いたらこんなことになっていて」
「そうね! 最初、鏡を見てるのかと思ったわ」

 もう演技しなくていいみたいなので、私たちもそれぞれ素の状態に戻っておしゃべりします。
 でも、こんな突拍子もない話、みんな信じてくれるのかな・・・。

「あの、その・・・。みんなだましててごめんね。信じてくれるの・・・?」
「気にしなくていいぞ。それに、当たり前だ! かのんとこより、話してくれてうれしいぞ」
「うんうんー。一番大変なのは二人だもんネ。もちろん信じるよー」
「朝起きた時からってことは、寝ている間に何かあったってことかな」
「入れ替わりかぁ。花ちゃんと入れ替わっちゃったらいろいろと大変そうだな・・・」

 みんな信じてくれて嬉しいな。ありがとう。
 みやこおねぇさんはいろいろと想像しているみたいで、うんうんとうなっています。大丈夫かな・・・。

「ハナちゃんがミャーさんになったら、食べたいお菓子作り放題だネ☆」
「それいいね! お姉さん、やり方分かったらやってみましょう!」
「えぇ、だ、ダメだよ! いろいろと私が困るから! トイレ行けなくなるし、お風呂も入れないでしょ!」
「ミャーさん・・・そこから?」
「お姉さん・・・」
「それに、作るのは見た目がみゃー姉ってだけの中身はなだからな。きっと失敗するぞ」
「・・・・・・」

 あはは・・・。なんだか、いつものみんなで緊張がとけていくように感じます。
 でも、寝ている間に、かぁ。寝ている時のことは分からないから、結局原因は分かりそうにないなぁ。

「でも、まかせてカノンちゃん。アタシそういうのの入れ替わり方知ってるから」
「えっ どうやったらいいの?」
「食パンを口にくわえて、曲がり角でごっつーんってぶつかればダイジョウブ!」
「ネタ古すぎ。大正時代とかでしょそれ」
「さすがに昭和だよ!?
「あはは・・・。うーん。寝る前に、二人でいつもと違ったことをしたとかはないの?」
「いつもと違ったこと・・・。なにかあったかしら」
「うーん。どうだったかなぁ・・・。いつも通りだったと思うんだけど・・・」

 聞かれてみて、改めて昨日の夜のことを思い出してみます。
 ベッドに入るちょっと前のことから。昨日の夜は────。

06


「かの。そろそろ寝ましょ」
「そうだねー よりちゃん」
「あ、そうそう。前に話してたことで、一度やってみたいことがあったのよ」
「よりちゃん?」

 よりちゃんはそう言うと、さっとベッドの中に入りこんじゃいました。
 そして、がばっと掛け布団を開けると、手招きしています。なんだろう?

「さ、来なさい!」
「うんうん・・・?」
「ほら、この間ひなたちゃんが言ってたでしょ? いつも私がかのを押し倒してばかりだって」
「そうだったかなー?」
「だから、今日はかのが私を押し倒してみて」
「ふええぇぇ そんなの無理だよー・・・」
「大丈夫。お姉さんの私がリードしてあげるから」
「うぅ、大丈夫かなぁ・・・」

 またよりちゃんが思いつきで変なことを言い出しました。こういうときのよりちゃんは絶対曲げないからなぁ・・・。
 それに、いつひなたちゃんそんな話してたかなぁ。頭にハテナを浮かべていると、よりちゃんが気付いたみたいで教えてくれました。

「ほら、それはあれよ。前回のお父さんの記事のインタビューの時にひなたちゃんが」
「よりちゃーん。それ以上はダメ!」
「かの!?

 よりちゃんがなんだか危ないことを言おうとしていたので、思わず止めちゃいました。あはは・・・。

「でも、これだと「押し倒す」というよりは「覆いかぶさる」って感じだけど、これでいいの?」
「そういえばそうね。んー、じゃあ」

 がばっとよりちゃんは起き上がると、私の方を向いて両腕を広げています。「おいで」って言ってるように見えるけど・・・。

「ここから、かのに押し倒される感じでどう?」
「どうって言われても・・・。じゃあ、やってみるね?」

 よりちゃんが差し出している両腕に挟まるような感じで、私はよりちゃんと密着します。
 よりちゃんが怪我をしないように、よりちゃんの頭と背中に手を添えて、ゆっくりとよりちゃんに覆いかぶさるような形で横になりました。

「・・・なんだか、ドキドキするわね・・・」
「大丈夫? 痛くない?」
「かの、やさしいから。痛くなんてないわよ」
「よかったぁ。じゃあ、ここまでだねー」

 よりちゃんの希望通り押し倒せたので、もうここまで。
 と思って姿勢を整えようとしたら、よりちゃんが私をぐいっと引っ張りました。

「きゃっ」


むにゅっ ちゅるっ


 あ・・・。
 ふいのことだったので受け身が取れなくて、よりちゃんの真上に乗っかっちゃいました。
 そして、お口とお口がくっついちゃって・・・。これって・・・。

「ぷあっ かの、ごめん。大丈夫?」
「ん・・・。だ、大丈夫、だよ・・・? よりちゃんは?」
「大丈夫よ! でも・・・」

 勢いでちゅーしちゃったわね。なんて。
 よりちゃんが私の真下で、真っ赤になりながら目をそらしています。
 よりちゃん、すごくかわいい・・・。いつもかっこいいよりちゃんだけど、しおらしいよりちゃんもすごくかわいいな。

「よりちゃん・・・。今のだと事故みたいで、私、いやだなぁ」
「か、かの・・・。どうしたらいいのよ・・・」
「もう一度、ちゃんとした形で、ね・・・?」
「うん・・・。かの、お願い・・・」

 そこからの二人には、言葉はいりませんでした。
 二人とも真っ赤になりながら、私の方からゆっくり近づいていって。
 よりちゃんのやわらかさをしっかり感じとったのでした。

07

「・・・・・・ということがあったくらいで、他はいつも通りだったよー?」
「そうね! 変わったことっていえばそのくらいだったわ」
「いや、変わりすぎでしょ! それが原因っていうか、それ以外に考えられないでしょー」
「えぇ・・・。もう二人とも経験済みってこと・・・?」
「ちゅーだけよ? 確かに恥ずかしかったけど、でもかのとだから胸があったかくなって、嬉しかったわ」
「えへへ・・・。私もだよー? よりちゃん」

 みやこおねぇさんがぷるぷるしています。大丈夫かなぁ?
 でも、みんながこれが原因だと言うなら、そうなんだろうなぁ。
 あ、それじゃあ・・・。

「元に戻るには、逆をすればいいってことかなぁ」
「逆ってことは、私がかのを押し倒してちゅーするってこと?」
「そうなる・・・のかな?」
「いちゃついてるだけで中身入れ替わっちゃうなんて、怖いよネω アタシもヒナタちゃんと気をつけないとー」
「お? おー、そうだな!」

 解決策は分かったので、今夜早速実践してみよう。うん。

「かの、それなら今すぐやってみましょ!」
「えっ 今?」
「だって、長引かせても仕方ないでしょ? 戻れるならすぐ戻りたいわ」
「そっかぁ・・・」

 そうだよね。じゃあ、今度はよりちゃんからで。
 ソファをお借りしてやってみることにしました。昨日の夜のことをもう一度思い出していると・・・。

「あ、アタシたち、上に行ってるネ!」
「のあ? 上でなにかあるのか?」

「いいから、ヒナタちゃんも! ほらほら、いくよー?」
「ごゆっくり・・・」
「わ、私もお邪魔だから・・・。花ちゃーん、待ってー」

 みんなして2階に上がって行っちゃいました。
 でも、うん。これからすること考えたら、そうしてもらえるのが一番だったり。
 私はソファに座ると、昨日の夜によりちゃんがやっていたように両腕を差し出して。
 よりちゃんを正面から迎え入れます。よりちゃんも私がやったように、おずおずと腕の中に入ってきてくれました。

「かの」
「よりちゃん・・・?」
「昨日とは逆だから、嫌だったら言いなさい。止めるから」
「よりちゃん・・・」

 よりちゃんはゆっくりと、私の頭と背中に手をまわして、それ以上ないくらいにやさしくソファに押し倒してくれました。
 私の目を見ながら、反応をうかがってるみたいです。そんなよりちゃんがいじらしくて。
 私は、昨日のよりちゃんがやったみたいに、よりちゃんを自分の方に引き寄せました。

「あっ 引いたら・・・。かのっ」

 よりちゃんはそのまま落ちてくると思っていました。でも・・・。

「・・・! 危ない・・・」

 ソファに両手を突いて、すんでのところで顔がぶつかることはありませんでした。
 無理にしちゃったら、やっぱりよりちゃんが嫌だったのかな・・・。私が悲しそうな顔をしていると、よりちゃんがこう言いました。

「勢いつけてちゅーしたら、歯が当たって切っちゃうかもしれないでしょ・・・」

「かのを、そんな危ない目に合わせられないわよ。だから、こう・・・」

 よりちゃんは、目を閉じて。
 私も、よりちゃんのやさしさに涙を浮かべながら、目を閉じて。
 私たちはこうして、2回目のファーストキスを交わしたのでした。

おまけ。

 その後。ころ合いをみて1階に戻ってきてくれたみんなに、改めて説明とお礼をしました。

「────ということで、大変お騒がせしちゃったけど、元に戻ることができたよー」
「みんな、ごめんね! でも、ありがとう!」
「よかったーω 一時はどうなることかと思ったよー」
「これで丸くおさまったね。かのん、こより。大変だったけど、おめでとう」
「よかったなー。でも、ちゅーなんてみんないっぱいしてるのに、入れ替わったなんて聞かないぞ。なんでかのんたちはそうなったんだ?」
「いっぱいしてるの・・・?」
「んんー、ヒナタちゃん、それはナイショで☆」
「お? おおー」

 えへへ・・・。みんなそれぞれ仲良しさんで、私もうれしいなぁ。
 入れ替わっていたのは、ほんの半日くらいのこと。でも、その間にいろんなことが分かって、とても貴重な経験になりました。
 どうして私たちだけに起きたのかは分からないですけど、でも。
 神さまが経験させてくれたのだとしたら、感謝しないと。私たちはそれまでも仲良しだったけど、今回のことでもっと仲良くなれたから。

「・・・よりちゃん」
「かの・・・」

 二人でおててをつないで、これからも一緒に歩いていける。そう確信することができたから。

「これからも、よろしくね。よりちゃん」
「私にいつでもまかせなさい、かの! これからもよろしくね!」

───────────────────────
──   よりかのよりかのより!?   完 ──
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【 コラム 】

「あ・・・」 「えっと」 に込めた思いについて。
およびリアルタイムでの人格の模倣(エミュレート)と、その多層レイヤー間の往来について。


 全編通してまったく違和感のないファインプレーを披露してくださったお二人でしたが、このコラムでは殊更に特筆すべき点として「04開始直後の小依さんのセリフ」にフォーカスしてみたいと思います。チャットログにおいて「コラムにて詳述します」と複数箇所に記載しましたが、それらの根幹は同じところに帰結しますので、このコラムの内容を読むと「すごいと思った理由」が分かるのではないかと思います。

 ねむさんもおっしゃっているように、この04は「外見相応の立ち居振る舞いをする」パートです。つまり「{周囲から小依さんとして認識されている夏音さんが小依さんとして振る舞う}様子を小依さんが再現する」「{周囲から夏音さんとして認識されている小依さんが夏音さんとして振る舞う}様子を夏音さんが再現する」という、今回の入れ子構造としては最も複雑に入り組んだ最高難易度のパートとなります。
 ここに関しては、03開始前の血盟チャットでの天使たちの打ち合わせにて以下のやり取りがありました。

「でも、かのが入り込んでる私が、私のふりをするんだから、結局私そのままでいいんじゃない?」
「んー、そこはちょっと工夫して、よりちゃんに入り込んでる私が、よりちゃんぽく振る舞うことを意識してるような、そこはかとない感触?をだしてみるとか」
「難しいけど、やってみるわね!」

 小依さんのおっしゃる通り、つまりはここのパートに関してはお互い演技を解いて「小依さんは普段の小依さんとして振る舞う」「夏音さんは普段の夏音さんとして振る舞う」ことができていれば及第点なのです。しかしながら、夏音さんはそこに可能な限りのリアリティを含ませる為に、人の持つ「ゆらぎ」を持たせようとしたのです。
 03の冒頭でされていたように、二人きりの時に「なりきる練習」はしましたが、ひなたさんたちを前にしての「入れ替わりの演技」はここが初めてのことであり、本番です。そのプレッシャーから、「素の夏音さんが一瞬だけ、顔を覗かせている様子」を以下のセリフで小依さんは表現されようとしたのです。

あ・・・ ひなたちゃん? 私たち到着よ!
えっと 私も運ぶわよ!

 分かりやすく色分けをしてみましたが、前半が「小依さんが演技している夏音さんとしてのセリフ」、後半が「小依さんが演技している夏音さんが演技している小依さんとしてのセリフ」です。実際前半の「小依さんが演技している夏音さんとしてのセリフ」の部分を省いたとしても物語の進行に影響はなく、会話もリズムやバランスを崩すことなく進行します。

 小依さんは夏音さんの想い、即ち「よりちゃんに入り込んでる私が、よりちゃんぽく振る舞うことを意識してるような、そこはかとない感触?をだしてみる」というオーダーを完璧に受け取り、自らの中で「ちょっとだけ気弱なかのが私のふりをしようとしたらどうなるかしら」をシミュレートした結果、「かのらしく一呼吸置いてみましょ!」という解を導きだしたのです。それも、ひなたさんたちに悟られてしまうようなレベルではなく、非常にさりげない繊細な呟きによって表現されたのです。

 ※言われなければ気付かなかったという方も多いと思います。私も些細な違和感(何故ここにワンクッション入るのだろう?という疑問)を感じまして、それを小依さんに確認したところ「そういう意味があったのよ!」と簡潔に教えてくださいました。やはりこれは「演出の一環」であったことが判明し、敬服いたしました。その結果このコラムを作り、解説しなければと思った次第です。

 リアルタイムで会話のやりとりを紡ぎつつ、同時進行でシミュレートし、その結果最善のパフォーマンスを私たちに披露してくださった小依さんたち。
 恐らく、ここの演出については時間をかけて熟考した場合とほぼ変わらないクオリティだったのではないかと思われます。

 まさに、乃愛さんのおっしゃる通り
どんだけお互い信頼してて、大好きなのっていう
 これに尽きますね。





 ねむさんがこの指摘「素の出方もすごい。一枚だけはがれているということだね」をリアルタイムでできたことも素晴らしいと思います。「物語」という、各キャラクター性が入り乱れる世界観をいくつも生み出してこられた作家ならではの視点ですね。ねむさんのおっしゃる「一枚だけはがれている」の「一枚」とは、小依さんと夏音さんに多層構造で積み重なった「模倣人格」のことであり、それが一段階だけ剥離したということを指しています。前述の長い式で表すならば「{周囲から小依さんとして認識されている夏音さんが小依さんとして振る舞う}様子を小依さんが再現する」の演技部分「小依さんとして振る舞う」箇所が剥離し、「{周囲から小依さんとして認識されている夏音さんとして振る舞う}様子を小依さんが再現する」の状態となったということです。

 私の文才がない為に、文章では非常に分かりにくい説明となってしまっております。その為、以下の図表を用いて説明させていただきます。
 個人的には「中の人」といった無粋なことに言及したくはありませんが、今回の公演においては多重積層構造となっている模倣人格の各フェーズを行きつ戻りつしていることが妙味となっていることからあえて解説させていただきます。


 まず、現実世界からのものを含めた全体の人格構造としては以下のようなフェーズで成り立っています。
 (図は下からご覧ください)

人格のエミュレート

図表 人の持つ人格構造からオンラインでの人格のエミュレーションとその多層構造について




 「中の人」レイヤーについての解説はここでは割愛します。よくある一般的な「人の内包する人格の模式図」である為、ここまでは感覚的にご理解いただけるのではないかと思います。

 そこから先、小依さんと夏音さんがそれぞれリネージュ2にログインした後の人格の模倣、いわゆる「互いの人格のエミュレート」が今回の公演でみなさんの度肝を抜いた要素かと思います。
 ※お二人とも一人称は「私」の為分かりにくいかと思いますが、図式を一般化しようとした為にこのような形となっております。ひなたさんと乃愛さんが入れ替わった際は「私」「アタシ」となります。一人称はキャラクター付けにおいて重要な要素ですので省けませんでした。

 人格のエミュレートのフェーズ1は、まず「中の人」がそれぞれのキャラクターの個性や人格をエミュレートするところになります。まずここからしてすごいのですが、お二人は紛れもなく「種村小依」「小之森夏音」そのものになられています。ここについては他の天使たちも全員同様です。みなさんこのベースとなるフェーズにて、普段の「オンライン☆わたてにんぐ劇場」を公演されています。

 人格のエミュレートのフェーズ2は、乃愛さんたちも驚愕していた「エミュレートしているベースの人格の上に、更にリアルタイムで別の人格を(小依さんが夏音さんを、夏音さんが小依さんを)エミュレートする」ところになります。ここでのポイントは、お二人はこれまで「小依さんは小依さんとしての振る舞いを完璧に再現する」、「夏音さんは夏音さんとしての振る舞いを完璧に再現する」というのがデフォルトでしたが、ここで急にお互いの人格を「交換」することになり、特に練習することもなく完璧にそれをこなせたというところです。乃愛さんから聞いたところでは、過去にハーブさんから入れ替わりネタの話が出た際にみなさんで一度試したそうですが、既にその時から完璧に小依さんと夏音さんは人格(キャラクター)の入れ替わりができていたそうです。

 人格のエミュレートのフェーズ3は、図式化しても混乱してくるのですが「エミュレートしているベースの人格の上に、更にリアルタイムで別の人格を(小依さんが夏音さんを、夏音さんが小依さんを)エミュレートし、その上に更に別の人格(小依さん>夏音さん>小依さん、夏音さん>小依さん>夏音さん)をエミュレートをする」ところになります。ここでのポイントは「フェーズ1に落とす」のではなく、「フェーズ3という更なる複雑な階層に足を踏み入れている」という点です。
 この段階がどういう状態かと申しますと、一番最初のチャットログ下部にて乃愛さんがおっしゃっている通り「これがうまくできるってことは、相手が自分のこといつもどう見てるか、何を考えてるかーってことをカンペキに理解してるってことだもんネ」という状態です。例えば小依さんであれば「かのは私のことをいつもはこう思ってるはずだから、かのが私の真似っこしてる今はこう動いてこう言うはずよね」というロジックでの思考、つまり【小依さん自身の自己認識+夏音さんとしての自己認識+夏音さんから自分への他己認識】という異なる認識要素を同時並行で誤りなく、フェーズ3が続いている間ずっと維持されていたということになります。

 フェーズ2と3は、同じ入れ替わりでもニュアンスが異なります。つまり「フェーズ2は強制的に入れ替わってしまっている状態」であり、個人の意思ではどうすることもできない状況(であることを表現しなければならない段階)です。「フェーズ3は周囲の人を心配させない為に演技をしている状態」であり、つまりここはフェーズ2とは異なり演者の裁量により加減を調整できる状況ということになります。
 つまりは、フェーズ2では小依さんは夏音さんを、夏音さんは小依さんを完璧に演じる「必要」があり、ここでもし演技を失敗してしまうと「公演会として(作ろうとしている物語として)失敗」ということになってしまいます(例えここで失敗したとしても、かわいらしいのでそれはそれでありなのですが)。

 ところが、フェーズ3では「演出として人格を交代しているようにそれぞれが頑張って演じている」という状況が参加者全員の目から見えていることが前提ですので、上記で取り上げました「あ・・・」「えっと」という、「夏音さんが小依さんの真似をしようとしているゆらぎ(ニュアンス)」を出すことができるのです。

 ここが、フェーズ2と3の決定的な違いであり、小依さんも夏音さんもそこを重々理解した上でフェーズ2は慎重に、フェーズ3は演技としての色をつける為に小依さんは「あえて若干夏音さんの色を出す」という絶妙な演技をされていたということになります。


 ある人格でログインした状態で、別の人格をエミュレートし、更に別の人格を被せていくのは非常に高度な技術ですが、今回の小依さん夏音さんの入れ替わりについては常連の保護者様からも「中身ごと入れ替わってない?」という評価が出るほどにその品質についても完璧だったようです。


 後日、お二人にこの時のことを聞いてみましたところ、どうやらあまり頭で難しく考えずにすべてフィーリングでこなしていたとのことで、輪をかけて驚愕してしまいました。まさにセンスがすべてという、役者魂と互いへの愛を感じました。すごいですね……。


 ※チャットログを拝見しますと、エプイさんを中心に「発言者の名前を見ないと入れ替わっていることに気づけないくらい自然」という発言が複数回ありました。みやこさんも「何が起きてるのかわからないけどすごい>ミ」とおっしゃっていました。「小依さんと夏音さんが何をされていたのか分からないけれど、なんとなくすごい」というご感想をお持ちの方が多いのではないかと思いまして、その「何が起きているのか」の部分を冷静に分析してお伝えし、彼女たちのその尋常ならざる卓越したキャラクターエミュレーションについてご理解いただくことで、更に「すごい!」と思っていただけるのではないかと思い、本コラムを作成いたしました。天使たちに別途取材をして作成しておりますが、不明点などありましたらグルーディン村の爺やまでメールなどでお問い合わせくださいませ。














【 エンジェリック☆インタビュー 】

今回の公演会にご参加くださいました天使およびマギウスのお二人に、【よりかのよりかのより!?】について自由気ままに語っていただきました。
インタビューはミスリル・リンクHPにてチャットログのみのプレビュー版を公開した後の4月4日に行いました。みなさんチャットログは読んでいただいている状態です。


インタビューイー:小之森夏音さん 種村小依さん 姫坂乃愛さん 星野ひなたさん 白咲花さん 星野みやこさん 里見灯花さん 柊ねむさん
インタビューアー:DOSAN



──本日もお忙しいところ、みなさまご参集いただきm

待って! 最初に言わせて! かの、ごめんなさい!
よ、よりちゃん!? ど、どうしたの・・・?
コヨリちゃん!?
こよりはどうしたんだ? みゃー姉
わ、分からないけど・・・大丈夫?
・・・なにがあったの? こより
チャットログ読んでたら、いまいちなところ見つけちゃって。かのが最高の公演会にしたいってがんばってたのに、私が失敗しちゃったの!
えー? カンペキだったと思うけど、どこどこ? コヨリちゃん的にどこがイマイチだったの?
プラスチックのコップにするってみんなと相談してたのに、本番で「グラス」って言っちゃってたの。「コップ」ってしとくべきだったのに・・・
なんだそんなことか。気にしなくていいと思うぞ
そうだよ。むしろグラスって言ってたからこそ、落としたら大変ってみんなドキドキできたんだから。即興なんだからそこまで気にしなくても
まだあるのよ。私、かのになりきってたでしょ? かの(※編集注 小依さんの役をしている夏音さん)が転んだ時に「怪我をしてなくてほっとした」って言っちゃったの!
うん。  うん・・・? かのんちゃんが、こよりちゃんが転んだ時に怪我をしてなくてほっとしたって思うのは、普通のことなんじゃない?
ああ・・・。そういうことか。小依が言いたいことは理解できるよ。
ねむ?
普段の二人なら、みやこさんの言う通りで問題ないよ。しかし、この時は入れ替わっている前提だから「相手=自分の体」ということになるんだよ。
あ、そういうこと? それってつまり、「かのんに【自分の体が傷ついてなくてよかった】って言わせてしまった」ってことを言いたいの? こより
そうなの。だから、ごめん。かの・・・
よりちゃん・・・
まぁ、読みようによってはそう捉えることは可能だとは思う。でもね
こより
ひなたちゃん・・・
私たちも気づかなかったし、お客さんも本気で「かのんがそんなこと言う子」だと思うわけないぞ
そうだけど・・・。でも、かののこと嫌な子みたいに表現しちゃったのは私だから

ぎゅっ

か、かのぉ・・・
・・・・・・・・・
カノンちゃん、泣いてる・・・
違うんだよ。これは、うれしい、の・・・。
かのんちゃん・・・
かの・・・
そこまで私のこと、考えてくれてて、うれしいんだ。ありがとう、よりちゃん・・・
・・・ごめん・・・
いいの。いいんだよ、よりちゃん・・・
────二人は幸せなキスをして終了。といったところだね。
もー。無粋なこと言わないの! ごめんね? うちのねむが
ううん、ダイジョウブだよー☆ 二人ともリモートからコメントありがとー^^
よーし。仲直りできたみたいだから、今日はここまでにして寝るか!
いや、まだ始まってないでしょ。でも、お父さん。二人が落ち着くまでちょっとだけ時間ください。すみません・・・


──いえいえ、お気になさらず。ではしばし休憩にしましょう。







・・・どう? いけそう? コヨリちゃん
・・・私は大丈夫よ。・・・ぐすっ
カノンちゃん、どう?
うん・・・。みんな、ごめんね? よりちゃんの気持ちがうれしくて泣いちゃって・・・
大丈夫だぞ。かのんは何かあれば泣いてるしな! (※編集注 小之森夏音役の大空直美さんは、わたてん関連の収録の際には大体1度は感動して泣いているそうです)
・・・よかったけど、でも、こより。そういうのはこういう場じゃなくて、私たちだけがいるところで発散しなきゃ。お父さんに迷惑を
ハナちゃん
ノア・・・
パパの顔見てみて? それに、パパが迷惑だなんて思うわけないでしょ? パパに失礼だよー
う・・・。すみません・・・



──はは・・・(尊いという感情に流されそうでした)。インタビューなど後回しでもよいと思えるほどの、濃厚なやり取りを冒頭からありがとうございます。みなさんが続けられそうであれば、インタビューさせていただいてもよろしいでしょうか。


もっちろん! みんな、いけるよねー?
おう! どっからでもかかってこーい!
うん。ほら、お姉さん。いきますよ
う、うん。よろしく、おねがいします・・・
かの・・・。今日は手を繋いでてね。
うん・・・




■「入れ替わり」を思いついた経緯について

──それでは今回の「入れ替わり」という特殊な状況についてお聞きします。これを今回のお話に取り入れようと思った経緯を教えていただけますでしょうか。

えっと、これは前にフォースおねぇさんが同盟チャットでお話されていたことがヒントになっているんです。
そうだったわね。「次に書くわたてん小説のお話は入れ替わりを考えているんだー」って言ってたわ。
うん。確かその時だったよね。私とノアとひなたで入れ替わりを試してみたのって。
うんうんー。チャットログにも残ってるけど、あれ大変だったー>ω<
そうだったなー。今ならできるけど、あのときはいきなりだったからなー。でも、その時からかのんとこよりは入れ替われてたぞ
うん。どうなってるの? ってみんなで言ってた
今回のまいちゃんリクエストは「よりかのお誕生日会」ってもので、2月末の土日は二人きりでお誕生日デートするでしょ? だからその次の週くらいでみんなにお祝いしてもらうお誕生日会のお話ってことは決めてたよねぇ。
そうだったねー。でも、普通にお誕生日会してもらうだけだと、なんだか平凡なお話になっちゃうなぁって。よりちゃんと話してたんだー
そうね! それで、ちょっとしたサプライズってことで、「入れ替わった状態でお誕生日会に行く」っていうのを考えてみたのよ
ふむ。確かに、リクエストの内容からすれば「入れ替わり」は必須ではないね。しかし、今回はこのギミックがあったからこそ、スリリングだったね。
そうだねー 二人だけの秘密を抱えたまま、みんなの前で振る舞ってっていう。ドキドキする要素だったにゃー。

──なるほど。つまりはハーブ・フォースさんのつぶやきが発端となったということですね。今回の件は、ハーブさんの事前了承を得られていたのでしょうか。

それがなー、フォー姉は「やっぱ無理」って言ってて、入れ替わりネタの小説はなくなっちゃったみたいなんだ
そうそう。だからアタシたちでいつか使っちゃおう☆ って思ってたんだー
うん。せっかく出してくれたアイデアだったから、使われないのはかわいそうで。供養ってほどでもないけど、それなら私たちでって。
そうだったわね。でも、本当にできるのかしら? ってドキドキしちゃってたわ

──乃愛さんもおっしゃっていましたが、お二人の入れ替わりはパーフェクトだったと思います。易々とこなされていたようにお見受けしましたが、そうでもなかったのでしょうか。

私はその・・・。いつもよりちゃんに引っ張ってもらっているので、いつもしてもらっていること、言ってもらってることをやってみようって思ってました。実際やってみると、「私の中のよりちゃん」が反射で動いてくれたような感じで・・・。それだけ、私の中でよりちゃんの存在が大きいんだなぁって思えて、胸があたたかくなりました。
かのはそんな感じだったのね。私はかのになるの大変だったわよ。まず「私はかの。私はかの・・・」って思いこむところからだったから。
二人それぞれで違うの、おもしろいネ☆
今回は「私の一人称」でしたけど、それって結局よりちゃんが書くってことで。今回はよりちゃん大変だったよね
そこは別に平気よ! でも、やっぱり気をつかったのは「かのみたいに書くこと」だったわ。私の中にかのが入り込んでるんだから、かのそのものにならないといけないでしょ? 私がちょっとでもかのっぽくないことを書いたとしても、みんなは「それがかのっていう子」って思っちゃうから。
なるほどね。今回は相互に「大好きなお相手のフリをする」ことが命題になっていたことから、自分がミスをすると「大好きなお相手」の評価・評判を落としてしまうという懸念があったんだね。
なるほどにゃー。それでさっき小依はあんなに謝ってたんだねー。
そうよ! 私、かののこと大好きだから!
よ、よりちゃーん////

──お二人のお互いへの想いがなければ、これだけの完成度は生み出せなかったということですね。エプイさんも「かのんさんの童話のようなやさしい語り口まで完璧に再現できていた」と評価されていましたし、お二人の想いは全員に届いたものと思います。



■夏音さんと小依さんお二人の「今回の振り返り」

──小依さんは冒頭にありましたように、納得のいかないところがあるご様子でしたね。それ以外のところにつきまして、お二人が今回のお話を振り返ってみていかがでしたでしょうか。

これは、あれよね。ほら、04のチャットログでエプイさんが言ってたあれ!
あー、あれは確かに取り入れるべきだったかもだねー
お? おー。04のとこのどれだ? 「うらさんのタイトルもかじらせてもらうとええ」かー?
からあげは確かにおいしそうだけど・・・きっと違うと思うのアタシ>ω<
えっと、「声」のことだねー。エプイさんも言ってたとおり、「声」についても触れたほうがよかったねーって。
おー、これか! 「この二人って自分の声より相手の声の方が聞きなれてるんじゃないの」
そこよ! 自分自身の声って聞き慣れないのよね。「変な声」くらいは入れてもよかったわねって。入れ替わってる時にしか経験できないことだから、取りこぼしなくやりたかったわ。エプイさんに一本取られちゃった。
でもでも、「まばたきしてる自分」のところ、あれすごいよねぇ。ネムちゃんがすぐ気づいて解説してくれてたけど、ただ単に鏡に映ってる自分を見つめるだけじゃ見られないもんネ。あの表現ハッとしたなー☆
そうでしょ! かのと入れ替わりをするなら、こういう表現はしたいっていうのを前々から思っていたから、それを入れてみたの。他にも入れ替わった時にどう感じるかしら、ってあれこれ考えていたんだけど、さっきの「声」のことは完全に気付けなかったわ。残念。
あれは僕も素晴らしいと思ったよ。普段の何気ない生活において、いろいろな角度から現象を捉えているんだなと。同様に、窓ガラスに映る自らの姿を「映っているのではなくガラスの向こうに夏音がいる」と捉えているのもいいよね。自己像認識は「小依」で固定されているから、それとは異なるものは「映っている」のではなく「透過して見えている」という認識なんだね。
仕掛けがあって、屈折率とかを変えられるプリズムなんかが置かれてたら、斜め後ろにいる夏音を見られるかもだけどねー。あとはそういう固有魔法とか?
あはは・・・。私たちは灯花ちゃんたちみたいに魔法は使えないから・・・。でも、手品とかによさそうだねー。
灯花。小学生にフォローされてるよ。まったく
みんな小学生でしょー? んもーねむはー! ・・・うん、でもやっぱり光学的な現象を感覚的に捉えて文学的に落とし込めているのはすごいにゃー
ふふーん!

──保護者様も含め、様々な方のご意見ご感想により気づかされることは多くありますね。

あとは・・・これは仕方のないことなんですけど、私とよりちゃんとだと「入れ替わっていることに気付きにくい」っていうのがあるかもしれないなって思いました。
かの?
チャット欄って、「名前:発言」でしょ? 入れ替わってるかどうかをぱっと見る時って、「名前」を見ると思うんだけど、私もよりちゃんも名前の中に「小」って文字が二人とも入っちゃってるから、ぱっと見で見分けにくいのかもって
んー、そういえばそうね! みんなを混乱させちゃったかしら。
そこはさすがに仕方ないと思うよ? 確かにお客様は混乱したかもしれないけど、それは二人の入れ替わりがすごかったからだし。ね?
おねぇさん・・・。ありがとうございます^^
お姉さんありがとう! んー、名前の長さはかのとは違うから、ぱっと見てもらうときはそこで判別かしら
かのんとこよりならぜんぜん大丈夫だぞ。これが「かりんとかリんで入れ替わりやるのー!」って言い出したらそれこそ誰も分からないからなー
誰も分からないって・・・んんー、でもカリンちゃんたちは確かにそうかもだネ☆
のあは、かりんとかリんはどう呼び分けてるんだ? どっちもカリンになっちゃうと思うけど
・・・! 言われるまで気付かなかったー>ω< えっと、えーっと? カリンちゃんと、カりンちゃん・・・? あれ? この場合オリジナルがカタカナのかリんちゃんがカリンちゃんになるのかな? あれあれ??
・・・ひなた。とりあえずノアを一回抱きしめて、リセットしてあげて。
お? おおー。いいぞ! のあー!

ぎゅっ   ちゅっ

ひ、ヒナっ・・・!
おー、戻ってこれたな、のあ。おかえり!
~~~~~~///ω///
おまけの刺激が強すぎだよ。キスまですることなかったでしょ・・・。お姉さん、ひなたにどういう教育してるんですか。
と、とばっちりだー>ミ



■会場となった場所について

──今回のこの場所を選定されたのはどなたでしたでしょうか。

あ・・・。ここは、私が探してみました。
今回はほむらさんが参加できないとのことでしたので、場所探しから私たちですることになったんです。最初は、アニメのこよりの部屋みたいな、かわいらしい場所があるといいねって話してたんだよね。
そうだったね。こっちの世界、私たちあまり知らないから・・・。でも、すごくきれいな場所を探せたね。
えへへ・・・。ありがとうございます。地図をぼんやり眺めていた時に、この、湖のちょっとしたでっぱりが気になっちゃいまして。



かのがここを見に行きたいっていうから、二人で下見にきたのよ。何度も倒れて大変だったけど、苦労しただけあってきれいなところだったわね!
そうだねー、よりちゃん^^ エルフ村を出てすぐのところ、すごく怖いのがいっぱいいまして・・・。何度も二人してやられちゃったね><
そこは確か、レベル107の寺子屋狩場だね。世界樹の影かな。二人とも無茶をしたね
レベル1で通り抜けられる場所じゃないよー? 言ってくれればねむと一緒に蹴散らしたのにー
灯花、ありがとう。でも、きっとかのんとこよりは二人だけの力でやり遂げたかったんだと思うの。そうでしょ?
そうね!
うんうん
灯花が無粋なことを言ったね。所謂「デートの口実」ということだったんだね。すまない
ねむー! でも、何かあれば頼っていいからねー?
ありがとうございます^^

──ふむ・・・。やはりお若い方々はこの場所の持つ意味をご存知ないようですね。

・・・お父さん?

──少々長いお話となりますが、私からお話しましょうか。少し悲しいお話にはなるのですが。

是非拝聴したいところだね。DOSANさんのお話は一度じっくり伺いたいと思っていたところだからね
そうだねー。昔話ってことになるのかにゃー?

では、こちらで失礼しますね。そこの東屋には今はどなたもいらっしゃいませんが、その昔「タリヤ」というエルフの女性がお一人立っていらっしゃいました。彼女はエルフ族として、「世界樹が弱ってきている理由」を冒険者に伝える役割がありました。掻い摘んで申し上げますと、エルフ領地とオーレン領地を分断する山脈の向こう側に位置する「胞子の海」という場所から毒素が流れてきており、それにより世界樹が枯れてきているというお話です。

「胞子の海」ができた原因は、ヒューマン族とエルフ族の戦争でした。その舞台となった場所では生物が死滅し、生態系が破壊され尽くされました。今も異形のモンスターが跋扈するエリアとなっており、確かに世界樹を脅かす毒素を放っているように思えます。
タリヤさんはエルフ族の冒険者がある一定レベルに達すると、次の段階へ成長する為のお手伝いもしていました。当時は「生命の試験」と呼ばれる転職クエストでしたが、タリヤさんの課した課題はエルフ族にとっては非常なる葛藤を生むものでした。「タリン・スピアー(タリヤさんの槍)」というアイテムを授けられた冒険者は、それをもってエルフ族の守護者の象徴であるユニコーンにとどめを刺し、「ユニコーンの涙」というアイテムを入手する。それが課題でした。

「ユニコーンの涙」を冒険者から受け取ったタリヤさんは、「生命の水」をいうものを冒険者に渡し、一旦ここでのクエストは完了します。その「生命の水」の効果は「一時的に世界樹が枯れゆく速度を遅らせる」というもの。当時のエルフ族の冒険者は誰もが通った道ではありますが、「大を生かす為に小を殺す」ということが行われていた、人間の悪しき風習のひとつと言えるでしょう。

──私からは以上となります。今回の公演には無関係ではありますが、ここはそのような場であったことを記憶に留めておいていただけますと数多の犠牲となったユニコーンたちも浮かばれることでしょう。

そんな悲しい場所だったなんて・・・。お姉さん・・・
うん、うん・・・。花ちゃん・・・。
よ・・・ よりちゃん・・・><
か、かのぉ・・・
なんで、人間ってそういうことしちゃうんだろう。それじゃ、ユニコーン大好きなわたさんがかわいそうだよ・・・ ぐすっ
かなしいな。うぅ、かなしいぞ・・・
ヒナタちゃん・・・!
古の因習というか、なるほど・・・。この美しい景色を背景に、そのような血なまぐさいことが行われていたとはね。
生命の水でどれだけ延命できたか分からないけど、そういう選択肢があるのは分かるけど、選んじゃダメだと思うにゃー・・・。

──ひとりのエルフさんが、この辺りの葛藤を経験する様を描いたお話がありましてね。自著ですのであまり宣伝はしたくないのですが・・・。ミスリルの賢者さんが苦しんだ経緯は知っておいていただけると。

ミスリルの賢者、という人。



※編集注 作中に出てきます「世界樹の守護者」とは、エルフ族の風習として一族の中で最も力があるとされる「エヴァスセイント」となれた者が志願し、任命されていました。世界樹にその身を投じることにより「生命の水」と同様の効果を得たと言われています。ミスリルの賢者さんのお母様も「世界樹の守護者」であったという背景があります。



ぐすっ・・・ よりちゃん。一緒にお祈りしよう?
・・・そうね
ユニコーンさんたちのことを知らないで、ここで公演会を開いてしまって、ごめんなさい・・・。でも
でも、ここを使わせてくれて、ありがとう。みんなの痛み、私たちは忘れないわ!






■フリートーク

──いつもであればここでフリートーク、という流れになるのですが・・・。本日はここまでにいたしましょうか。

かの、大丈夫?
すみません。なんだかずっと泣いてばかりで・・・ぐすっ
今日は古参の方しか知り得ないことを教えてもらえて、光栄の極みだよ。ありがとう。
世界樹が枯れゆく原因、研究テーマのひとつにしてみようかにゃー。
はー 泣いたら眠くなってきたぞ
そうだねぇ。パパもいつもすごい記事作ってくれてありがとー☆ 今回も期待してるからネ^^ あ、でもみんな心配するから、ちゃんと睡眠時間は確保してね?

──ご心配をおかけして申し訳ございません。一応、この通り動けてはおりますので。

灯花ちゃんもねむちゃんも、今回はありがとうね。またひなたたちとお話してあげてね。
今回はいろいろと感動したな・・・。みんなすごいよね。これからもがんばっていこうね。

──本日もどうもありがとうございました。次回以降もこのコーナーを設けようと思いますのでよろしくお願いいたします。



















■ ヴァラカスサーバのわたてん!イルミネーションアート(夏音さんが小依さんを押し倒しているシーン) ■


ヴァラカスサーバ在住のまいちゃんさんは、生粋のイルミネーションアーティストです。
このところ、毎回公演会の題材に応じたイルミネーションアートをヴァラカスサーバにて作ってくださっています。
本記事最初にURLはご案内しておりますので、イルミネーション製作過程の記事につきましてはそちらをご覧ください。







ヴァラカスサーバにて、わたてん☆5のみなさんと星野みやこさんが揃って観賞されたようです。
前回に引き続き、この時もゲーム内時間にて昼間の時間帯となるようにと、しっかり時間合わせをして集合されたようです。
作者のまいちゃんさんに、しっかり天使たちに見ていただけたことをご報告すべくこちらに掲載させていただきました。

素敵な作品、ありがとうございました。









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